《ダンジョン・ザ・チョイス》696.熱い蕾
「裝備セット2」
報を求め、“ライブラリ・グラシズ”を裝備。
前のパーティー構だとNPCが居なかったから、無理してこっそり買ったメガネ。
後から失敗したかと思いましたが、全然そんなことなかったですねぇ。
「ゴブリンジャイアント?」
メガネから読み取った報。
「もう、ゴブリンの括りから外れてません?」
ホブゴブリンの數倍はあるのに。
「“後輝宮”!!」
背後にのを顕現し、そこから弾を十発発!
『ガァァー!!』
“雑なオリハルコン塊”で、ほとんどはじき消された。
「“可変”」
剣狀態にした“甘い蕾の中の逢瀬”と“熱い花弁の疼き”を手に、接近戦を仕掛ける!
『グァァ!!』
「“大地王盾”」
浮遊する大きな盾を呼び出し、金屬塊の歪な棒の軌道を逸らす!
「“二刀流”、“薔薇剣”――ローズスラッシュ!!」
腳を切り付けるも、が分厚くて両斷すらできない!?
一人で、こんな化けと戦わなければならないとは!
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「……いつの間にか甘えていたのかも」
突発クエストという死闘でも、私が隠れNPCという括りだったから不參加になることも多かったし。
「今こそ、自分をい立たせる時でぇす!!」
両手の銃剣に同時に九文字刻むと、“熱い花弁の疼き”が“熱い蕾の中の逢瀬”へと変わっていく!
棒の振り上げを回るように回避しながら、ハイパワーキックを足首に食らわせた!
“後輝宮”から間に弾を集中させ、転げ回るゴブリンジャイアントの上をとる。
「“二刀流”、“薔薇剣”――ローズスラッシュ」
青紫と赤紫の銃剣を左右に振り抜き、ゴブリンジャイアントの首を刎ね終える。
「寶箱……」
ゴブリンジャイアントが消えると同時に、大きな黃金の寶箱が出現。
「この大きさは珍しでぇす」
★“免許皆伝”を手にれました。
★“二重魔法の指”を手にれました。
★“二重武の指”を手にれました。
★“豪奢な槍”を手にれました。
たぶん、悪くないでぇすね。
「ところで……どこへ行けば」
取り敢えず、ゴブリンジャイアントが出て來た辺りに向かって歩く。
ただひたすら黒い部分に恐る恐る近付き、が抵抗なく黒い壁に埋まる。
「おぅ」
壁のすぐ向こうは鏡が安置された財寶部屋で、既にサトミ達が全員で待っていた。
「クリス! 良かった、無事だったか!」
「クリスちゃんとバルバザードちゃんが落ちたときは、どうしようかと思ったわよ!」
メグミとサトミに心配される。
「みんなは落ちなかったですかぁ?」
「私達は正規ルートを通ってここへ」
「あのはオリジナルにもあったから、ここで合流できるのは知ってたから」
ウララ達の方を見ると、鏡とは逆側に通路らしき。
「ゴブリンキングやゴブリンクイーンをメグミがさっさと片付けてくれたから、私達は楽だったけれど。クリス達はもっと強いゴブリンと戦ったんでしょ?」
リンピョンの言葉。
「ゴブリンジャイアント、出まぁした」
「私はゴブリンジェネラルだ。まあ、所詮はゴブリンだ。速攻を掛ければ、なんて事はない」
バルバはそう言いますけどぉ、私はまあまあ手こずりまぁしたよぉ……。
●●●
「行くよ、カプア、バルバ」
「はい、ウララ様」
「おう、來い!」
鏡の城の攻略初日の午後、模擬レギオン戦の會場でウララ様と対峙する。
「書き記せ――“雄偉なる目眩く斷の語”」
“レギオン・カウンターフィット”を依り代に、雷雲と雷迸らせる黃灰の大剣を形作るウララ様。
「――“隨伴の雷雲”」
雷雲が無數に生まれ、そこから雷が同時に発される!
「“木の葉旋舞”」
舞う木の葉の數任せで、雷の大半を防ぐ。
SSランクはその攻撃の手數こそ厄介だけれど、その分、支配や隨伴の能力の威力は大した事ない。
「“獣化”――“八百八貍”!!」
「“恐竜召喚”」
數には數! 百を超える貍と食恐竜を囮に――バルバと挾撃する!
「“六重詠唱”、“雷雲魔法”――“魔法生式”」
雷の恐竜、六匹が暴れ回り、余裕のできた“隨伴の雷雲”が私とバルバに向けられる――前に力盡くで倒す!
『“兇暴化”――ハァぁぁ!!』
“慟哭よ・そのを貫きたまえ”に無理矢理に三文字刻みながら、浴びせられる雷を無視して方天畫戟を振り下ろす!
『“溶解棒”――アシッドスイング!!』
「“不可侵條約”!!」
“神の司書”の力で浮かせた本に、私の逆転の一手を防がれてしまう!
「“千狐焔”!」
バルバのやつ、“獣化”狀態とはいえ私ごと!
「“砂漠魔法”――デザートウェーブ!」
炎の狐を砂の波が呑み込み、防がれ――バルバが猛追して來た!!
「“溶巖鎚”――マグマブレイク!!」
「――“後輝宮”」
『“衝腳”!!』
“不可侵條約”の隙間を掻い潛り、なんとか余波によるダメージはれられたか?
とはいえ、ウララ様の弾に自在の雷雲、更に本と魔法の何重もの守りを突破するのは、無茶が過ぎた……。
カウンターでけた雷と弾で、もうけない。
「“雷雲大地剣”――サンダークラウズ――グランドスラッシュ」
私とバルバは、まとめて両斷され……敗北した。
SSランクとユニークスキル持ち相手は、いくらなんでも分が悪すぎます。
●●●
「SSランクとの模擬戦闘に、SSランクと元々の戦を合わせた戦闘法の構築」
SSランク持ちや共鳴剣を作れる者達とそうでないメンバーでローテーションを組み、午後は戦闘訓練の繰り返し。
「SSランクに同じが無いとはいえ、この戦闘訓練は対SSランク戦に役立つでしょうね」
「このレギオンほど、多種多様なSSランクと戦える場所は無いだろうしね」
トゥスカとメルシュの會話。
「ただ、共鳴剣を戦に組み込むのはやり過ぎでは? ご主人様と同じパーティーの私ならともかく、“レギオン・カウンターフィット”は一つしか無いんですから」
「「……」」
トゥスカには、まだ言ってなかったんだった。
「ご主人様? メルシュ? ――何か隠してます?」
笑顔が怖いよ、トゥスカ。
「……メルシュ、早めに皆に明かしても良いかもな」
「じゃあ、五十ステージに到達した辺りでいっか。ちょっと試して貰いたい事もあるし」
「二人とも、いったいなにを隠してるんですか?」
ますます怖いよ、トゥスカさん。
「二人きりになったら教えるから」
まだパーティーリーダー以外の面子には教えたくないし。
「コセ」
やって來たのは、ジュリーとルイーサ?
「どうした?」
「私達からの提案なんだけれど――大規模突発クエスト中、“奴隷神の腕”を裝備しっぱなしにしてほしい」
“奴隷神の腕”。レギオンリーダー専用のEXランク裝備で、裝備者のレギオンメンバーを、全員俺の奴隷扱いにする代。
「……俺が死ねば、全員が死ぬんだぞ?」
「お前が死んだら、私達は確実にバラバラになる」
「全員で死ぬ可能が生まれる分、全員が生き殘れる可能も上がる。私達は、後者の確率を上げたいんだ」
「どういうことだ?」
奴隷にするメリットなんて、“連攜裝備”くらいしか無いはずなのに。
その後、二人の話を詳しく聞いたのち、メルシュとトゥスカが賛を示したのもあって……俺も納得せざるを得なくなってしまった。
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