神斗の放った『魔力波』だが、先程イダラマが放った『魔波空転まはくうてん』よりも明らかに威力が上をいっていた。卓越した『妖魔召士』であれば、その込められた『魔力』の度で判斷が出來たであろうが、単なる一般人であっても分かる程に可視化されたその膨大な魔力波では、度を推し量るまでもなく理解が出來るであろう。

『魔力』の総量でもその練度ですら、ランク『８』のイダラマを上回る『妖魔神』たる『神斗』の魔力波がイダラマを襲い掛かろうというのに、彼は笑みを浮かべて自に纏わせている『魔力』を一つの『』を施す為に使用する。

そしてそれこそが本當の彼の狙いであり、大へと繋がる一縷の希と呼べる代。

――僧全捉、『鏡魔姿移きょうましい』。

質量を持った『イダラマ』の分が、彼自の前に突如として出現を始めるのだった。

「ほう？」

「これは紛いモノではなく、しっかりと『魔力』を持っているか」

「なっ！？」

イダラマの用いた『鏡魔姿移』のに、再びイダラマ自に興味を示した『悟獄丸』に、冷靜にの分析を行う『神斗』、更には純粋に驚く『七尾の妖狐』。

――三者三様に違う反応を見せながら、イダラマの次の行に著目するのだった。

イダラマは自の捉である『鏡魔姿移』で自分の分を作り出した後、この後に何をするのかと妖魔達に注目されている中で、そのままを捩って『神斗』の『魔力波』から回避をする事を優先するのだった。

イダラマの生み出した分が壁となった事で、イダラマ自は『神斗』の『魔力波』から逃れる事は出來たが、それでも先程『鏡魔姿移』で生み出された分は、あっさりと神斗によって消し飛ばされてしまった。

「まあ、あの距離で私の攻撃を回避して見せた事には、驚嘆に値はするが……」

「何だ？　あの生み出した分で何をするのかと期待したが、単に壁に使っただけなのか……？」

『神斗』と『悟獄丸』はイダラマが見た事のないで分を生み出した事で、この後に何を行うのかとそちらに注目をしていたのだが、結局は神斗の『魔力波』を回避するに留まり、生み出した分があっさりと消えた事で肩かしを食らったように訝しんでいた。

そしてそのまま彼らは何かを期待する心境から訝しみ、そのまま落膽へと変わったかと思うと、最後には失する目へと移っていった。

「何だよ、本當に壁に使っただけなのかよ。それだけの役割で分を編み出すくらいなら『結界』で十分だっただろうに、期待させやがって」

無事に回避してみせた事で満足気にしているイダラマを見て、悟獄丸は大きく溜息を吐くのだった。

「しかし悟獄丸、あの者が私の攻撃を回避する為に使ったの『魔力』は侮れないものであった。本當に壁にするだけに使ったと思うか？」

何処か腑に落ちない様子でそう告げる神斗に、悟獄丸は眉を寄せた。

「それ以外に何があるって言うんだ？　俺には何かあるようには思えねぇが……」

そもそも先程放った『神斗』の『魔力波』はランク『８』までの妖魔や、それに匹敵する『耐魔力』を有する人間達であっても、一撃で消し飛ぶ程の度の『魔力』であった。それをしっかりと無傷で回避して見せたのだから、本來であれば見事だと褒めるに値する行であったことは間違いはない。

単に『神斗』と『悟獄丸』が、イダラマの新に対して過分に期待を寄せただけの事ではある。しかし神斗が直接攻撃を放ったからなのだろうか。何故か『神斗』は『悟獄丸』とは違って、いつまでも違和をじている様子であった。

そして神斗はその違和を拭う為に、イダラマに対して々と確かめようと口を開きかけたその時――。

――何と先程までイダラマが纏っていた『魔力』とは、度そのものと合いが全く違う『魔力』が彼の周囲を覆い始めるのだった。

「『帝楽智ていらくち』とは違い、想像よりも純粋にして禍々しさをじない『魔力』だな」

――何とそのイダラマの纏っている『魔力』の正は、度と『魔力』の値こそ違えども、先程『魔力波』を放った『神斗』のモノと同一の『魔力』であった。