《異世界でもプログラム》第九話 共和國(3)
議會は荒れていた。
食料の問題で招集されて開催された議會だが、今は違う話が主軸になっている。
もともと共和國は、いくつかの王家が帝國や王國に対抗するために集まった小國家群と言い換えてもいいのかもしれない。
最初は、軍事力で他國を圧迫していた國の意見が通っているような狀態だったが、國家間の調整となによりも帝國と王國の圧力に屈する形で、小國家群は一つの國にまとまる選択をとった。
その時に採用された方式が、共和國制だ。
小國家は、そのままにして発言力を強めようとした。
小競り合いは発生したが、そのたびに、王國か帝國が手を出してきて、小國家群は共和國としてまとまることが出來た。
その時と同じ・・・。いや、制度が確立してから初めてと呼べるくらいの窮地に立たされている。
議會も最初は王家や王家に連なる者が選出されていたのだが、徐々に主役は金銭を多く持っている者たちに移した。現在では、王家は數えるほどしかいなくなり、ほとんどがダンジョン関係で商売をしている豪商が議會を牛耳っている。
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共和國の設立には、ダンジョンが大きく影響していた。
王國と帝國に睨まれながら、共和國として設立できたのは、商人たちがダンジョンから出た食料を安く各地に運んだことが大きかった。その時に、功した商人たちは、得た利益で議員にすり寄って、ダンジョンの権利を獨占した。
ダンジョンから出る食料を優先することで、商人たちは力を得た。
農家からの買い取りは、元貴族が獨占していたのだが、貴族は周りの狀況が見えなかった。商人たちが安いダンジョン産の食料を広めたことで、農家から買い取り、自分たちの利益を乗せた農作は徐々に衰退した。
現在では、共和國の食料自給率の6割以上をダンジョン産の食料に置き換わってしまっている。
そして、この割合は増えることはあっても減ることはない。流を擔當していた者たちが、商人たちに飲み込まれてしまったからだ。
農作は地産地消するだけに留める狀況になっている。
寒村や都市から離れた村が、自分たちが食べるためと納稅のためにほそぼそと続けられているだけになっている。
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農民が持っていた鍬を剣や盾に持ち替えてダンジョンに挑むのに時間は必要なかった。
多くの農民がダンジョンに潛った。
商人が議會を牛耳るようになって農民よりの政策の多くが撤廃されて、ダンジョンに潛っている者たちが優遇される制度が増えて行った。
議會の招集が発令されたのは、デュ・コロワ國にあるダンジョンから食料がドロップしなくなったからだ。
報告を聞いた議員たちは、即座にかなかった。
デュ・コロワ國の全てのダンジョンではなく、數カ所のダンジョンだけで発生した事象で、しばらくしたら元に戻ると考えた。いままでもダンジョンが長するときに一時的にドロップしなくなったり、魔が減ったり、狀況に変化が咥えられた。そして、自分が所有しているダンジョンは、食料品をドロップし続けると知って、”商機”だと考えて、自らのダンジョンから産出した食料を、デュ・コロワ國に輸送し始めた。出なくなったダンジョン付近では、食料が高騰しはじめている。商人としては、先の利益も必要だが、目の前にぶら下がっている商機を見逃すのは愚かだと考えた。
議會が摑んだ報は、確かに正しかった。
しかし、その時點での報だと付け加える必要がある。
議會がある場所では、離れたダンジョンの報が手元に屆くのにタイムラグが発生した。
半數のダンジョンから、食料だけではなく、共和國が戦略資と考えていたまでもドロップしなくなった。
食料だけでも問題があるのだが、共和國が外貨を得るために必要としていた資までドロップしなくなった。
議會では、殘されたダンジョンの狀況を確認して、再分配という困難なミッションをおこなっていた。
そこに、王國の貴族をデュ・コロワ國のアルトワ町の町長と近隣の有力者が共謀して襲撃を行ったという一報がった。
貴族の元は匿されていたが、皇太孫からの親書が屆けられたことで、深刻な狀態だと判斷された。
普段なら、議會に顔を出さない長老や王家まで集められた。
議會は、決められた議長は居ない。以前は、決められていたのだが、ダンジョンの支配をもくろんだ者たちが蠢したために、議長は持ち回りで行うことに決めた。
そして、最初に議題を投じるためには、議會に出席する権利を持つ者の5名以上の承認が必要になる。
ダンジョンのドロップ問題から、後手に回っているのは、共和國の権力闘爭が原因だと考えられる。
5名の議員が連名で議題を提出して、集められた時には、既に多くのダンジョンでドロップしなくなっている。
ダンジョンの魔は減っていない。増えているダンジョンもある。そのために、魔を狩る必要がある。狩らなければ、スタンピードの発生を発してしまう可能がある。魔を狩る者たちは、魔を狩って、ドロップを金に変えて、日々の生活を行っている。
ダンジョンからの産出が減っているのは、食料や戦略資だけで、素材は通常通りにドロップしている。また、ダンジョンの運営を考えた時には、ドロップ品を買い取らなくなれば、魔を狩る者たちがダンジョンを離れてしまう。農民に戻ればいいが、他のダンジョンに行くのは目に見えている。共和國としては、共和國の他のダンジョンに向かってくれればいいが、王國や帝國にあるダンジョン街に移されたら、戦力低下にもつながってしまう。
報が遅れて、議會に到著した。
ダンジョンを持たない議員たちは、ダンジョンを所有する議員たちが困っているのをじて、自分たちに取り込もうと活を開始する。
そんな狀況の中で、デュ・コロワ國の王都を皇太孫が率いている軍に包囲されたと連絡がった。それも、包囲している皇太孫からの親書で知らされた。
皇太孫の親書から3日遅れて、デュ・コロワ國の王都に居る議員からの救援要請が屆けられた。
右往左往という言葉が正しい狀況だ。
自分が所有しているダンジョンも心配だが、王國がこのままデュ・コロワ國だけではなく、他の國に侵攻を開始したら、防ぐことが出來るのか?
皆が”自分のの安全”を考え始めている。
そこには、民衆の安全は含まれていない。自らの財産と命が助かる方法を考えている。
「デュ・コロワ國の民衆が犯した罪を、共和國全でけるのは間違っていないか?」
デュ・コロワ國と境界を接していない議員が口火を切る形で、議論という名前で罵りあいが始まった。
議長は選出されているのだが、議長権限で話をまとめて、王國の剣先が自分の元に來るのを恐れている。
誰も、矢面に立ちたくない。
「誰か、デュ・コロワ國からの連絡をけたのか?」
奧に座っていた王族の発言を聞いた議員が、首をかしげてから、意味がわかったのだろう。首をかして、周りを見る。周りの議員も、何を言っているのかわかるのだろう。口々に、デュ・コロワ國からの使者が來ない事には判斷ができないと言い始める。
顔を変えたのは、デュ・コロワ國の近くに領地を持つ議員だ。
そして、今にも倒れそうな雰囲気を出しているのは、デュ・コロワ國からやってきた使者からの伝言を議會に持ってきた者だ。
「使者が來ていなければ、王國の皇太孫からの話だけだ。ない報と相手方からの報だけでは、判斷ができない。デュ・コロワ國からの連絡を待つことにしましょう」
議長が、場の流れを汲んで話をまとめる。
「そうだ。この建は安全なのですよね?」
議長は、議會が行われている會場の所有者に向けて質問をおこなった。
「議員の皆さまに安全に過ごしていただくための準備をおこなっております」
「そうですか・・・。それなら、招かれざる者がるのは不可能ですよね?」
「もちろんです」
所有者は立ち上がって、伝言を持ってきた者に近づいて、自分の護衛が持っていた剣を渡した。
「もし、不審者が居ましたら、この者が処分いたします」
「そうですか、それは素晴らしい。私たちは議論を続けることにしましょう。大切な話はまだ他にもあるでしょう」
議長は、皆を見回した。
剣をけ取った伝令係は、皆からの視線をけた。頭を深々と下げてから、議場から姿を消した。
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