《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1666話 魔の真髄

「素晴らしい。君の『過とうか』技法は予想以上に優れていたようだ」

神斗は自の『魔力波』の度や威力そのものをいくら上げたところで、完全に無力化される事を理解した。

それはつまりイダラマの『過』が、紛いモノといえる『軽減』といった誤魔化しで、完全回避狀態を作り出して見せている可能もあると考慮したようであるが、先程の攻撃で正しく完全回避なのだと理解したようであった。

何故神斗がその確信を持つに至ったか――。

それは先程の『神斗』の攻撃が、いち人間が『軽減』をしたところで耐えられる規模の威力を超えていた事に起因する。

まだまだ『神斗』は到底本気といえる狀態ではないが、それでも先程の『魔力波』の一撃はすでにイダラマどころか、この『妖魔山』に生きる全ての存在の中で自を除けば、隣でイダラマの『過』技法に向けて、これ以上ない程までに興味を示して見ている『悟獄丸』以外に耐えられる筈のない攻撃であったからに他ならない。

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その神斗の考えが正しいと同調するかのように、七尾の妖狐である『七耶咫』の表もまた、驚愕のに染まっていた。

(ほ、本當に……、に、人間程度が、あの練度の『過』技法に辿り著いたというのか!?)

――人間達が『止區域』と定めた領域の中では、ランク『9』や『10』の存在しかいない。

つまり七尾の妖狐である『七耶咫なやた』でさえ、イダラマの『耐魔力』とは比較にもならない耐久力を有しているのだが、それでも先程の『神斗』の『二の併用』を用いた一撃は、無傷で済ませられるものではなかったのである。

もちろん『七耶咫』もまた、自が有する何らかの『魔』の技法を行使すれば、イダラマがし遂げてみせたように、回避を行う事を含めて生き殘る事も可能ではあるだろうが、それでも今の目の前に居る人間のように無傷はあり得ない。

七尾の妖狐である『七耶咫』は、この瞬間までイダラマという存在を人間にしては多はやれるだろうくらいには考えてはいたのだが、先程の『妖魔神』の『魔力波』を何事もなかったかのように凌いで見せた事で、驚愕すると共に、イダラマに対する認識を大幅に修正し直すのだった。

この場にもしまだ『コウエン』が居たのならば、自が過去に『過とうか』技法の研鑽を積む事を斷念した事を後悔していただろう。

一度は必要のない『魔』の研鑽だと判斷を下した『過』技法が、如何に『魔』の中で優先順位が高いものであったのか。その事に先程の『神』の一撃を凌いだイダラマが証明してみせたのだから――。

「如何に殺傷能力に連なる『魔力』が膨大であっても、君の『過』技法を崩せないという事は理解した。確かに君程の『過』技法があれば、守りに徹する事で大半の『強者』と呼ばれる者達であってもその力を無力化出來る事だろうね」

そう言うと『神斗』は、威圧的なまでに高めていた『魔力』を弱めていき、やがてはイダラマを試す前の狀態程度まで『魔力』を戻すのだった。

そしてその言葉を聴いたイダラマは、を『魔利薄過まりはくか』で防いだままで堪え切れず相好を崩す。どうやら神斗に自らの『過』技法を認められた事が嬉しかったのだろう。

イダラマは目の前に居る『神斗』があれだけの規模の『魔力波』を撃って尚、自分の『魔利薄過』が『妖魔神』に対しても有効であったのだと気持ちを噛みしめていたが、何かを口にする前に『神斗』に言葉を被せられる。

「それじゃここからは、しっかりと『過』の技をしていこうか……」

「な、何……?」

イダラマはその『過』の技という神斗の言葉に、自分が口にしようとしていた言葉を呑み込まされるのだった。

「當然だろう? ここから先は正しく『魔・』の領・域・だ。君がその・り・口・に立っている事は確認出來たからね。こちらも『魔・』の領・域・へとらせてもらうだけだよ」

(ど、どういう事だ? こ、この『過』の研究果が『魔利薄過』であって、間違いなく『魔』の一・つ・の・到・達・點・の筈だ……!)

イダラマは自の『過』技法こそが『魔』の行き著く先、一つの到達點と考えていた。

ここまで研鑽の末に辿り著けたからこそ、自の『目標』の為に一念発起して、目の前に居るこの『妖魔山』の『妖魔神』である『神斗』や『悟獄丸』達を目指してきたのである。

自分が到達している『魔』の領域區分こそ、妖魔神達ですら容易に攻撃を與えられない程の終著點だと考えていた為、先程の神斗が放った『魔・』の領・域・の・・り・口・という聞き捨てならない言葉に、心で狼狽したというわけであった。

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