《スキルイータ》第三百二十二話
ナーシャは、場の雰囲気を変えるために、最初から気になっていたことを聞くことにした。
普段との違いはあるが、質問した意図は、場を整えるためで、深い意味は持っていなかった。
「えぇなんで、エリン姫は、シロ様に縋りついているの?珍しいよね?いつもは、橫に座る事はあっても、そんなに周りを警戒しないよね?何かあるの?」
ナーシャとしては、敵の存在が気になるところだが、チアル大陸の中央と言ってもいい場所で、カズトたちが構築した警戒網を掻い潛ってこの場所を急襲するような組織はないと考えている。
この場にいる者も同じ考えだ。
そして、この場所を急襲する可能があるのは、エリンの種族だけだ。
エリンは、ただの族長の娘ではない。
全ての龍族をまとめる氏のトップだ。カズトよりも重要人だ。エリンが何者かに傷つけられたら、大陸中だけではなく、全龍族が襲い掛かってくる。そんな重要人が警戒しなければならない狀況は考えにくい。
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「え?旦那様を守るのは當然なのだ」
エリンは、シロから離れようとしない。
シロに抱き著いた狀態でを張るという微妙に難しい事をしている。ドヤ顔を決めているが、かわいいが先立ってしまうのは、エリンが稚園児くらいに見えるためだろう。
「ん?」「え?」「は?」
皆がそれぞれの表で固まる。
エリンは、皆を不思議そうな表で見回してから、気にしないように、シロに抱き著く。
「えーと」
場の雰囲気がさっきと違ったじになったことを悟ったが、ナーシャはエリンの言葉を反すうしている。自分がきっかけなのはわかっているがそれ以上に、エリンの言葉に衝撃をけている。
「エリン」
抱き著いていたエリンの肩を持って、しだけから離して、シロが話しかける。
エリンはかわいい顔でシロを見上げる。両方の眼で、しっかりとシロを見上げる。
「何?ママ?」
エリンは、シロを見上げているが、気にしているのははっきりとわかる。
「いま、”旦那様”と言った?」
確信に迫ることだが、シロにも心當たりはある。
実際に、遅れているのもわかっている。そろそろ、メリエーラに相談しようと考えていた。同時に、ステファナやレイニーに聞こうと考えていた。エリンの言葉を聞いて驚きはしたが狼狽えるようなことはない。
「うん!ママのここに、僕の旦那様がいる!」
エリは、シロのおなかに頬を摺り寄せながら嬉しそうに報告をしている。
お茶會だったはずが、ナーシャの質問から大きく話が変わってしまった。
「そう?エリンの旦那様が居るの?」
「うん。僕が・・・。まだ!そうだ!ママ。しだけ待っていて!」
「え?いいわよ?何をするの?」
「ちょっと、里に行ってくる。すぐに戻ってくるから待っていて」
エリンは、シロにではなく、最後の方は、宿った命に向けて話しかけているようでもあった。
部屋から勢いよく飛び出して、外に出た瞬間に竜族の本來の姿になって飛び立ってしまった。
「え・・・。と?シロ様?」
場をさらなる混に陥れた最初のきっかけはナーシャだが、ナーシャもここまでの結果が返ってくるとは思っていなかった。
「シロ様。まずは、メリエーラ殿をお呼びします。フラビア殿とリカルダ殿。あとは・・・」
クリスティーネが、シロに話しかける。
シロの子供は、ツクモの子供で、チアル大陸に住む者たちがんでいた跡継ぎだ。
エリンの様子から、竜族と縁を結ぶ者だ。大陸だけではい。
クリスティーネの呼びかけで、メリエーラがすぐにやってきた。ドリュアスたちにも”可能”レベルの話として事を説明している。ツクモにも話は伝わっているが、特有の話をすると言って同は遠慮してもらっている。
メリエーラは、シロにいくつかの質問をした。
初期の段階の”可能”があるという結論をだした。これで、エリンの言葉と合わせて、シロは確実だと思い始めている。
準備もなにも、シロに自覚癥狀が何もないので、何から手を付けていいのかだけで話を進めるが、的な方法は何も出てこない。シロの自覚ができてからの話は平行で進めることに決まった。
話の終わりが見えてきた。皆が一息れるために、出された飲みを飲み始める。
話に加わっていないのは、弾を投げ落として部屋から出て行ったエリンとナーシャだ。
「ナーシャ?」
追加で出てきたケーキを頬張って、ナーシャが呼びかけられた方向を向いた。
「ん?」
「いいわよ。食べちゃいなさい」
「ん!」
ケーキを食べ終わって皆の視線が自分に集まっているのはわかっているが自分には関係がないと思っている。
「はぁ・・・。ナーシャ。ここでの話は、誰にも話さないでね。私が、ルートとカズトさんと相談して、発表のタイミングを考える」
「うん?」
「いい。もし、外に話がれていたら、違ったとしても、ナーシャが言ったと思うわよ?」
「え?お祝い事だからいいのでは?」
「はぁ・・・。いい。他の人は・・・」
クリスティーネは、周りを見回して、大丈夫だと考えた。
やはり、危ないのはナーシャだ。
「いい。ナーシャ。シロ様が懐妊されたと知ったら皆がどう思う?」
クリスティーネの問いかけに、ナーシャはケーキにばしていた手をひっこめて考え始める。
ケーキは食べたいが、質問にしっかりと答えないと、次のお茶會に呼んでもらえないと考えた。
「うーん。嬉しい?特に、獣人族はお祝い・・・。宴會とかで、大騒ぎでしょう?」
ナーシャは、自分の周りにいる者たちや、付き合いのある者たちに、シロが懐妊したことを伝えた時の狀況を予測する。
特に、獣人族は皆が伝えたナーシャをもてなすほどの喜びを見せるだろう。そして、三日三晩の宴會が行われる。それ以上の宴會が行われると予測が出來るために、なぜ伝えたらダメなのか余計にわからなくなった。
「そうね。それじゃ、アトフィア教や中央大陸の人たちは?他にも、獣人族を排除しようとしている商人はいるわよね?」
クリスティーネは、ナーシャがどんな想像をしているのか、今までの言や行から、正確に見抜いている。
そして、その危うさもわかっている。ナーシャは、基本が”善良”な人だ。そして、善良な者は、善意を最善のと考えて行する。正しいことが全てであるかのように思う事がある。過去の自分が、まさに”正義”を信じて疑わなかった。正義の反対にあるのが、同じ質量を持った同じ正義だと考えなかった。
「え・・・??」
ナーシャは言われたことを考えた。
言われれば、考えることができる。
「カズトさんとシロ様の子供よ?そして、話の流れから、エリンを嫁に貰うことになる子供よ?」
「・・・。うん。あっ・・・」
ナーシャの表から、最悪は回避できたと考えた。
外で知られたとして、シロの暗殺が可能かと言われたら、限りなく0に近い。ただ、シロの暗殺が計畫されたと知った時のツクモのきが読めなかった。クリスティーネは、ルートガーが全てを把握して、チアル大陸をかすことをみの一つと考えているが、それはツクモやシロの不幸の上にり立つものではない。
「わかったみたいね。私たちから発表があるまで、黙っていてくれるわよね?」
「もっもちろん!」
「よかった。ナーシャさんや、ノービスはこれからも頼りにしているわよ」
「うん。うん!まかせて!」
怯えた表ではあるが、一安心した雰囲気を出してナーシャが頷いている。
ナーシャが納得したタイミングで、ドリュアスの一人が部屋に客人の訪問を告げた。
予測はしていたが、意外な人の來訪を告げられた。
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