「私の言っている『魔』の分野と、お前の考えている『魔』の分野の意味が違う。お前が言っている他分野の概念は『過とうか』とは全く異なる『魔』の概念の事を指しているのだろうが、あくまで私の言っている他分野とは『過』の研究の範疇にある別分野の概念を示しているのだ」

ようやく神斗にも目の前の存在が、何を言おうとしているかを察する事が出來たようである。

「私の言っている容の理解が及んだようだな？　『過』を『魔』の概念の本に捉えようと考えているのであれば、しは私の『空間魔法』に対して、あらゆる法則を探ってみる事だ。そうする事でこれから私が行おうとする事に、いずれお前も行き著く事だろう」

そう言って再びそのナニカの『魔力』が膨れ上がるのを確認した神斗は、改めて『過』で行おうとする事象を解除しようと『過』の準備を始める。

「確かに君が言っていた事は、耳を傾けるに十分に値する容であった。とくに君が使っているというその面妖な式、確か『空間魔法』といったか？　それは私の『過』を更に高みへと導くヒントと考えられる程だ。だけど所詮は絵空事に過ぎない。君の話す理論は一考の余地はあるものだけど何も拠がない。その証拠に先程の君の『空間魔法』は私の『過』で打ち消されただろう？」

「だったらまた試してみるといい。そうすれば本當の『魔』の概念の奧深さというモノを、お前も知る事になるだろう」

そう言ってそのナニカは用意していた『魔力』を用いて、再び先程のような事象を起こそうとする。

それこそがナニカが呼んでいた『空間魔法』と呼ばれるものなのだろうとアタリをつけた神斗は、先程と同じ通りに『過』技法を用いて強引に掻き消そうと手をばしたが、寸でのところでその腕をおろすのだった。

「何だ？　そのまま手を出していれば『魔』の真理にまた一つ近づけただろうに」

どうやらナニカは先程の言葉通り、神斗の『過』からを守る為に大きく平面な鏡が出現をさせたようだったが、神斗が手をおろした事で狙い通りとまではいかず、溜息をついて今度こそ『空間魔法』を悠々と用い始めるのだった。

「最後にお前がどういう反応を見せるのか楽しみだったのだが、殘念な事だ……」

その場に居た筈のナニカの実が薄れていき、靜かに姿が消え去ると同時に、ナニカの反響する聲だけが最後に殘り、やがては何もかもが空の上から消え去るのであった。

神斗の視線の先、先程までナニカが居た場所に、何やら緑のに包まれた鏡が出現していたが、ナニカが消え去ってし経つと同時に平面な鏡は、こちらも最初からその場にはなかったかの如く消え去った。

もし神斗が『空間魔法』に用いるつもりだった『過』技法をこの鏡にぶつけていた場合、どういった効力が生じていたかまでは分からないが、まず間違いなく後悔させられていたであろうという確かな実が彼にはあった。

そしてその神斗の予測通り、先程のナニカが出した平面な鏡が割れるような事があれば、今頃神斗は自の『魔力』が、決して取り返す事が出來ない空間の中に、永劫封じ込められてしまっていただろう。

――それは『輝鏡ききょう』と呼ばれる鏡であり、ナニカが作り出した『理ことわり』から生み出された『魔法』であった。

本來はいくつもの鏡を展開し、その鏡を何らかの形で対象者に割らせる事で、數多の鏡の中に『魔力』を分斷させて封じ込めるというものであったが、このナニカが生み出した今の『輝鏡』は、たった一つでも割る事になれば、複數の『輝鏡ききょう』以上に効力が発揮されてしまっていた事だろう。

「全く、最後まで何者か分からなかったけど、こんな禍々しいモノはこの山でも見たことがなかったな。正を暴けなかったのは非常に殘念だけど、私の『魔』の概念には々と得られた。それだけでも収穫はあったとみるべきかな」

神斗は自の展開しているオーラを消し去ると、再び大きく溜息を吐くのであった。