《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1683話 ナニカの存在と、空間魔法

七耶咫なやたも『移止境界いときょうかい』によるエヴィに向けた強制移を神斗に妨害される可能を考慮はしていたのだが、それでも最短最速の行と考えられた神斗の『魔力波』よりも凡そ一秒半程早かった。

當然にいちから『魔力』を込めて『魔力波』を放つ事よりも、勝手に『魔力』を高めるだけで生じる余波の方が早く目標に向けられる。そんな事は誰にでも理解出來る事であるが、命のやり取りの最中に第三者に対して行う選択肢としては、限りなく薄いところを選ばれた形であった。

それに『魔力』を高める事で生じる余波を飛ばすなど、普通は攻撃手段に使おうとは考えないだろう。これはあくまで神斗が、エヴィの放った『呪蝕カース・エクリプス』の『呪法』で自分自の耐魔力を一般人以下にまで下げている狀態だと認識していたからこそ、選べた選択肢であった。

これまでも明確にイダラマ達を遙かに上回る魔力値だった神斗が、魔力コントロールで一気に『オーラ』を利用して『魔力』を自の上限まで高めたのである。

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――その魔力の余波は計り知れず、単なる余波程度と侮る事など出來ない。

大魔王領域の下位程度に居る魔族が、淺蔥あさぎいろの『青』と『紅』の『二の併用』を用いて増幅させた『魔力』程度でさえ、その余波で魔王領域未満の魔族を余波で消し飛ばす事も可能なのである。

(※淺蔥の『青』のオーラとは、淡い青のオーラの事であり、一般的な真なる魔王達が『青』の領域と呼んでいるモノの事である)。

それが神斗のような上位以上の『魔神級』領域に居る存在が、一気に自の限界まで魔力を高めたのである。そんな存在の『魔力増幅』による余波であれば、當然に耐魔力を最小限にまで下げている今のエヴィを死に至らしめる程の威力を有する事は必至である。

エヴィの『呪法』と『特異』の合わせた『特・別・攻・撃・』から、この山に居る者達や付近の町に居る者達を守るために七耶咫は仕方なく表舞臺に出てきたというのに、このままでは全てが水の泡になってしまう。

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すでに神斗のオーラ増幅により高められた魔力から発せられた余波である『魔力圧』は、エヴィを呑み込むのにあと數秒も掛からないだろう。そしていまさら新たに『移止境界』の印行を結ぶ時間は殘されていない。

「仕方あるまい……」

――そして次の瞬間であった。

七耶咫のに憑依していたナニカが、七耶咫のから抜け出してくるのが見えた。

「なっ……!」

流石の神斗も七耶咫のから突如として出てきた、うすボヤけて見える人影のようなモノを見て、驚きの聲をあげた。

やがてそのぼやけた人影は、みるみるに実化を果たすと同時、先程までの七耶咫とは比較すらなり得ない『魔力』が神斗の目に可視化される。

エヴィの元に神斗の『魔力圧』が迫る最中、僅かコンマ數秒程でその実化されたナニカが『青』と『金』を纏うと同時、右手をエヴィに向けて拳を握る。

すると次の瞬間には、エヴィに迫っていた神斗の『魔力圧』が、消し飛ぶようにその場から雲散していった。

そして唖然と眺めている神斗が、自分の意識を取り戻す前に更にそのナニカは、今度こそ自分ので手印を結び始める。

――僧全捉、『移止境界いときょうかい』。

――魔神域魔法、『空間歪曲イェクス・ディストーション』。

まずエヴィのがそのナニカの『捉』によって、忽然とこの場から姿が消え去った。

この捉による効果ではエヴィが何処へ飛ばされたかは者でさえ分からないのだが、このナニカはその消え去る寸前にもう一つの『魔』の概念を展開。

それは『時魔法タイム・マジック』と呼ばれる『空間』をる『魔法』の一種のモノで、先程の『空間』の距離をめたのと同様の『空間魔法』の類で、この『空間歪曲イェクス・ディストーション』の『魔法』の効力によって、捉によって引き起こされた跳躍地點の方ではなく、その質が辿り著いた座標の方を強引に歪めて自分の思い通りの場所へと跳躍させたのであった。

――そしてこれは、一介の下界の存在が行える範疇を大きく逸する行為でもあった。

今、この場から全く目に見えない座標に、転移させた存在が居る場所から、更に自分の脳に描いた場所へと移を行う。そんなものは同じ三次元に居る存在から観測を行う事はまず不可能な事であり、いくら『空間魔法』という『魔』の『概念』そのものを認識していたとしても、行う者がこの三次元空間に存在する限り、同時にはその座標を観測するには、その次元とは異なる次元からの観測を行わなくてはならない。

だが、このナニカは誰もが理論上で可能だと判斷しても、実際に実現が出來ない筈の事を行ってみせたのである。

この場で発された『時魔法』は、まさにあの大魔王フルーフによる『概念跳躍アルム・ノーティア』の『魔法』とほぼ同一の『魔』の概念領域であり、これはどの霊の『理ことわり』も使用されておらず、そして別世界にも存在しない『理ことわり』から生み出された紛う事なき『新魔法』であった。

更にそのナニカの存在の行は続き、今度はそのナニカのに包まれ始める。どうやら自にも『空間魔法』を使ったのだろう。

そしてようやくそこで神斗は我に返り、自の『魔』の概念を用いてそれを阻止しようと『魔力』を展開する。

そのナニカの存在が行っている『空間魔法』が、実際に目的地までの『距離』を狹めているのではなく、単に自分達のじている『時間』の方をイジっているのだろうと『魔』を司る者としての神斗の観點からアタリをつけたようで、神斗は自の『過』技法を用いて、強引に『空間魔法』の本質であろう『時魔法タイム・マジック』、つまり『時間』に対して行われている何らかの『魔』の概念を消し去ろうとするのだった。

……

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