《スキルイータ》【第三十二章 妊娠】
お茶會は、和やかに進んでいた。
クリスティーネが落ち込んで、シロがめる場面はあったが、流を行うという意味では、目的を達している。
「ナーシャは戻らないの?」
「ん?戻る?」
「ノービスは、ロングケープから出ている船で行かないとダメな場所で活しているのでしょ?」
途中から參加している貓族のミーシャが、ナーシャに質問をする。
ノービスは、ナーシャが參加しているパーティーの名前だが、ロックハンドの開拓を任されてからは、パーティーの活はしていない。ナーシャは、ツクモからもらった家がロックハンドにあるのだが、ほぼ使っていない。家は、裝備品やナーシャが必要ないと考えた”かわいくない”を置いている。簡単に言えば荷置きになってしまっている。
「うーん。いいかな?」
”いい”わけがない。
ナーシャにも役割がある。特に、ノービスとツクモが認めた數にしか伝えられていない窟の存在が問題になってくる。窟を使ってナーシャは、商業區にやってくる。毎日のように使っていれば、自然と窟の中にリポップする魔たちが減るのだが、ナーシャは數カ月単位でロックハンドに返らないために、窟部の駆除が進んでいない。溢れるほどではないが、ナーシャ一人の責任ではないが、責任の一端はナーシャにある。
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「そうなの?旦那さんは大丈夫なの?」
「旦那?誰のこと?」
「え?ノービスの中の誰かじゃないの?」
「ない。ない」
大きく手を振ってミーシャの質問に答える。
ミーシャは、うわさを聞いただけで確証を持って聞いたわけではない。証拠も何もない。ただの噂話だ。
ナーシャは、黙って立っていて、甘味の事を考えていなければ、目立つ容姿をしている。白狼族由來のしっかりとした形をしているだけではなく、銀髪に近い白髪が人目を引いている。
均整の取れた形と、人と言っても8割が納得してくれる容姿をしている。
実際に、行政區や商業區では、ナーシャのことを狙っている者たちが多い。
しかし、ナーシャは事にも興味があるが、それは一般的な範囲に落とし込まれていて、自分が誰かと仲になるとは考えていない。新しい環境になって、事よりも新しい甘味や楽しい遊びに興味が向いてしまっている。
「そうよね。あの男は、見る目がないのよ」
しだけ怒った口調で場のまとめを行うのは、ナーシャと一緒に居る事が多いカトリナだ。
カトリナは、ツクモから依頼されて、ロックハンドに資を搬送している。
窟は使っていないので、通常のルートである船便だ。
ロックハンドで、ノービスのメンバーとのやり取りも行っている。
ガーラントやピムは、種族的な話としてナーシャをパーティーメンバー以上には見ていないのはわかっている。しかし、イサークは、種族は違うが対象としてナーシャをみている時があるのを、カトリナはじていた。それが勘違いだとしても、カトリナからはイサークが、ナーシャを放っているとじてしまっているのだ。
”見る目”がないと表現しているのも、イサークがさっさとナーシャに告白すれば、ナーシャも考えるようになるのではないかと思っているからだ。そうしたら、自分が苦しむことがないと思っている。
「ん?何のこと?」
新作のお菓子を両手に持っていたナーシャが、しだけ雰囲気の変わったカトリナを見た。
「なんでもないよ」
カトリナは、”なんでもない”と言っているが、雰囲気が自分の事を言っているとじているナーシャは、首をかしげている。
しかし、両手に持っているお菓子を口に運ぶのは忘れていない。
「ねぇナーシャ。ロックハンドに家があるのよね?いいの?」
クリスティーネがそんなナーシャに疑問に思っていたことを聞くことにした。クリスティーネは、ルートガーからナーシャのことも窟のことも聞いている。遠まわしの表現だが、”窟は大丈夫なのか?”と聞いている
「うーん。大丈夫だと思うよ」
お菓子を頬張りながら答えるナーシャをカトリナは何とも言えない表で見ている。
事はわからないが、実際の”家”が心配ではなく、その付帯條件があるのだろうと察している。
「そう・・・」
「あっ!うん。大丈夫!」
クリスティーネの表とシロの表を見て、”窟”のことを思い出したナーシャが慌てて、”大丈夫”だと主張する。窟が魔で溢れるようなことがあれば、今の様な立ち回りができないのは、ナーシャでも理解ができる。
クリスティーネの指摘と表で思い出したナーシャは、慌てて言葉を繋げた。
「うん。大丈夫!このお茶會が終わったら、一度ロックハンドに戻って家の中を確認してくる!ね。クリス。それでいいよね?ね?」
クリスティーネがダメな子を見るような目でナーシャを見るが、大きく息を吐き出して、シロを見る。クリスティーネの視線に気が付いたシロは微笑みながら頷いた。
「そうなので。それなら、一度ロックハンドを見せたいから、ヴィマとヴィミとラッヘルとヨナタンを同行させてもらえる?」
「いいの?」
「えぇいいわよ。今は、私もルートも比較的余裕があるから大丈夫よ」
ルートガーには余裕はないのだが、クリスティーネには余裕と思える狀況になっている。
それは、ツクモが返ってきて、行政區に顔を出しているために、ルートガーがけ取っていたツクモへの報告や陳が直接屆けられるようになって、手配を行っていたクリスティーネと従者たちに時間ができている。
「ありがとう!」
なぜ、”ありがとう”なのか、突っ込むような人間は居ない。
それからしばらくは、和やかなお茶會が続いた。
シロが湖やツクモの邸から出てこないことから、カトリナが商業區の様子を報告している。シロも、ツクモから聞いているから、商業區の様子は把握しているのだが、実際に商業區の様子となると、働いているカトリナと常連となっているナーシャの説明がほそぼそとした狀況に言及している。シロも、ツクモから聞いている話は、人とのきが中心になっているために、カトリナやナーシャの話にある”空気”を聞くのもだいじだと考えている。シロだけではなく、クリスティーネも行政區や長老衆の所に居る事が多く商業區まで手が回っていない。
お茶會という場である事もあり、商業區の噂話などは報告書に上がってこない容だが、無視できるような容でもない。シロとクリスティーネは、ナーシャが笑いながら話をした”うわさ”を調べることにした。
シロとクリスティーネは、何も言わない。
クリスティーネは、シロにまかせることに決めたようだ。かせる手駒は、シロの方が多い。お互いに、相手が何を考えているのかわかっている。シロは頷いて肯定する。クリスティーネは苦笑で返すことしか出來なかった。
「ステファナ。任せていいかしら?」
シロが指名したのは、ステファナだ。
レイニーも居るのだが、調べものだけなら、レイニーの方がよかったかもしれないが、潛の必要になる場面が考えられるために、シロは安全を考えて、ステファナを指名した。
シロの影の中で護衛をしている眷屬が、ステファナに移したのをじたシロは安心した表を浮かべる。
そして、シロが安心した表を浮かべたことで、レイニーも納得したのか一歩下がって、ステファナが持っていたソーサ―をけ取る。
「はい。お任せください」
シロの命令をけて、ステファナは給仕の仕事をレイニーに任せて、皆に向けて頭を下げてから部屋を出る。
話のり行きがよくわかっていなかったが、話の區切りが著いたと判斷したナーシャが、シロを見て、シロに縋りついているエリンを見つめる。
「えぇなんで、エリン姫は、シロ様に縋りついているの?珍しいよね?いつもは、橫に座る事はあっても、そんなに周りを警戒しないよね?何かあるの?」
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