《ダンジョン・ザ・チョイス》693.無限定園と怪豚箱と七領域

「……なんだこれ?」

「なんなんでしょうね」

「本當、なんなのでしょう」

レンさんとフミノさんと一緒に、ただ目の前の景を眺めている。

鏡の先に広がっていたのは【無限庭園】と呼ばれる場所で、千の植モンスターを倒さないと抜け出せない厄介な場所……と聞いていたけれど。

「チトセ、“除草”が切れた。こっちを頼む」

「了解♪ ヘラーシャ、向こうの“除草”がなくなってる!」

「任せてください!」

庭園の一角を中心に“除草”を円狀に撒いて、そこに近付いてきた植モンスターが勝手に自滅していく。

円の外から攻撃が屆く距離に近付かなければ、いずれは千に屆くでしょう。

「この方法だと楽だけれど、散らばっている寶箱からアイテムを拾えないらしいわよ」

「まあ、モンスターからドロップする種や実のアイテムの方が大事らしいから、別に良いんじゃね」

二人とも、完全にやる気を失っている。

し移して寶箱を……」

でも、ここまでで結構な“除草”を使ってるし……チトセさん達が楽しそうだから良いですかね。

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窓も扉も無い、上に長い長方形狀の部屋で、レッドオーガ四とグレートオーガ相手に戦闘を繰り広げる。

「“隠形”、“潛伏”」

気配と姿を同時に消す。

こんな狹い部屋で、一人でコイツらを相手にしないといけないなんてさ。

「“分裂”」

“道化の投げナイフ”を四本に増やし――両手で二本ずつ投げ放つ!!

「――ラッキー!」

私を探していた四のレッドオーガ全ての首に命中し、そのうちの三に“即死”が適用された!

“死の宣告の指”。私の攻撃全てに低確立で“即死”の効果を與える代わりに、私自もあらゆる攻撃ダメージに“即死”が適用されるという呪いの裝備。

たまたまツグミが手にれただけれど、隠れNPCとしての二度目の人生なんだし、こういうギャンブルも悪くないよねってね!

「“六連瞬足”」

殘った二のオーガを翻弄しながら、“帰還”した道化のナイフを再び投擲!

「チ! グレートオーガはさすがにいか」

でも傷付けないと、“即死”は適用外。

“超頑強”持ちだし、只の投げナイフで傷付かないのも當然ちゃ當然だけれど。

「“黒影魔法”――ブラックシャドーニードル!!」

大半は躱されたけれど、四発は當たったのに発しないか。

「“影鰐・六重”」

飛び掛かって來たオーガの攻撃を避けると同時に、きを止めてやった。

「裝備セット2」

“ブラッディーコレクション”以前の刀、“腹の一をぶちまけろ”に持ち替える。

「フッ!!」

文字を刻むも、二文字を行ったり來たり。全然、ツグミ達のように安定してくれない!

「……ああ、ムカつくわね」

“ブラッディーコレクション”を手にれる前なら、なんとか三文字刻めてたのに。

『ギ……グ』

「本當にムカつくのよkcy」

無理矢理維持した狀態で――振り上げる。

「“狂”――吸鬼斷ち」

グレートオーガの首を、容易く切り落とした。

「……けないわね」

最後の一を仕留めた事で、寶箱が出現。

○“免許皆伝”を手にれました。

「【迷いの丘】でも手にれたな、これ。確か、卓越者っていうサブ職業を作るためのアイテムだっけ?」

寶箱を開けてアイテムを回収したからか、私のが転移していく。

「……もう、みんな仕留めてたの」

私がさっきと似た場所である最初のり口へと戻ると、既に戦闘を終えたツグミ達が全員揃っていた。

「ネロの相手はなんだった?」

「私はオーガだったよ~♪ ハユタタは?」

「私はトロル。ツグミは狼だったって」

ここでは一人で挑まなければならないため、なかなか厄介。

「みんな、次に挑めるようになったよ」

部屋の中央には白いコンソールがあり、私達はそのコンソールを作して出された課題、ルール縛りでモンスターとの戦闘を制する必要がある。

「次は、一つの部屋に二人で挑めるみたい。モンスターの數は倍になっちゃうけど」

「ちょうど六人だし、二人一組で行くかい?」

シレイアからの提案。

「じゃあ、私はセリーヌさんと組もっかな?」

「「へ!?」」

ツグミと組めば楽できると思ったのに!

「そんじゃよろしく、マスター」

「シレイアさん……サボるつもりでしょ」

「まあ、危なそうなら助けてやるよ」

向こうも當然のように決めて……。

「「ゲ!!」」

なし崩し的に、私はハユタタとじゃない!

「何よ、文句あんの?」

「そっちこそ、さっきゲ!! って言ってたよね?」

この人魚とは、出會った時から馬が合わない!

●●●

「寒い」

「アウ……」

モモカとバニラが寒がっている。

「ジュリー姉、寶箱を見付けたよ!」

“氷耐”があるからかなのか、雪豹獣人だからなのか、クレーレは元気だな。

「気を付けて回収してきてくれ」

「ほーい!」

最近、クレーレは自信に溢れているような……今のクレーレを見てると、そのうち自信が傲慢に変わってしまいそうで……怖いと思ってしまう。

「さっきの火山エリアではグッタリしてたのに、元気ですね、あの子は」

サキの呆れ顔。

「峽谷エリア、烈風エリア、大雨エリア、火山エリア、氷雪エリアの順で來ましたが、殘りは昇雷エリアと剣山エリアでしたか」

エリーシャからの確認。

「それぞれのエリアが屬に対応していて、そのエリアに対応したモンスター、寶箱からはそのエリアの屬関連スキルやアイテムが手にる」

基本は単一屬が多いが、二屬のアイテムが手にる割合もなくない。

うちのレギオンは氷屬使いが多いから、このエリアは特に長めに散策したいけれど……。

「……」

「大丈夫、モモカちゃん?」

「……うん」

“凍結耐”付きのマントを裝備させているけれど、子供ののモモカには、この寒さ、気溫の激しい移り変わりはキツいだろうな。

モモカが居なければ、もうしじっくり寶箱を探すんだけれど……良くないな、こういう考え方は。

「……子供を育てるという行為は、自分を育て直すに等しい行為だな」

「クレーレが戻ってきましたよ」

「ジュリー姉、“凍結氷葬のスキルカード”を手にれたよー!」

本當に元気だな、クレーレは。

「モモカ、キンちゃんを呼ぶと良い」

冷気は下へと流れる。地面から離れればしはマシだろう。

「サキ、ウサリーレを呼んでモモカを暖めさせてくれ。セラとサタちゃんも呼ぼう」

「分かりました」

「ジュリー……」

走金竜のキンちゃんの上にがったモモカが、弱々しく私の名を呼ぶ。

「どうした?」

「……ごめん」

さっきよぎった私の心のを、読まれてしまったような気がした。

「そこは、ありがとうって言うんだ」

謝られるより、謝された方が私は気分が良い……きっと、言う側のモモカだって。

「ありがとう……ジュリー」

「どういたしまして、モモカ」

こんなにもおしい子に、トラウマを植え付けた男、ルーカス。

もし私の前に現れるような事があれば――絶対に赦さない。

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