《ダンジョン・ザ・チョイス》694.地林と鳥集塔と死霊神殿

「モンスター多いな!」

コトリ、ケルフェ、タマモの三人が、リザードマンや獣型モンスターをあっという間に減らしていく。

森に転移した途端、いきなりモンスターの集団に囲まれてずっと襲われ続けていた。

「ハイリザードマンにハレム・レオン、ニードルホーンディアー、死骸ネズミ、ポイズンエイプ、ヌルヌルスネーク、ネイルグリズリー……雑魚ばっかりだな」

ぐうたれているエトラ。

「なんか不機嫌ね、エトラ」

「攻略を始めた途端、急にね」

カナさんも気づいてたんだ。

「……気のせいだろ。それより、そろそろ代した方が良いんじゃないか?」

雑魚ばかりだからある程度スキルを溫存できるとはいえ、力は持ってかれるからな。

「――本命が來ますえ!」

タマモの聲が響いた瞬間、木々が薙ぎ倒される音が!

『グルルルル』

オレンジ表持つ、有翼の巨獅子。

「アレが……伝説の“キメライガ”」

「知ってるの、エトラ?」

「モンスターによる災害を獣災と呼ぶんだが、目の前のキメライガこそ、最大級の獣災を引き起こす最悪のモンスターの一なんだ」

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「“毆打撃”!!」

「砂鉄腳!!」

コトリとケルフェが仕掛けるも、軽やかに躱される。

「そんなに強いの、コイツ?」

「強さだけなら、もっと強い奴は幾らでもいる。だが、コイツには他のモンスターには無い強味があるんだ」

「どんな?」

「キメライガは――どんな生とも配可能なんだ!!」

「「……だから?」」

「だから……つまり、新種のモンスターをバンバン生み出すんだよ! アイツは!」

なるほど。でも、野生のモンスターなら厄介だけれど、ダンジョン・ザ・チョイスっていうゲーム世界ではあんまり関係ない気がするんだけれど。

「「――良いから手を貸してよ!」」

「「「ごめん」」」

コトリとケルフェに怒られた。

「“霊夢魔法”――タルパバインド」

私の魔法で、白い霧のようなを纏わせてきを制限。

「――“砂鉄砲”!!」

ケルフェのスキルがキメライガのをぶち抜くも、きは衰えない。

「畳み掛けな、すぐ再生しますえ!」

「“劇毒弾”! “鬼の神力”!!」

毒を浴びせてから、不可視の力をぶつけて左翼の付けを折るコトリ。さすが!

「“六重詠唱”、“竜顎法陣”、“灰燼魔法”」

エトラが展開した魔法陣が竜の開かれた口のようになり、灰に染まっていく。

『――ガァァ!!』

「“閃の如き生き様”!」

エトラに向かって口から放たれたを、回り込んだコトリが盾に――不可視の力に、が弾かれてる? “鬼の神力”を盾に使ってるのか!

「“深海重圧”!」

“ザ・ディープシーラビュリス”を持った尾をキメライガの背に叩き付け、仰け反らせるタマモ。

「“氷河魔法”――グレイシャーダスト!!」

私がキメライガのの大半を瞬時に凍結。その間に、コトリがエトラの線から離した。

「――アッシュブラスター!!」

竜のような形狀に変化した灰が、キメライガに食らい付くように接し――一瞬で跡形もなく消し飛ばした。

「コトリ、無事か!」

エトラが、慌てながらコトリに駆け寄っていく。

「なぁに? 私の事がそんなに心配だった?」

「……あ、當たり前だろう! お前が死んだら、私だってまた死ぬんだからな!」

私達と大きく一定の距離を置いていたエトラが、しだけ歩み寄ってくれた気がする一幕。

「フフ……あれ?」

キメライガを倒した結果、何故かんなモンスターの素材が大量に手にっていた。

●●●

セメタリーコンドルの頭を、矢で撃ち抜く。

「……いつまで続くんだ、これ」

転移した先は塔の中で、最上階目を指しながら、ひたすら襲ってくる鳥モンスターを倒すだけ。

塔の壁の至る所に出り口があり、私達はそこから出られないが、鳥モンスターはり放題。

○“天の川で沼るピアス”を手にれました。

道中、稀にある部屋で寶箱から回収。

「変な名前のピアスだな」

「レリーフェ、一昨日から不機嫌ね」

ユリカに指摘されてしまう。

「……そう見えるか?」

「そりゃそうでしょ。分かりやすすぎなくらいよ」

ダメだな。あの日、レギオン同士の顔合わせでルフィルに無視されただけでこれだ。

他に、々気掛かりがあるのもそうだろうが。

「すまん。改めるから許してくれ」

「別に無理しなくて良いわよ。ていうか、今夜にでもコセにぶつけたら?」

「今夜……いやいや、なにを言っている!」

アレは、そういう野蠻な目的のためにスるものではなく、もっと崇高な儀式的なであってだな……そもそも、本來は避妊などせずにスべきであって……。

「さっきから凄い顔が変化してるわよ? 大丈夫?」

「だ、大丈夫だ」

いったいどんな顔をしていたんだ、私は。

その後、度重なる鳥モンスターの襲撃を撃退し続け、ようやく最上階へとたどり著く。

『よく來た、人間種共』

最上階の奧にある鏡、その前に立っているのは……カラス人間?

『我が名はマルファス。鏡の城に封じられし七十二柱の一柱である』

「ここ、勘違いされがちですが、城に封印されている七十二柱は三柱だけですので」

ヨシノからのよく分からない報。

「“聖水銛”――セイントジャベリン!!」

スゥーシャが仕掛けた!?

『“魔斷障壁”』

の障壁に止められる。

『この程度の力で……力で』

“魔斷障壁”が、徐々に罅割れていく。

「止めずに躱せば良かったを」

ユニークスキル、“徹頭徹尾”を持ったスゥーシャの攻撃を、正面から止める事はまず不可能。

『な……に?』

障壁は破られ、マルファスの左手のひらからまでをも貫く。

「――“煉獄の業火炎”」

ユリカが大火球を生み出し、神代文字で強化――マルファスへと落として焼き盡くした。

「ここ、勘違いされがちですが、マルファスは決して弱いモンスターではありません。畳み掛けたから楽に倒せたのです」

「今日はどうしたんだ、ヨシノ? 頭大丈夫か?」

そもそも、私達以外の誰が勘違いするんだよ。

●●●

「“鎮魂歌”――ァァアアアアアアア!!」

ナターシャの歌が、闇に墮ちた神殿部から広がり、死霊系のモンスター共々、その主に大ダメージを與える。

「“火山弓”――ボルケーノアロー!!」

大きな黒銀の弓、“アルテミスの魔弓”から放たれた巨大噴火矢を食らい、腐った黒い樹木のような化け、死霊の主が消滅する。

「ここ、勘違いされがちですが、七十二柱の魔神であるビフロンスは決して弱くありません。勘違いされがちですが」

……なんでナターシャは念押ししてきたんだろう?

「ハアハア、ようやく……終わった」

シューラさんが膝を付く。

ここに辿り著くまでのあいだ、散々「ギャー!!」とか「くんなー!!」とか、死霊系モンスターに対してび続けてたからな。

「シューラ、本當に幽霊とかアンデッドがダメなんですね」

「ゾンビが出る幻覚城は避けてあげたのに、この様とは」

トゥスカがめ、メルシュが鞭打つ。

「ババアになったってな、怖いは怖いなんだよ!」

逆ギレしてきたよ、この八十代。

「罰として、マスターと共鳴錬の刑にしようか」

「なんで罰ゲームみたいな扱いなんだよ……」

「なんだい、アレはアタシでもできるのかい?」

「神代文字を十二文字刻めないとやっても意味ないよ。ていうか、そのためには“超同調”のスキルを使う必要があるんだけれど、共鳴功させるほど同調するのは……神セックスをするようなだって」

「なるほどね……まあ、別に構わんさ。生娘ってわけじゃないしねー」

「「「「へ?」」」」

「……なんでそこで驚いてんだい! こっちはれっきとしたババアなんだ! 経験済みで當たり前だろう!」

「じゃあ、旦那さんが居るんですか?」

トゥスカが尋ねる。

「…………隨分前に死んだよ。デルタの奴等に殺されてね」

「すみません……」

「気にしなくて良いよ。アタシも全然気にしてないし」

今、シューラさんから強い憎悪をじた。

あの憎悪は、デルタに対してなのか……?

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