自の放った神域魔法の反を利用して恐ろしい加速をにつけながら、一気に神斗の『魔力波』に向かっていくが勢いを殺す真似をせず、エヴィは空気抵抗に逆らうように片目をうっすらと開けて、何とか太いビーム砲と見紛う『魔力波』に照準を合わせる。

そしてそのままコンマ數秒というタイミングで、再び『空間除外イェクス・クルード』を用いて神斗の『魔力波』を次元の彼方へと消し飛ばすと、そこから更に勢いそのままにエヴィは『高速転移』を使うのだった。

…………

「なっ！？」

忽然と自の放った『魔力波』が消し去られたが、流石に一度目と同様に何らかの方法で消し去られたのだとは理解する。

だが、彼は『理ことわり』や『魔法』が存在しない世界に生きてきた為に、この『魔』のカラクリ自には理解が出來ておらず、それを理解する間を與えられぬ前に、一瞬のに大魔王エヴィに間合いにられてしまい、その事を考えている余裕がなくなってしまうのだった。

――しかしそれでも間合いにられてからの神斗のきは、愕然と消し去られた『魔力波』を眺めていた時とは異なり、やるべき事を考える前に無意識にが行い始めるのだった。

…………

大魔王エヴィは狙い通りに神斗の懐へとり込む事に功し、當初の目的通りに神斗の『耐魔力』を一般人以下にまで失わせようと手を神斗にばした。

彼の『呪法』である『呪蝕カース・エクリプス』は、対象の耐魔力を一定時間ではあるが『魔』を攜わっていない一般人以下にまで低下させる事を可能とする。

戦闘中にこの『呪法』をければ相當の不利を被り、下手をすればそのまま勝負が決まってしまう程の影響が出る。それも戦っている相手は別世界の『理ことわり』や『魔法』を知している魔族、それも長く『魔』に攜わってきた大魔王である。一度でも耐魔力を失えば、あらゆる『魔法』を用いて神斗を仕留めようとするだろう。

この『呪法』を立させるには、直接相手のにれなければならず、如何に上手く懐にるかが懸念點であったが、エヴィは策を用いて上手く神斗に接近して見せた。

後は、耐魔力を失わせて『極大魔法』を放つ事で勝利を確定させられるだろう――。

手早くエヴィは神斗の首を摑もうと手をばした。

――しかし、その瞬間であった。

首を摑もうとするエヴィの手を逆に神斗は右手で摑んでみせた。

神斗は恐るべき速度で迫ってきたエヴィに驚きの表を見せたままだった為、エヴィの手を摑んだ事は無意識上の咄嗟の判斷であったのだろう。

「ちっ！」

（首を直接へし折る事は防がれたが、逆に手を摑んできた事は好都合だ！　このまま一気に『呪蝕』で耐魔力を……！）

最善は首をへし折る事にあったが、それでも狙い通りに相手にれる事には功した。相手が『アレルバレル』の『魔界』に存在する力ある魔族達であれば、即座にエヴィに摑まれた自の手を自ら切り離して、エヴィの呪いから逃れようとするところだろうが、この『ノックス』の世界であれば咄嗟にそんな対策は思いつかないだろう。

何をされるか分からない中では、取れる対抗策は限られてくる筈だと考えて、エヴィはそのまま當初の狙い通りに『呪蝕カース・エクリプス』を行使するのだった。

――だが、エヴィが『呪蝕カース・エクリプス』を使った瞬間に、彼自が苦悩の表を浮かべる事となった。

「なっ――！？」

「ふふっ、先程のは本當に素晴らしいきだったよ。君が私にれようとするまでその接近に気づけなかった程だった。だけどその後がいけないね。安易に自分にも影響を來すような『呪法』を用いた事は淺慮だと謂わざるを得ないよ？　特に私達『妖魔神』にはね」

「くっ、くそっ！」

エヴィは自の耐魔力が急激に失われていく覚を覚えると同時、直ぐに自分の姿を砂へと変えてそのまま逃げ出そうとする。

――しかし、全を砂へ変えようとしたエヴィだが、神斗に摑まれている手だけが砂に変える事が出來ず、その場から離れる事が出來なかった。

「ふふっ！　程、程。君のその自分の姿を砂に変える技法も、あの人間と同様に『過』技法が用いられていたわけか」

エヴィの手を摑んでいた神斗の右手が紫の『魔力』に包まれており、どうやらこれは『過』技法が使われているのだと彼は理解するのだった。

「カラクリを理解すれば後は簡単な事だ。今度は君に驚いてもらおうかな？」

『過』によってきを封じられたエヴィは、更に自分自の呪いによって、自らの耐魔力が無に等しい事を自覚して、これまでこの世界で見せた事のない程の焦る表を浮かべるのだった。

（ま、まずい！　僕が全力で離れようと『過』を展開しているのに、コイツはそんな僕の『過とうか』を上回る『過』技法で封じてくる。このままだと復活もできな……――）

そこまで思考が行き屆くと同時、エヴィは用意していた二の人形が、彼に遅れてこの場に辿り著くのを視界に捉えた。

（これだ……！）

「――はぜろ！」

最早一刻の猶予もないと判斷したエヴィは、目の前で膨大な『魔力』を展開している神斗と、おかっぱ頭の二の人形を見比べるように視線を行き來させた直後、直ぐに人形達に命令を口にするのだった。