エヴィは人形に命令を下した後、直ぐに自もける事になるであろう甚大なダメージを覚悟する。

本來であれば神斗に『呪法』を用いて耐魔力を下げた後、自は安全な場所へと砂になって移を行い、相手の耐魔力の消失を確認した直後に、この人形達二をぜさせてトドメを刺そうと考えていた。

だが、神斗の懐にり込むまでは良かったのだが、その後の問題が大きすぎた。まさか『魔』に関しては『アレルバレル』の世界よりも遙かに遅れているとじていたこの『ノックス』の世界で、エヴィ以上の『過』技法が確立されていたとは思いもしなかった。

確かに『魔』という概念の全てを把握するには、數百年や數千年程度で掌握出來る程に甘くはないモノではあるが、それでも大魔王エヴィの『過』技法は、イダラマの『魔利薄過まりはくか』より遙かに、その『防』に関して研究が進んでいるのである。まさか『魔法』すら存在していないこの世界で、エヴィの『過』を抑えられる存在が居るとは思わなかった。

つまりこの狀況は彼にとっては相當に危ういモノであり、自の能力でダメージを負ってでも、この神斗から離れなければならないと大魔王エヴィの思考は到達點を迎えたのだった。

エヴィの命令によって、この場にようやく辿り著いた二のおかっぱ頭の人形達は、直ぐに自を行おうと起の準備にった。凡そコンマ數秒で命令通りに自を行い、周囲一帯を巻き込む程の大発を起こすだろう。

呪法によって耐魔力を失わせる事が出來なかった以上は、ダメージ自に関してはめないだろう。しかしそれでも『過』によって能力によるきを全て封じられてしまっては、一度態勢を立て直すためにはこれしか方法はない。

――そしてエヴィの目論見通りに人形達は自を行った。

「ぐっ……！」

エヴィの作り出した人形達の自によって、當然に防の取れない使役者のエヴィもダメージを負う。使役した時のエヴィの力によって生み出された人形達である為、発の威力の調節などは行えない。流石に大魔王領域の放つ『極大魔法』程の威力はないが、それでも常に張っている程度の『魔力障壁』では耐えられるモノではない。

（手痛い傷を負ったが、ひとまず予定通りに距離を……っ！？）

「君の『過』を封じた後、諦めるような表を見せなかったから何かあるのだろうとは思っていたけど、こんな隠し玉を用意していたとはね。本當に君は用意周到だね？　戦闘に於いて先を読むという事に関しては非常に長けているようだ、でも……――」

何と神斗はエヴィの作り出した人形達の自に対しては、何も防手段を取らずにエヴィの手を摑み続けていた。

「なっ！？」

未知なる『魔』の技法によって生み出された『人形』達が、襲い攻撃を行ってきたというのに、神斗はそちらに意識を向けながらも対策を取らずにエヴィをこの場から逃さない事を優先したという事である。

當然、神斗はこの人形の攻撃が、どれ程のモノかを知っていたわけではない。下手をすれば神斗の想像を越えた殺傷能力予想であった可能もある。そうだというのに、一時的な人形の攻撃よりも、それを生み出した使役者のエヴィを対策する事の方が後々の事を考えて重要だと判斷して、人形達の攻撃をける事を選んだのであった。

――大魔王エヴィはここで初めて『妖魔神』である『神斗』を格上の存在なのだと理解する。

戦力値や魔力値といったモノで上を行かれるだけでは、頑なに自分より強いとは認めない大魔王エヴィが、あらゆる手立てを用いても敵わないと、目の前の神斗を認めるに至った瞬間であった。

「その顔を見るにこの先は用意していなかったようだね？　私が君の手を離す事が前提の攻撃だったというわけか。確かに手痛いダメージを被ったが、君をこの場で始末出來るのであればお釣りがくるよ」

――君を野放しにするのは、々危険なようだからね。

その言葉から察するに妖魔神である神斗は、大魔王である魔族エヴィを脅威と認識するに至ったようである。

そして神斗の『過』によって、エヴィの自の砂に変えて行う一時的な無敵狀態を生み出す『過』を封じたまま、発が生じた事で再び視界が閉ざされた空の上、神斗はトドメとなる『魔力波』をゼロ距離で放とうと『魔力』を一気に高め始めるのだった。

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