《ダンジョン・ザ・チョイス》698.魔神・祖霊鏡

「ハアハア」

《ねー、いつまで逃げるの~》

私の“ドッペル”が、“線拳銃∞”で襲ってくる!

《臆病で逃げてばかりのノゾミちゃ~ん》

「――ああ、うるさいなー」

逃げるのをやめ、鏡の柱から姿をさらけ出す。

《ようやく化けの皮が剝がれたわね、ノゾミちゃ~ん》

違う。ただ私は、私以外の誰かがいる前では、自然と気弱で大人しい人間になってしまうから……。

「私の顔で、アホ面を見せるのはやめて」

《アンタはもうすぐ死んで、私がアンタになるんだから、何も問題無いでしょう?》

「ドッペルは、裝備を変更する事はできない」

《なのに、アンタは仲間に教えてあげなかった。やっぱり恨んでるんでしょう、自分を見捨てて置いていったエリューナ達を》

私のくせに、ペラペラとよく喋る。

《いったい何人が、アンタのせいで今頃死んでるのかしらね、ノゾミちゃ~ん》

「――別に、この程度で死ぬならそれまででしょう」

臆病なのも、気が弱いのも噓じゃない。

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ただ私は、一人にならないと反抗的な側面を出せないだけ。

「裝備セット2」

銃を左手に持ち替え、右手に水晶の鞭――“き通る水晶の翳り”に持ち替える。

《なに? ノゾミちゃん如きが、私を殺そうって言うの?》

「嫌いなのは――弱くて醜い私自よ!!」

き通る水晶の翳り”に、六文字刻む!!

向こうに“熾天使化”と“墮天化”がある以上、と闇の単一屬攻撃は無力。

《“重力魔法”――ヘビープレッシャー!!》

「“八咫鏡”」

楕円形の鏡を呼び出し、頭上から迫る重圧を反させる!

《無駄無駄――“八咫鏡”》

更に跳ね返してきた。

「――來なさい」

“魔契約”してあった“守護戦士”を使い捨ての盾にして防ぎ、私から接近する。

「“水晶鞭”――クリスタルラッシュウィップ!!」

私なんかに、反撃の隙は與えない!

《“守護障壁”》

「“絡め取り”」

障壁を迂回させ、ドッペルの足首に巻き付ける。

「“熾天使化”」

強化された能力に任せ、自分の偽を思いっきり――壁や柱に叩き付け続けていく!!

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「“石像化”で耐えたって、苦しみが増すだけなのに」

ガーゴイルのサブ職業、“魔除け像”に含まれるスキルの一つで、きに制限が掛かる分、の耐久力を四倍にするスキル。

《じ、自分の顔が……潰れてブッ!! アンタ、おかしいんじゃない――ブゴッ!!》

「私の偽なら分かってるでしょう? 私がこの世で一番嫌いなのは――私自だって」

何度リストカットしただろう。何度自殺未遂を繰り返しただろう。

でも結局、我がかわいさでいつだって中途半端。

「でもありがとうございます――――私に、私を殺す機會をくれて」

《ハハ……どういたしまし……て》

何十回目か分からないけれど、床に頭から叩き付けた際に、今までとは違う鈍いじ取った。

「……ハー、スッキリした」

いつの間にか、水晶の鞭には九文字が刻まれている。

「さて、帰りましょうか」

○“線拳銃∞”を手にれました。

●●●

「第四十九ステージのボスは、魔神・祖霊鏡それいかがみ。弱點屬は火だけれど、を含む攻撃は全て反するよ。有効武は杖と銃以外の全て。危険攻撃は、全の鏡からなだれでるモンスターパレード」

なんか、今までと隨分違う。

「ステージギミックは、浮遊する無數の鏡。鏡もを含む攻撃を反するうえ、鏡に映り込んだモンスターが攻撃を仕掛けてくるから気を付けて」

もしかして、今までで一番強い魔神なのでは?

「じゃ、お先」

最初はSSランク持ちのサトミさんのパーティー、次は“レギオン・カウンターフィット”を持ったユリカさんのパーティーが挑む。

向こうでの奇襲対策に、SSランク持ちが居るパーティーが最初に挑み、次のパーティーは素早く魔神を倒して、できる限り早く前のパーティーと合流する。というのが、《カトリック》襲撃からの決まりになりつつあった。

「……次は私達の番か」

コトリの様子、“ドッペル”との戦闘後に合流してからしおかしい。

私もだけれど、自分自との戦いに思うことが多かったのか、大怪我した人や気落ち、雰囲気がなからず変わった人達が何人も居る気がする。

そのため、本來は昨日のうちに行うはずだった魔神戦が、今日の早朝にずれ込んだ。

「……コトリ、魔神戦は私に任せて貰えますか?」

「ケルフェが?」

「ユニークスキルを試す良い機會かと。皆は私のサポート。エトラとタマモは、隙を見て攻撃してください」

「うちはええよ」

「私も構わん……」

「二人がそう言うなら……」

エトラも調子が悪そうだ。

「では、行きましょう」

ユリカさん達のボス戦後、私達のパーティーがボス部屋へ。

奧の空間で青紫のラインが燈り、天井からが注がれた瞬間に浮き上がる!

「アレが、魔神・祖霊鏡」

妖しくもしい鋭利な鏡が、角張った多面の青い巖を覆っているようだ。

「さっそく來たよ、ケルフェ!」

魔法陣が四つ展開され、青白く染まっていく。

「“連盾障壁”、“魔力障壁”――“障壁支配”」

障壁系スキルを連続発し、ルイーサさんから譲られたユニークスキルの力で――部屋の一面全てを覆うように巨大化!! 全ての“鏡面魔法”をけきる!

「まだまだここから!!」

右腕の刃が生えた小盾、“貫けぬは剛直なる魂のごとく”に九文字を刻み――三重の障壁に力を流し込みながら、そのまま前へ!!

「行ける!」

ステージギミックの浮遊する鏡諸共、部屋の奧へと巨大障壁を押し込み続ける!!

『――――モンスターパレード』

魔神の全の鏡にんなモンスターの顔が浮かび上がり――外へなだれ出てきた!!

バーバリアン、ワーウルフ、ホブゴブリン、ワイバーン、紫鬼、デュアルアンチゴーレム、マッスルリザードマン、ワイルドイーグルに、その他もろもろと數え切れない程の數!!

「――クッ!!」

モンスターの圧力に押されて、これ以上押し込めない!

「――舐めんな!!」

鋭利な腳甲、“蹴り飛ばせぬは剛直なる魂のごとし”にも九文字刻み、障壁表面を無數のスパイク狀に変化――モンスターのを引き裂きながら、更に前進!!

とうとう魔神を、モンスターごと奧の壁まで追い詰める事に功ッrs3jh!!

――私の限界が近い!!

「“砂鉄盾”――――アイアンサンドバッシュ!!」

“魔力障壁”と“思念障壁”を解き、“連盾障壁”から武をゼロ距離発!!

魔神の壁となっていたモンスターの大半は死に絶え、魔神の鏡に亀裂を確認し……――

「クッ!!」

さすがに、無茶をしすぎましたか。

「“六重詠唱”、“竜顎法陣”――“灰燼魔法”、アッシュブラスター!!」

「“ホロケウカムイ”――“三重魔法”、“桜火魔法”、フレアブロッチェブラスター!!」

エトラとタマモの魔法が直――二度目のモンスターパレードで、魔神へ直撃しているのは僅かに!!

「……まずい」

魔神が魔法陣を展開しだしたのに――私のかない!

「――“閃の如き生き様”」

魔法陣を、一筋のが突っ切っていった?

「“英雄が如き死に様”――“二刀流”、“毆打撃”!!」

魔神・祖霊鏡を砕き壊した先で佇んでいたコトリの手には二本の金棒、神代文字が刻まれた“生き様を視ること死に様の如く”と、“鋼鳥の狂群”が。

「おいしいところ、持ってかれちゃいましたね」

「……」

「コトリ?」

いつもの軽口が返ってこない。

「ケルフェ……後で、私の話を聞いてくれる?」

「……ええ、良いですよ」

コトリからじた悲壯な決意に寄り添いたい私と、小さな悅を見出している自分がいた。

○おめでとうございます。魔神・祖霊鏡の討伐に功しました。

○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。

★祖霊鏡の魔産鏡 ★鏡面魔法のスキルカード

線魔法のスキルカード ★祖霊鏡の欠片群

○これより、第五十ステージの【竜王の霊山みたまやま】に転移します。

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