《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1640話 サカダイの町で行われる、最後の會議

「ヌー殿達が言う通り、我々がやるべき事は変わらない。明日、予定通りにソフィ殿の力を借りて『ゲンロク』殿達の里へ向かい、そのままコウヒョウりを果たした後に『妖魔山』へ向かうとしよう」

シゲンの言葉に全員が神妙に頷いた。

「では改めて確認を行わせて頂きます。當初の予定ではシゲン総長に私、そして組長格で『止區域』まで向かい、副組長を含めた幹部の者達を中腹付近で駐屯という話でしたが、前回の襲撃の件を考慮して各組の副組長以下、特務を含めた隊士はこの『サカダイ』の町の警備にあたって頂きます」

ミスズはそう告げるとその場に居る者達を見渡して、質問などがないかを確認した後、更に言葉を続けた。

「それでは次に移ります。まず我々は『ゲンロク』殿達『妖魔召士』組織とは違い、妖魔山にったことがありません。その為にまずは足場を固める意味を込めて、麓から中腹までを中心に調査を行いたいと思っています。そこで前回にも話をした通りに『鬼人』の集落を目指し、百鬼なきり殿の同胞の報を集めたいと思います」

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ソフィ達から得た報では、百鬼の同胞である『忍鬼どうにんき』は自由のになった後、人里を襲撃しようと『ケイノト』へ向かおうとしていた様子だったが、ソフィとの別れ際の様子を見るに大人しく『妖魔山』へ戻っただろうという話であった。

つまりは『妖魔山』で戻ってきているかどうかの確認を行う意味を込めて、中腹付近までにあるとされる『鬼人』の縄張りにある彼らの集落に向かう事が最善だという判斷に至ったのである。

「貴方達の目的を考えれば、し遠回りになるかもしれぬが宜しく頼む」

百鬼はそう言って立ち上がると、皆に頭を下げるのだった。

「百鬼殿、頭を上げて下さい。我々組織の今後の事を考える上で、貴方の集落へ向かう事はとても重要な事であり、最初に申し上げた通りに『妖魔山』の調査を行う為には必要な事なのです」

申し訳なさそうに頭を下げた百鬼に、調査を行う上で『鬼人』の棲み処に向かう事は好都合な事なのだと、説明を行うミスズであった。

決してこれは百鬼を思っての発言というわけではなく、これまで『妖魔召士』組織が管理していた『妖魔山』を『妖魔退魔師』組織が擔う事となる為、一から調べる事は當然であり必要な事だと、この場の者達に対しても示した形であった。

「かたじけない」

百鬼なきりは下げていた頭を戻すと改めて笑みを見せながら、ミスズに謝の言葉を告げるのだった。

「百鬼なきり殿、もし貴方の同胞が集落に戻っていなければ、いつでもこの『サカダイ』の町を拠點にして頂いて結構ですからね。我々組織は貴方をいち『妖魔』としてではなく、組織の客分として扱う事に決めていますので」

そのミスズの言葉に百鬼なきりは驚いた顔を見せる。そして他の妖魔退魔師の組長格の顔を見ると、キョウカがまず百鬼なきりに笑顔を向けて、スオウやヒノエも思うところはある様子ではあるが、嫌そうな顔を見せたり、反対するような言葉は一切発しなかった。

――彼らも『百鬼なきり』という鬼人の妖魔を『客分』と認めたという事だろう。

「恩に著る……!」

百鬼なきりは『妖魔退魔師』という妖魔と敵対している筈の人間達の組織の言葉に、目頭を熱くさせながら再び謝の言葉を告げるのだった。

(何・と・心・地・い・い・事・だ・ろ・う・か・。やはり人間とは他の種族と共存を行える種族なのだと再確認が出來た……!)

そう考えた末に、自分の心が打ち震えている事に気づき、ソフィは満面の笑みを浮かべるのだった。

「それではソフィ殿、明日は申し訳ありませんが、お力をお貸し願います」

笑みを浮かべているソフィが視界にったのだろう。ミスズは最後に彼にそう告げる。

「うむ、了解した。ゲンロク殿の里もコウヒョウとやらの町もいつでも移は可能だ。我に任せるがよい」

ソフィの返答にミスズとシゲンが謝の言葉を口にして、改めて頭を下げるのだった。

――こうして『サカダイ』の町での『妖魔退魔師』組織との最後の會議が終わり、ソフィ達はサカダイの町に別れを告げて、明日あすから『妖魔山』へ向かう事となるのであった。

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