《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》369話

アリアとセリナの話し合いが終わったところで屋敷に帰り、応接室に近づいていくと楽しそうに話すドルーゴの聲が聞こえてきた。

俺らが部屋を出る前はどうやって斷ろうかと悩んでるような何ともいえない空気を発していたんだが、ニアがどうにか持ち直してくれたのかもな。もしかしたら若くて綺麗なと2人っきりになったから元気になっただけかもしれんが、まぁだとしても気持ちは分からんでもないと思いながら応接室の前に著くと靜かになった。どうやらニアが俺らが戻ったことに気づいて扉を開けるために席を立ったからっぽいな。なら開けてくれるまで待つとするか。

今回アリアがドルーゴに求めた條件でどうしても呑ませたかったのは魔鉄製の武をリキ教信者がどこでも買えるようにすることだった。

正直ついでにつけた條件だと思っていたから、アリアとセリナの話を聞いて驚いたわ。

そういやラスケルに魔鉄製の武ならどこでも買えるようになるって話をしていたけど、まさか行商組だけでなく他の商會にも手伝わせるつもりだったとはな。

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そのためにすでに功している商會に傘下にれと本気でいってるんだから、いろんな意味でさすがアリアだわ。実際、ドルーゴは斷る空気ではあったが悩んでるじでもあったし、可能のある條件は提示できてたってことだしな。

「おかえりなさいませ。」

応接室の扉を開けたニアが微笑んで聲をかけてきた。

それに応えながら中にると真面目な顔をしているドルーゴが目にった。部屋を出るときの斷る空気とは微妙に違うから、斷る前に條件の変更が出來ないかとかの渉をする気になったのかもな。まぁ俺はそんな面倒なことをする気はないが。

アリアとセリナが魔鉄の武をどこでも買えるように手配できればいいっていっていたから、それ以上を求める気はない。

先にドルーゴが余計な條件をつけてきたせいで面倒な話になっただけで、そもそも俺らのマークを使うだけなら、いくつかの確認さえ取れれば俺は無償でもいいくらいだしな。

ドルーゴの向かいのソファーに座り、アリアが隣に座るのを確認してからドルーゴに目を合わせた。

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「一応確認なんだが、さっきアリアが提案した容をそのままける気はないか?」

「とても好條件を提示していただいたところ申し訳ありませんが、傘下にることは出來ません。」

俺が単刀直に確認を取ると、ドルーゴは今回は即答してきた。まぁそりゃあそうだよな。

「わかった。ならさっきのことは一旦忘れてくれ。それで、あらためて確認なんだが、そちらが俺らに求めるのは『一條の』のグループマークを商會の馬車に印字したいということでいいのか?」

「……はい。」

ドルーゴは俺の発言の真意を探るように俺の目を見つめながら、間をおいて肯定した。

「それは『一條の』にるのではく、対等に利用し合う関係という解釈でいいのだろうか?」

「リキさんのグループにるという意味ではないというのはその通りなのですが、対等に利用し合う関係というのはどういう意味でしょうか?」

「グループにるなら俺の指示に従ってもらう部分もある代わりにグループリーダーとして護る必要があったりするが、対等ならどちらも相手に命令する権利はなく、何かあったさいに無償で助けたりする必要もないってことでいいのかの確認がまず1つだな。」

「そういう意味でしたら、対等に利用し合う関係という解釈で問題ないのですが、1つということは他にもあるのでしょうか?」

「グループにっているなら個人が何かしたさいの制裁は個人に対してだが、対等に利用し合う関係なら、俺らのグループマークを悪用したさいはシュンカトー商會の責任として対処することになるがいいんだな?」

凄んだつもりはなかったが、目を逸らさずに確認したせいかドルーゴが一瞬言葉に詰まった。まぁ、俺はいろんな噂があるらしいから、対処イコール暴力だと思われたんだろう。まぁその認識が間違いかどうかはそのときになってみないとわからんが。

「……問題ありません。我が商會にはそんな愚か者はいませんが、もしそんなことがありましたらそれは教育不足だった私の責任です。もちろん私自にリキさんと敵対するつもりはありませんが、何かあったさいの責任は私に追求していただければと思います。」

俺は個人ではなくシュンカトー商會に対して責任を取らせるっていったんだが、こいつは自分だけの責任としろっていってるのか?まぁ商會長だから間違いではないか。他の従業員を守ろうとしてるんだろうから、そのくらいは呑んでやるか。

「わかった。何かあったさいは悪用した本人は殺すと思うが、その後は一度ドルーゴ商會長との話の場を設けることにしよう。それでいいならウチのグループマークを馬車やイグ車…いや、車でいいのか。車につけるのはかまわない。そちらとしてはこれで大丈夫だろうか?」

「え?こちらとしてはほぼ無條件で要求を呑んでいただけているのでありがたい限りなのですが、リキさんとしてはいいのでしょうか?」

「あぁ、問題ない。対等ならこちらが失うものは何もないしな。ただ、せっかく複數店舗を持つ商會と対等に利用し合える関係になれたなら頼みたいことがあるんだが、ウチで作る魔鉄製の武とかを店舗に置いておいてほしい。それで、このネックレスをしてるやつが來たらこっちが指定した金額で売ってほしいんだが大丈夫か?もちろんそのさいの赤字分はあとで補填する。」

「量にもよりますが、店に置いておくのは問題ありません。ただ、赤字分というのは買値と運搬費と長期保管のさいの整備費から売値を引いた額ということでしょうか?」

赤字については単純に買値と売値の差額がマイナスになったらとしか考えてなかったが、たしかに運搬費とかかかるわな。

アリアはどう考えているのかと隣を見ると、頷いたアリアがドルーゴに顔を向けた。

「…魔鉄製の武についてはカンノ村の行商組が運ぶので、その魔鉄製の武はこのネックレスを持つ者以外には売らずに保管し、ネックレスを持つ者が來たらこちらの指定した金額で売るという容を全店舗に伝えていただくだけで大丈夫です。整備も必要ありません。買い手が整備を希したさいはわたしたちとは関係なくお店の仕事としてけてもらえると助かります。行商組には店舗に渡すさいにお金をけ取らないように伝えておくので、在庫管理は確実にお願いします。どの店舗で何がいくつ売れたかについては月の終わりにまとめて教えてください。そのさいに売れた分の金額だけお渡しいただければ、在庫として倉庫を圧迫する以外はシュンカトー商會には損はないかと思います。この関係が終わったさいには全て回収します。在庫數が合わないなどがないようにだけお気をつけください。」

アリアが淡々と説明した容を聞いたドルーゴがし考える仕草を取ったが、すぐに笑顔を向けてきた。

「店舗によって抱えられる在庫數に限りがありますが、それでもよろしければこの容で契約させていただければと思います。」

ドルーゴが右手を出してきたので、それに応えて握手をした。

「あぁ、無理のない範囲でかまわない。よろしく頼む。」

俺にはどっちも何が得になったのかわからない商談だったが、ドルーゴとアリアは満足する容で終えられたっぽいから何かしらの得があったのだろう。

その後はドルーゴが契約書を2枚作り、互いにサインしたものを1枚渡されて終わった。こんな些細な容でも口約束じゃなくて契約書を作るんだな。

屋敷の外までドルーゴを見送ると、屋敷の前に馬車が用意してあり、それに乗って帰っていった。

門の前に馬車とかなかったから歩いてきたのかと思っていたが、どうやら村の中に馬車を停めていたみたいだ。

予定外のことが続いて起こったせいで、なんかやけに疲れたが、まだ夕方にもなってないんだよな。まぁやることがあるわけでもないし、晝寢でもするか。

そう思いながら屋敷に戻ろう振り返ったところでニアと目が合った。どうやら話しかけるタイミングを待っていたっぽいな。

「リキ様。こちらをお返しします。」

ニアが手を出してきたから、何かと思いながら俺も右手を出したら、俺の右手を両手で包むようにして何かを渡してきた。

金貨10枚?…あぁ、ドルーゴと2人でいるのが気まずかったら商談でもしててくれって渡したんだったな。ずいぶん楽しそうに話していたが、何も買わずに話だけで場を繋いだのか?

「使わなかったのか?」

「はい。商談せずともいろいろと報を教えていただけました。まだマルティナさんほど使いこなせてはいないのですが、相手をその気にさせる“さしすせそ”というのは商會長のような立場の人にも有用なのですね。」

マルティナって誰だよ。

というかこっちの世界にも何々の“さしすせそ”みたいなのがあるんだな。

相手をその気にさせる“さしすせそ”とかいうのは中學時代の喧嘩仲間がいってたのがあったな。たしか…

さっそく

仕事を忘れられるくらいに

凄い

セ◯◯◯で

染めてやるよ

だったか?

これで疲れたOLならイチコロとかいっていたが、それは喧嘩仲間が凄いというより中學生にそんなセリフでイチコロされるOLがヤバいだけだけどな。

でもこれをニアにいわれたら確かにたいていの男はイチコロかもしれん。いや、さすがに初対面でそんなこといわれたら、人のニアが相手でも警戒の方が先にくるか。というか、“さしすせそ”が同じとは限らねぇだろ。さっきのはあの馬鹿専用の“さしすせそ”かもしれないしな。

「ちなみに“さしすせそ”ってのはなんだ?」

俺が確認をするとニアが微笑みかけてきた。

「さすがですね。」

急に褒められて意味がわからないが、ニアの微笑みが合わさるとなんか悪い気分ではないな。…いや、これが“さ”か。

「知りませんでした。」

「凄いです。」

「せっかくなので。」

「そうなんですか?」

「マルティナさんは話を切り替える時にせっかくなのでの後に言葉を追加するくらいで、あとはこのままの言葉と表だけでもだいたいのお客様の相手が出來るらしいです。自分はさすがにそこまでは出來ませんが、この“さしすせそ”を教えていただいてから、男に限りますが報を集めやすくなりました。」

どうやらニアの“さしすせそ”はそれぞれが1つのセリフになってるんだな。やっぱりあの馬鹿のとは別だ。

「というか、マルティナって誰だ?」

俺が確認するとニアはなぜかし驚いた顔をした。もしかして會ったことあるやつか?

「ラフィリアの城門通りからし裏道にったところにある接客酒場の2番人気のです。1番人気はお店がそうなるように用意しているらしいので、実力的には1番人気といっても過言ではない綺麗で話が上手な方です。以前、ハッピーシガーの件でラフィリアで調査をしていた時に偶然関わることがあり、それから仲良くさせていただいています。」

普通に知らんやつだったわ。

接客酒場ってのを初めて聞いたんだが、キャバクラ的なものか?それとも風俗?というか、調査でそんなところに行ってるってことは思ってた以上にアリアたちの行範囲は広いみたいだ。ニアだったらその辺のチンピラに負けるようなことはないから危ないなんて注意をするつもりはないが、俺が気をつけないと行が筒抜けになる可能がありそうだな。べつに知られたら知られたでいいっちゃいいが、パーティーが変な空気になるのは面倒だからそういう店を使うときは気をつけるべきだろう。

「そうなのか。ニアはウチのグループ以外にも友関係を持っているんだな。そんで、ドルーゴからはどんな報を得たんだ?」

「新しい報ですとクルムナが戦爭時に使用した武についてと忌魔法についてでしょうか。忌魔法は全てが知られているわけではありませんが、有名な憤怒と暴食とについてはある程度の能力と対処法が國や報をもつ者には知られているとのことでした。」

所持者の俺自が知らない能力を知られてんのかよ。しかも弱點まで。いや、今まで一度も使えたことのないスキルの能力を知れると思えばむしろありがたいか。

というか、の対処法があるならもうし早く知りたかったわ。

軽く聞くつもりだったが、けっこうな報をドルーゴから聞き出しているようだから、こんなところで立ち話ではなく、中でちゃんと聞いた方が良さそうだな。

「今さらだが立ち話もなんだし、中で詳しく教えてくれ。」

「はい。」

なぜだかニアは嬉しそうに笑顔で返事をし、俺の隣に並んだまま歩きだした。

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