《天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭なと便利スキル『創魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~》第463話 ヴァントウ巣殲滅作戦事後

比較的軽傷だった兵士たちが、戦後処理に當たる。

「すまんが一人師をこちらに寄越してくれ。源を増やしてほしい。薄暗くて細かいものが拾えん」

源が増やされ、改めて現場の慘狀を目の當たりにする兵士たち。

が増やされた影響で見えてなかったが見えるようになり、中には嘔吐する者も……

「うっ……酷いなこれは……の原型が無い者が結構いるぞ?」

「これは個人を特定するのは難しいかもしれないな……」

「ネームタグが殘ってれば良いんだが……」

「このまま置いておくと獣に持って行かれてしまう。町の方々には悪いがヴァントウの町の広場を一時的な収容場所にさせてもらおう。収容場所を作っておいてくれ」

「了解」

「納袋を持って來てくれ、とりあえず見えているものから回収していく」

また、別のところでは救護班が忙しくき回る。

「重傷の方からこちらに來てください!」

瀕死の重傷を負っている者にも回復が施される。

アルトラ考案の【癒しの水球リジェネレート・スフィア】により、が上下に分斷されるような即死級の大怪我でも生きてさえいれば回復する可能が大幅に高まったためだ。

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魔法で急激な再生を促した場合、再生時にけた時のダメージとほぼ同等の痛みをもう一度味わうことから、以前までなら即死級の大怪我は『もう一度痛みを味わう』という観點から回復した瞬間にショック死する可能が高かったため、そのまま死なせてやるのが溫という風だった。

ただし、この【癒しの水球リジェネレート・スフィア】は水・・闇の三屬が必要なため、三つ全てを一人で賄える者はほとんどおらず、二人一組、あるいは三人一組で回復に當たる必要がある。

ちなみに、『アルトラ考案』と書いたが、この魔法が出來た経緯はただの偶然の産にしか過ぎない。たまたまゆっくり回復することを選んだだけである。 (編み出した経緯は第103話を、正式に確立した経緯は第133話を參照)

「マルク殿もこちらへ。脇腹、重傷を負ってますよね?」

「ああ……すまないが回復を頼む」

服をたくし上げて脇腹を見せる。

「これは……木の霊の方々には骨が無いんですか?」

「無いな。我々には骨が無いから骨折の痛みは分からないが……相當抉えぐられてしまった」

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木の霊であるマルクには骨に當たるものは無いが、を構している木の組織が抉えぐり取られ、風が開いた狀態になっている。

「ち、も出ないんですね……いや、よく見れば何かが……」

「樹だな。怪我したところを治そうとするために樹が分泌される」

「痛みは無いんですか?」

凄く痛いよ」

「それにしては落ち著いてますが……」

「訓練の賜だな。魔力を帯びた攻撃では我々霊でもダメージをける。ヒトと違って出多量になることが無いから放っておいても死ぬことは無いと思うが再生にはそれ相応の時間がかかる。ずっと鋭い痛みが続いている、すまないが早めの施をお願いしたい」

「了解しました」

「消化とかは大丈夫ですか?」

「まあ影響はしてるだろうな。今は腹が減ってはいない」

臓ってあるんですか?」

「ヒトが思い浮かべるような臓ではないが、食人植や食蟲植とは違って食べを消化するためのは存在している」

マルクが回復施けた矢先、通信兵から質問をける。

「マルク殿、他の場所への援軍はどうしますか?」

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「もう援軍に行けるほどの余力は無いな……」

「そうですよね……カゼハナへ報告しなければならないので一応聞いたまでですが……」

「援軍に行ったところで、この満創痍の軍では足手まといになるだけだろう。ボレアースとカゼハナの行く末は擔當しているアルトラ殿とアスタロト殿に任せよう。カゼハナの司令本部へは『ヴァントウの巣の殲滅が完了した』との報告も送っておいてくれ」

「了解しました」

「ふぅ……ここまで厳しいジャイアントアント駆除は初めてだ……この分では他の場所も苦戦しているかもしれんな……」

そしてマルクが獨り言のように呟く。

「しかし、アレはそのまま殘っているのだな……部は燃えていたのに、外骨格は煤すすけた程度で済むとは……一どんな生組織で出來ているのだ……」

目線の先には先ほどまで戦っていた銀のアリの立ち往生した姿。

その近くで子供のようにはしゃぐフリアマギアが居た。

「見てくださいよ皆さん! この銀のアリの外骨格! 中だけ燃え盡きて外側だけ綺麗に殘ってますよ! しかも立ったままだなんて! カッコイイ!」

「は、はぁ……そうですね……」

「今まで殺し合いしてた相手なのに……」

もはや疲れ過ぎて、そんなことどうでも良いと思うエリザレア、ラッセルたちとは対照的にハイテンションで外骨格の周りをうろつくフリアマギア。

「惜しむらくは、左側の顔壊しちゃったことですねぇ……どうにか壊さないで中だけ燃やせれば良かったんですけど……」

「そこを壊さないときっともっと死人が出てますよ」

「くぅ~~……壊すとしい姿じゃなくなり、壊さないと勝てなかった、ジレンマですね……」

「害蟲である以上仕方なかったのでは?」

「こんなに金屬質でしいのに害蟲だなんて……ところで、これって持って行って研究しても良いですかね?」

「まあそんなの興味あるのはあなたくらいでしょうし、好きにしたら良いんじゃないですかね?」

近くに座って項垂うなだれていたエリザレアが雑に応答。

「やったー、雷の國の総隊長にも許可取れましたし、じゃあこれはもう私のものです! 誰にも渡しませんよ!?」

「いや、殘念だが樹の國の総隊長として、それは許可できない」

回復施けながらマルクが異を唱える。

「ム! な、何でですか!?」

「珍しいアリの外骨格だからな。オークションにかけて今回の報奨金や戦死者の賞恤金《しょうじゅつきん》 ※に充てる。それに恐らく今後の貴重な資料にもなり得る。多分また博館行きだ」

(※賞恤金しょうじゅつきん:本作二回目の登場。公務員に危険任務で死亡したり傷害を負ったりした時に、弔意やお見舞いの意味で支払われるお金だそうです)

「それならオークションの落札額と同等の金額用意しますよ!」

「そう言うなら君もオークションに參加して堂々と落札したら良い」

「うっ……それもそうか。開催される日取りを絶対教えてくださいよ! 貴重な研究資料なんですから!」

「だがフリアマギア、數億じゃ済まんと思うぞ? 希に加えて、造形もあるし」

「お! マルク殿にもこれの造形が分かるんですか?」

しはな。蒐集家コレクターやマニアならもっと価値を見出すだろう」

「數十億くらいなら今まで稼いだ貯金をはたけば何とか……」

「そんなにしてまでしいものか……?」

研究のことしか頭に無いフリアマギアには、この謎の素材である外骨格は是が非でもしい。

「だって、これが何の薬品で壊れたのか気になるじゃないですか! ああ~~……薬品を三つに分けて一つ一つ別の弾丸にするべきでした……」

「そんなことしたら二発目以降は対策されてたかもしれないだろ……まあ、再びコイツが現れた時のために研究しておいた方が良いのは確かかもしれないが……」

「え? じゃあ……貰って良いんですか!?」

「ダメだと言っただろ……だが、左顔面の壊れたところならしだけ持って行っても良い」

「え~……それだけですか~……?」

「文句があるならオークションに出品されたのをきちんと買ったら良いさ。それなら誰も文句を言わん。今回働いてくれた兵士のこともあるから、全部フリアマギアが持って行くのは許可できない」

「分かりましたよ……左側全面持ってくくらいは良いですよね? 左顔面は面積なんてほとんど殘ってないですし」

「ああ」

「ですが……問題はどうやって切り取ったら良いのかってことなんですよね……普通の刃じゃ傷つかないですし……」

「さっきソイツを撃ち抜いた薬品を使ったら良いだろ。すぐに研究結果が出るじゃないか」

「すぐ出る研究結果なんて面白くないですよ。それにもしかしたら薬品以外に外的要因があるかもしれませんし。例えば壊すのに雷の衝撃が必要だったとか」

「まあどうでも良いから、左顔面だけなら好きにしろ」

「じゃあ、とりあえず側の燃えカスと煤すすを綺麗にしてしまおうかな」

一部とは言え銀の外骨格を貰えることになり、ご機嫌なフリアマギアにラッセルが訊ねる。

「そういえば、作戦前に話してもらえなかった手袋型の魔道を作った用途って何だったのですか?」

「あ~……子供の頃に傷を作った友人がいましてね。私たちは魔法がそれほど得意な種族というわけではないので回復魔法が使える者がいなかったんですよ。結構深い傷だったので『塗り薬の効果を十倍にしたら良いんじゃないか』と思ってこの魔道を考案しました。子供ながら淺はかな考えではありましたが……」

「それで、実際に治りが早くなったんですか?」

「まあ……傷の治りは早くなったとは思います。薬を塗って二時間後くらいにはもうほとんど傷が塞がっていたので。しかし同時に毒のような質まで帯びてしまって、その友人は一日二日腹痛で寢込んでしまいました。薬も過ぎれば毒になるってやつですね。よくよく考えれば無闇に使うと危ないってことで今まで封印しておいたんですが……こんなところで役立つ日が來るとは思いませんでしたね」

「逆に考えると、その日の出來事が無ければ、今回のアリを倒すことはできなかったかもしれませんね。ところで……外骨格にれてるそのは何ですか?」

先ほどから外骨格に流しれているが気になって再び質問するラッセル。

「ああ、これは煤すすを食べてくれるバクテリアを溶いた水ですよ。炭まで行ってしまうとすぎて食べてくれませんけど。煤すすや灰程度なら除去してくれます。燃えカスにこれを付著させるだけで徐々に徐々に綺麗にしてくれるんですよ。仕事柄燃え殘ったものに遭遇することも多いので常に量攜帯しているんです」

「へ、へぇ~……そんなのあるんですね……」

「オークションにかけるにしても綺麗にしておくに越したことはないですから」

フリアマギアたちが雑談に興じる中、巣部を調査していた兵士から中の様子がマルクに報告される。

「マルク隊長、巣部にもヒトのものと見られるがあるようですが……いかがいたしますか?」

「恐らくヴァントウの町の住民と、我々が到著する前に働きアリによって巣に連れ込まれたアーヴェルムの第一陣の兵士たちだろうな。狀態は?」

「レッドドラゴン八人もの炎で焼かれていますからね……全てのが原型を留めていません。一番マシと思われる狀態でも炭化しているような狀態でして……酷いのになると骨までほぼ灰になっているものも……裝備していたと見られる鎧も高熱でドロドロに溶けていて、恐らく個人特定は不可能かと」

「そうか……やむを得なかったこととは言え、ごには可哀想なことをしたな……ではアーヴェルムに連絡を取って、適切に埋葬しよう。出來る限り見つけてやってくれ。國の方で回収をむのであればお返しする」

「了解しました」

「あ、いや、ちょっと待ってくれ! フリアマギア! ちょっと來てもらえるか?」

エリザレア、ラッセルらと雑談していたフリアマギアを呼び寄せる。

「何でしょうか?」

「君が開発した魔力紋というのはを判別することができるのか?」

「できますよ。しかし炭化まで行ってしまったは不可能に近いです。そういうは個人を特定できる魔力が殘っていないことがほとんどですし。骨があまり損壊していなければそれを取り出すことで可能だと思いますが……ただ、個人特定をするにはそれに加えて比較のために、それが誰のものであるかか確定しているの一部が必要です。例えば髪のとか爪とか。それに魔力がしでも殘っていなければなりません」

「そうか……では今回の巣部のは特定がほぼ不可能ということだな……君、引き留めてすまなかったな。引き続きの回収を急いでくれ」

「了解しました」

こうしてしばらくの間戦後処理は続けられる。

ジャイアントアント駆除の報は、アーヴェルム國の國家機関へも伝えられ、ヴァントウの町民へも避難命令が解除されたことが伝わる。

町民も徐々に戻って來ることだろう。

これにてヴァントウ戦は終了です。次は一旦アルトラへと戻ります。

近々法事があるため、月曜日はお休みを頂きます。

次回は4月25日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

第465話【ティナリス、ボレアースへ】

次話は來週の木曜日投稿予定です。

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