「コイツ……しつこすぎ」

「いくらなんでもすぎでしょ！」

雙子のアオイとアヤナがぼやく。

「“溶解”をぶっ掛けてもほとんど意味ないし」

「魔法浴びせても、ほとんど削れない」

「おい、まだか！　俺にSSランクがあるとはいえ、ちょっとキツいぞ！」

一本道の地下跡を進んだ最奧に鎮座していたゴーレムとの戦闘から數十分、ザッカルとアルーシャは後方から押し寄せるスタンピードラットの相手をし続けてくれていた。

「限界なら、“魔除けの浮遊鏡”を出すぞ」

低ランクモンスターが近付かなくなるという鏡は、各パーティーの隠れNPCに預けられている。

「ハッ!!　しでも経験値を稼いでやるよ――この“ゲイボルグ・ディープシー”でな！」

突発クエスト・魔族の謀を阻止せよで、“レギオン・カウンターフィット”と共に手にれたSSランク。

水屬の銛ということで候補にスゥーシャも挙がっていたが、彼がパーティーを組みたいタマが専用のSSランクを持っているため辭退。結果、次に相が良いザッカルの手に渡った。

隠れNPCがSSランクを裝備出來るなら、サカナが一番相が良いとフェルナンダが言ってたな。

「“深海支配”」

大量の海水をり、スタンピードラットを壁に押しつけて圧殺していくザッカル。

「フェルナンダ、あのゴーレムは何故あんなにいんだ？　有効な屬は無いのか？」

「アイツは“古生代ヴァリアブルゴーレム”。全ての耐が高いうえ、一度けた攻撃屬ダメージを永久に半減。更に、あらゆる攻撃ダメージを半減させる能力も持っている」

アヤナとアオイにばかり攻撃させていたのはそのためか。

「その防能力の高さ故か、戦闘能力は著しく低いんだが」

「そのためのスタンピードラットの大群か」

あのゴーレムを倒さないと奧の部屋に進めないから、ネズミ共から逃れるが無い。

「いずれ、スタンピードラットの次はゴーレム系の大群が押し寄せてくる。とにかく全力の一撃を與えなければ！」

こっちにはSSランクだってあるのに、し難易度が高すぎる気がするな。

「仕方ない――武換、“ヴェリタライズ”」

《カトリック》の誰かが持っていたらしい、質実剛健にして華麗な矛盾の剣をこの手に。

「ルイーサ……その剣なら、確かにダメージ減衰能力を無効化できるが、既にアヤナの線魔法で屬のダメージは……」

フェルナンダの懸念は、この“ヴェリタライズ”が聖剣でないため、“聖剣萬象”の対象外だと知っているからだろう。

「問題ない」

この剣には、“聖魔剣のグリップ”が裝著されているからな！

「――“抜剣”！」

“ヴリルの聖骸盾”に収めた“ヴェリタライズ”に、“聖剣萬象”と神代文字十二文字分の力を乗せる！

狙うは、アヤナとアオイが罅れた左!!

「“古代剣”――オールドブレイク!!」

を中心に、ゴーレムの全に罅が広がっていく！

「“破邪十字”!!」

ひび割れの中心にの十字架を潛り込ませ、側から崩壊させていく!!

「アオイ、ダイナマイトだ！」

チトセから、アオイが薬と一緒にけ取っていたのは知っている！

「ほいよ！」

「サラマンダー!!」

アオイがゴーレムのヒビに投げ込んだ複數のダイナマイトを、即座に引火させるフェルナンダ。

『ボォォーッ!!』

コイツ、右腕と頭だけになってもまだ！

「――私の出番を、殘してくれてありがとう」

“ヘビーバスターソード”を握らせた“水星のアームロッド”を振り下ろし、神代の力を持ってゴーレムを砕してくれるアヤナ。

「よし、奧へ進むぞ！　ザッカル、私と代だ！」

「おう！」

「“守護武”――ガーディアンランパート!!」

部屋一面に障壁を張り、殺到するネズミを圧殺自殺させつつ、ゴーレム共を足止め。

その隙に、ゴーレムを倒した後に出た寶箱から、フェルナンダ達がアイテムを回収。

私達はなんとか、鏡が安置された安全エリアの小部屋へと逃げ込めた。

「ハアハア。まさか、こんなに手こずるなんて」

「ちょっと……舐めてた」

アヤナとアオイの消耗が激しい。

「“ヴァリアブルゴーレム”でも厄介なのに、まさか“古生代ヴァリアブルゴーレム”を配置してくるとは。本當に嫌な奴等だ」

「どういう事だ、フェルナンダ？」

「ヴァリアブルゴーレムに“古生代の力”なんて、反則も良いところだ。おそらく、私達に対する嫌がらせ目的で、急遽用意したんだろうよ」

まあ、似たようなケースは、これまでにも度々あったか。

「予定通り、今日の攻略はこれまでだ。後はゆっくり休もう」

○“古生代のヴァリアブルシールド”を手にれました。

●●●

「ハアハア。ゴブリンだからって……ちょっと舐めてたかしらね」

サトミの弱音。

數頼みの止まぬ襲撃を迎撃しながらの探索は、予想以上に私達の消耗を促しまぁした。

「預かってて正解だったな、この鏡」

バルバザードが浮かべた“魔除けの浮遊鏡”のおかげで、ゴブリン達は一定の距離を保って近付いてこない。

「上位種のホブゴブリンとか含め、もう數千匹は倒してる。これは無限湧きで間違いないな」

まだ余裕そうなメグミ……さすがでぇす。

それにしてもぉ、ゲームが現実になるとぉ、こんなにもクソゲー……。

「ウララ様、今のうちに“ソーマ”を」

「ありがとう、カプア」

四方八方から襲われるからぁ、ＴＰ無限のメグミにだけ頼るわけにもいきませぇん。

「しまった！　サトミ様！」

鏡が、矢で貫かれて消えてしまう！

「魔除けは、壊れやすいのが難點だな！」

ゴブリン達が、一斉に殺到してくる！

「先に行け！　後ろは私が片付ける！」

メグミが“竜砲”を発して、ゴブリンを大量に消し去っていく！

「私が前に出る。お前らはペース配分に気を付けろよ！」

バルバザードが前に出て、ゴブリンより數回り大きくて太っちょなホブゴブリンを――盾と大刀で仕留めていく！

『ギギ！　“紅蓮魔法”、クリムゾンブラスターッ!!』

「ゴブリンシャーマンか――武換、“魔斷のソニックブレイド”」

バルバが“魔斷斬”で炎を切り裂き、魔法を辿る斬撃が者の首を刎ねた。

「いた、ゴブリンアーチャー！」

私達の鏡を壊した奴を、リンピョンが見付けてくれる！

「くたばれ!!　“施條銃化”」

銃の武にライフリングを施し、一時的に程と命中率を強化！

銃狀態の二丁の銃剣で、ゴブリンアーチャーを蜂の巣にする！

「カプア、ゴブリンアサシンが來る！」

黒ずくめの忍者みたいなのが來た！

「お任せを！　“獣化”」

三メートルはある方天畫戟で容易くゴブリンアサシン二を薙ぎ払い、三目の顔面に膝蹴りを叩き込んで始末する……屈強な貍。

「“六重詠唱”、“雷雲魔法”――“魔法生式”」

ウララが作り出した魔法陣が歪んで、雷雲の獅子や鳥になった！

雷雲の獣達が、雷を纏いながらゴブリンブレイダーやゴブリンファイター、上位種を狙って倒していく。

『上位種の割合が増えてきました』

「たぶん、鏡がある場所が近い証拠だと思う」

オリジナル経験者のウララは、この中で一番ダンジョン・ザ・チョイスに詳しい。

「――へ？」

足元に、急にが!?

落ちて――地面に叩き付けられる!!

「ハアハア」

足が痺れる……。

「他の皆は……」

隨分暗い……さっきまでいた場所よりも。

「どこにも、誰も居ない？」

ここの黒い壁、を吸収しているのか、遠近が判らない。

「奧……何か居る？」

闇から、気配が近付いてくる。

『――ギャアアォォォォォォ!!』

バカみたいに巨大なゴブリンが、闇のように黒い一角から顔を覗かせた。