後に、アレリラ・ウェグムンド侯爵夫人の生涯を描いた伝記が出版された。

彼は貴族學校主席卒業後、歴史上初めて、として帝國行政に関わる事務として就職。

その後、己の才覚ひとつで筆頭宰相書までのし上がり、宰相閣下に見初められて侯爵夫人となった。

結婚後。

金山をペフェルティ伯爵から譲渡され、やがて【魔銀(ミスリル)】の産出地となった鉱山の莫大な資産で、民の生活をかにする數々の事業を起こし、その全てを功させた。

その事業では、特に職を求めるを優先的に數多く採用し、労働者の地位を確立した。

子もなしており、一人娘が手を離せない年頃以外は継続して筆頭宰相書も務め続け、北國バーランドの施策を參考に、帝國の労働やに関する法を提案してその整備に努めた。

また彼は、にも聡かった。

侯爵領で生産され、彼が窓口となって販売した膏は、功事業としての利益のみならず、侯爵夫人としての彼の友関係に多大な影響をもたらしたことで知られる。

故に貴族社會でも、彼はその地位を確かなものとしていたという。

侯爵夫人、事業功者、宰相書の三つの顔を持ち、『その全てにおいて完璧であった』とされる彼だが。

出自はただの一子爵令嬢であり、その異の経歴と功はやがて多くの達の希や憧れとして語られるようになった。

次代で功者となった達の多くが彼の指導をけ、また尊敬の意を表明していることが、かのがどれ程の傑であったかの証左であると言える。

だが、所作こそ完璧であった彼は、見方を変えれば利點とも言えるが、多くの場合で欠點と言える部分が一つあった。

その貌に表を浮かべることが、壊滅的に苦手であったと言われているのだ。

彼の無表と、鉄の微笑み以外の表を見た者は、それ程多くはない。

伝記の著者らは希で幸運な數人であるが、それでも『見たことがあるのは數度、それも宰相閣下と共にある時のみであった』と記している。

そうして伝記の最後をこう締め括り、それが後の世での彼の異名となった。

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アレリラ・ウェグムンド侯爵夫人は、傑である。

あれ程の人が、イースティリア・ウェグムンド宰相閣下という、もう一人の傑を伴に得たことはお互いにとって最良であっただろう。

著者らは限りない敬意としばかりの嫉妬を込め、その功の元手となったある鉱になぞらえて、彼をこう呼ぼう。

―――〝魔銀(ミスリル)の傑〟と。

この伝記の筆を取る栄譽を與えられたことに、深い謝を込めて。

共著

筆頭帝國書　ニードルセン・ポリオ準男爵

元・帝國書 ヌンダー・マンゴラ準男爵

元・帝國書 ノーク・パエリ準爵

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