《天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭なと便利スキル『創魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~》第466話 世界中に出現したジャイアントアント

風の國ストムバアルのボレアースに出現したジャイアントアントたちに呼応するように、世界各地でジャイアントアントの出現が相次ぐ。

■風の國ストムバアル隣國、樹の國ユグドマンモン・第一首都ユグドグラン王城、魔王代理トライアのところ――

「トライア様! 風の國に派兵されたマルクからの事前連絡の通り、國にジャイアントアントが発生しました!」

「そうですか。それで數はどれほどですか?」

「それほどの數ではないと見込まれています。……が、地元住民が被害に遭っていますので早々に対処しなければなりません」

「すぐに守護志士を送って、駆除に當たらせてください」

「しかし、森の中ゆえに、既に分散してしまったアリもいるようで……」

「木の下位霊と樹人たちに探させましょう」

その時、魔王お付きの空間魔師・ジョアンニャがトライアの下を訪れた。

「國を揺るがしかねない急事態と判斷され、守護志士をすぐに現場に送るようにとの王のお達しです」

「マモン様の容は良よいのですか?」

病で碌にかない樹の國魔王マモンを心配するトライア。

「依然として調に変化はありません。悪いながらも安定していると。今日は病院に滯在すると仰ったので、私が守護志士のみなさんを現場まで連れて行きます!」

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「そうですか、ではお願いしますね」

■樹の國ユグドマンモンとは逆側にある風の國ストムバアルの隣國、雷の國エレアースモ・首都トールズ王城――

「アスモデウス様! 風の國に派兵されているラッセルらの連絡通り、風の國との國境の町・フゥライ付近でジャイアントアントが発生しました!」

「……數は……?」

「現時點ではないものと見られます!」

「……そう……じゃあ、近隣住民を避難させてアリの侵攻を食い止めておいて。雷の國はジャイアントアントにとってあまり好ましくない環境だから、多分そんなに侵してくることはないと思う……私が行って一掃する……アルフを呼んで……」

「ハッ!」

雷の國の空間魔師・アルフを呼び寄せる。 (アルフについては第117話參照)

「……アルフ、國境の町フゥライへ行くから、空間転移をお願い……」

「了解しました」

■風の國ストムバアルと離れた國、樹の國と海を隔てた土の國ヒュプノベルフェの海岸近くの漁村ジェムコースト――

し時は遡さかのぼり、風の國からアルトラにジャイアントアントの件が伝えられる一日前、そこには土の國の兵士たちの大軍が集まって來ていた。

「なぁ……さっきから國の兵士がどんどん増えているが、何でこんな々しいんだ? 海岸の方を見張っているようだが……しかもこんな大軍で」

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「さあなぁ……まさか戦爭でも始まるのか?」

「戦爭ぉ? じゃあ俺たちはどうしたら良いんだよ」

兵士がどんどん集まてくる村の様子を見て、不安を口にする村民たち。

次の瞬間、漁村の住民に対し一人の兵士が拡聲魔法を用いて大聲を上げる。

「ジェムコーストの皆様方! 我々は土の國正規軍です! 突然のことですがここは二日後戦場になります! 本日中に避難場所へお連れ致しますので、すぐに移できるよう準備をしてください!」

突然の“戦場”宣言に驚く村民たち。

「せ、戦場!? ど、どういうことですか!?」

「“上”から二日後『ナニカ巨大生が海岸より上陸する』とのお達しがあり、ここを防衛せよとの命令が下りました。巨大生については我々にも詳しくは分かりませんが、すぐにでも避難準備を」

土の國では“上”から兵士たちにお達しが來ることがそれなりに存在する。

この“お達し”を元に兵士たちが行を起こすこともままある。

「で、でもそんな簡単に避難なんて……」

「あなた方一般の亜人がここに殘れば命を落とす可能が濃厚ですが、それでも殘りますか? それがご意志であれば尊重致しますが……その場合はご自を守ってもらう他ありません」

「わ、分かりました。早々に準備します……」

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ジェムコーストの村民たちは、何が何やら分からない狀態で広場に集められ、土の國の空間魔師の転移魔法で避難した。

そして二日後の現在。漁村ジェムコースト――

海岸を見張っていた兵士たちが海から飛んでくるナニカに気付いた。

「おい……海の向こうから何か飛んでくるぞ?」

「巨大生ってのはアレのことか……」

多數の羽アリが海を渡って土の國に上陸。

「こ、これってまさか、ジャイアントアントなのか……?」

「待て! 羽があるぞ!? 羽があるジャイアントアントなんて見たことがない」

この時點で風の國に援軍を送っていなかった土の國は、雷・樹の國の二ヵ國とは報が遅れていたため、羽アリと潛水アリがいることがまだ知られていなかった。

海岸に居た兵士たちの上空を羽アリの団が飛んで行く。

「アイツらどこまで飛ぶつもりなんだ?」

「おい! 空にだけ気を取られるな! もう海からも上陸している! 後ろだ!!」

「なに!?」

その一言により、咄嗟に盾を構えて振り返る。

羽アリの一撃により薙ぎ払われる兵士。

「ぐあっ!!」

盾で防し、瞬時の判斷で半歩退いたことにより致命傷は免れたものの、大きく弾き飛ばされてしまった。

「“上”から知らされた通り謎の巨大生だな。羽があるジャイアントアントに見えるが……よし、今から掃討作戦を開始するぞ!」

■同じく風の國ストムバアルから離れた國、水の國アクアリヴィア・首都リトリナの海岸――

「おい……何かでかいのが網に引っ掛かったぞ?」

「ゲッ何だこりゃ! 海の中に巨大な蟲か? 海に蟲なんかいるの初めて見たぞ?」

網に引っ掛かった潛水アリを見て驚く漁師たち。

直後、潛水アリが網を引き裂いて漁師の一人を毆り飛ばした!

「ガッ! グァァッッ!!」

毆り飛ばされた漁師は、海岸の巖まで吹っ飛ばされ、『ドオォォン!』という派手な音を出して激突、巖へとがめり込む。

鉤爪狀の前腳で毆られた腹は、上半と下半が辛うじて繋がっていると形容されるほどの巨大な裂傷だった。

「ゴフッッ!!」

そのまま口から大量に吐し、ガクリと項垂うなだれて事切れる。

「あ、あ……うわぁぁぁ!!」

「逃げろ! すぐ逃げろぉぉ!!」

「騎士団! 騎士団に連絡しろ!!」

その後もゾロゾロと海岸を上って來る潛水アリの集団。

この慘事はすぐに王レヴィアタンの耳にもる。

「レヴィアタン様! トリトナの港へと繋がる海岸にて正不明のアリのような巨大生が侵攻してきたようです!」

「巨大なアリ? まさか風の國で発生しているって言うジャイアントアント?」

「ジャイアントアントが海の中を潛って來るという話は聞いたことがありませんが……」

土の國と同じく、風の國に援軍を送っていなかったため報が遅れている。

「巨大なアリなのにジャイアントアントではない? でもアリの姿をしてて海に潛る? ますます謎だね。それで現在の狀況は?」

「トリトナ騎士団が出て討伐に當たっているので、一般人の被害はないようです」

「そう、じゃあ今回は私が出るまでもないか」

そう思った矢先、騎士の一人が慌てて駆け込んできた。

「ご報告致します!! トリトナ港より三十キロ北にあるリップル海岸でもアリのような巨大生が多數上陸したとの報告が!!」

「一何ヶ所で上陸するの? そちらに現れた數は?」

「現在は四十から五十ほどの數が確認されています! 既に近隣の町にも迫っており、急ぎ騎士団の要請をと」

「ちょっと多いね……騎士団員は西側の港に出張ってるし。じゃあそっちは私が行くよ。サリー」

水の國・筆頭空間魔師であるサリーを呼び寄せる。 (サリーについては第303話參照)

「ハッ! ここに!」

「私に帯同しなさい」

「はい」

「じゃあリップル海岸までよろしく」

■またところ変わって、火の國ルシファーランド・屬國フラメラ國東にある港町――

港町は海から上陸した潛水アリに破壊され、町民たちは叩き出されていた。

その慘事の最中《さなか》、港町に到著したのは、反政府組織『宵の明星』のメンバーだった。 宵の明星については第406話でれています

「こ、これは一……どこから湧いて來たんだ?」

「港町に潛伏している反政府組織レジスタンスメンバーによると海から上陸してきたようだ。急事態を知らせる報告だったが、既にこんなことになっているとは……」

破壊されている港町を見て驚愕するレジスタンスメンバーたち。

「全く、牢屋から出されて早々、こんなところに行けと言われるとはな……」

「人使いが荒い!」

「民を助けて味方に付けるのが我々末端の役目ですから仕方ないのですよ」

そう言ってメンバーを諭すのは、アルトラ一行が砂漠で遭遇した砂賊の砂の霊にソックリな男だった。 (第400話から第402話參照)

「だって、サンドニオさんは私たちを送り出すだけで自分ではあまりかないじゃないですか~」

「あのヒトはあのヒトにしかできない役目があるから仕方ないんだよ。奴隷のフリもしなきゃいかんしな」

「ぐ、愚癡ってないで、とりあえずあれを何とかしましょうよ! 町民がでっかい蟲に追われてますよ!?」

「巨大なアリのような生に見えますが……これが噂に聞くジャイアントアントでしょうか?」

「一般人からレジスタンスにった俺たちじゃ分からんな」

「レオラエル、軍経験のある君なら分かるんじゃないか?」

レオラエルと呼ばれた者も、アルトラが砂漠で戦った砂賊にソックリなライオン型の獣人だった。 (第398話參照)

「確かに……ジャイアントアントなら見たことがあるが、俺が見たことあるのはあんな形狀ではなかった」

「亜種ってことか?」

「さあな。だが形狀が違うとは言え、アリにしか見えん。見たところ魔法に類する攻撃方法は持っていないようだし、ジャイアントアントと同じ対応で戦おう!」

「で、的にはどう戦えば良いんだ?」

「まずあれらに対して近接戦闘は厳だ、あの腕で攻撃されれば亜人などひとたまりもない。遠距離から魔法で――――俺たちでは一人で倒すのは不可能に近いから三人一組で――――火を使えるヤツはアリに有利に戦える。働きアリ程度なら雷も通じるだろう――」

火の國で軍経験のあるレオラエルがこの場にいるレジスタンスメンバーに戦い方を教える。

「ああ、それとサンドレッド、もしあいつらがジャイアントアントだった場合、アレらの攻撃は砂の霊のあんたでもダメージをけるから注意してくれ。至近距離で喰らえば致命傷にもなりかねない」

サンドレッドと呼ばれた砂の霊が返事をする。

「なるほど、肝に銘じます。レオラエルの言う通り、三人一組で行し、一部隊一匹倒すのを目標に行しましょう。政府軍に見つかるのは厄介ですので、政府軍が來たらそれ以降は彼らに任せて我々はすぐさま撤退。命が一番大事です、無理だと思ったら倒せなくても退いてください。みんな死んだり捕まったりしないように!」

「「「了解!」」」

■そして最後にアルトレリアの狀況。アルトラ邸にて――

「リディア様、ネッココ様、所用でし外に出てきます」

「ん? どこか行くのカ? ご飯ハ?」

「お晝ご飯はお弁當を用意してきました。夕ご飯までには帰宅しますので」

「わかっタ!」

『いってらっしゃい』

ジャイアントアントの中立地帯《アルトラルサンズ》への侵じ取ったカイベルは、まずダム建設現場で働くレッドドラゴン・リースヴュールとルルヤフラムのところへ急ぐ。 リースヴュール、ルルヤフラムについては第364話參照

「リース様、ルルヤ様」

建設作業中だったリースヴュールとルルヤフラムに聲をかける。

「あ、カイベルさん! こんな埃っぽいところへどうしたんですか?」

「間もなくアルトラルサンズ國へジャイアントアントが來ます。赤龍峰からの連絡役を仰せつかっておりますよね?」

「はぁ? 連絡役ぅ~? 何だっけソレ?」

すっかり忘れているルルヤ。

「ほら、昨日族長から超音波で來たヤツだよ」 (第447話參照)

しっかり者のリースが説明。

「………………ああ、アレか、すっかり忘れてたわ。それで私たちはどうしたら良いの?」

持參した中立地帯・アルトラルサンズ國の地図を広げる。

「赤龍峰のレッドドラゴンたちと合流し、このマップの南西と南の海岸へ行ってください」

「ここにジャイアントアントとかいうのが來るの?」

「はい。私の見立てでは六時間ほど後に上陸すると思われます」

「ど、どんな見た目してるの? 間違ったヤツを焼き払っちゃったらソイツに悪いし!」

「描寫しましょう」

紙を用意し、潛水アリの全像を描畫するカイベル。

「上手うまっ!」

「これって蟲ですよね? 海岸ってことは水の中を泳いで來るんですか?」

「はい。これが沢山上陸して來ますので、南西と南の二手に分かれて、全部殘らず焼き払ってください。一でも殘れば一般人にとっては脅威となりますので」

「カイベルさんはどうするんですか?」

「三ヶ所から上陸すると想定していますので、私はもう一つの南東の海岸へ向かいます」

「お、お一人で大丈夫なんですか?」

「問題ありません。ではすぐにここを発ちますので、南西と南の海岸をお願いします」

「「りょ、了解」」

それぞれの國、それぞれの地域、世界を巻き込んで多くの人員がジャイアントアントに割かれる事態に。

今回、あちこちの國へザッピングしますが、読みにくくはなかったでしょうか?

ジャイアントアントがあちこちに出現したことを示すために、一エピソード中で複數のザッピングをしました。

【お知らせ】

ここまで読んでいただいている方、申し訳ありません。

二週間か三週間くらい調不良が続いており、調不良を押して騙し騙し執筆を続けていましたが、寢込んでしまう日が數日あり投稿速度が追い付かない事態になってしまいました。

ストックもし先のものはあるものの、直近のものは切らしてしまっているため、次回予告通りに投稿できるかどうか不明になってしまいました。

今週の木曜日までにエピソードが間に合わなかった場合は、來週の月曜日に投稿したいと思いますので、ご了承いただけると幸いですm(__)m

次回は5月2日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

第467話【カゼハナの巣・第二ラウンド】

次話は上記の通り木曜日に投稿予定です。投稿できなかった場合は來週の月曜日に投稿となります。

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