《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1687話 かつての妖魔召士達の長

空の上で神斗とのやり取りを終えたそのナニカは、目論み通りに危険な存在であるエヴィを回収した後、再び『妖魔山』の頂へと『空間魔法』を用いて到著する。

どうやらそのナニカのもう片方の目的の人は、すでに移が行われていたようで、到達した座標の場所には居なかった。

「それなりの時間を神斗と話し込んでいたわけだしな。いつまでも、もう片方の『妖魔神』の居る場所に居続けるわけもないか……。さて、あまり時間を掛けていてはここに神斗の奴が戻ってきてしまう。急ぐとしようか」

そのナニカはエヴィを擔いだままそう獨り言ちると、その場で気配を探るように周囲を見渡し始める。

「悟獄丸に私の『魔力』の殘滓を殘しておいて正解だったな。どうやらイダラマ達を追って移を行っているようだ。アイツは『神斗』のように『魔』の概念に傾倒している様子はなかったが、それでも今のイダラマ達程度ならば楽に捕まえられるだろうに。狩りのつもりか? 全く趣味が悪いな妖魔神めが……」

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そのナニカはイダラマの『魔力』ではなく、先程『結界』で閉じ込めた時に送り込んでいた『魔力』の欠片程度の殘滓からその場所を探り當てた。

どうやら神斗のような『魔』に対する理論的な観點を持ってはおらず、覚的に『魔』を利用する悟獄丸の方が扱いやすいとじたようで『結界』などで居場所を探りにくくしているイダラマ達の方ではなく、悟獄丸から場所を割り出したようであった。

ソフィ達の世界にあるような『理ことわり』から生み出された『魔力知』や『魔力探知』ではなく、獨自の『魔力』知方法を用いて居場所を探るそのナニカだが、全を考えた上での便利さでいえば『魔力知』や『魔力探知』の方が上であろうが、このナニカの獨自に編み出した『理ことわり』から用いられたモノは、自分自の『魔力』を殘滓とはいえ付與する事で確実にその居場所を突き止める事が出來る。

あくまで自分自の『魔力』から特定するのだから、いくら『結界』などを用いようとも逃れる事は出來ない。この點では確実にナニカの知能力が上だと、斷言が出來る程である。

そしてこのナニカは『空間魔法』をある程度の領域まで自在にる事が出來る為、非常に知能力と相が良い。

――否、相を合わせるためにその『理ことわり』を生み出したのだから、良いのは當然の事であった。

このナニカはこの山を至る場所まで知り盡くしている。その理由は最初にこの『妖魔山』にり込んだ後、瞬く間に自が世間から姿を消して、この山を自の生涯の大半と呼べる程の期間をかけて調べ盡くしたからである。

――何故そんな事をする必要があったのか。

それは當時、この妖魔山に登った時にこのナニカだけにしかじられなかった、とある『妖魔』の存在の『魔力』をじ取ったからである。

そのとある『妖魔』とは『神斗』や『悟獄丸』といった『妖魔神』と、同じ時代を共有してきた『妖魔』で間違いはないのだろうが、その存在は間違いなく『神斗』や『悟獄丸』よりも禍々しい化けで間違いなかった。

この化けは過去のどの世代かまでは分からないが、このナニカと同じ『妖魔召士』によって『封印』を施されてこの山のとある場所に今も現存している。

當時の仲間達にさえ居場所を知らせず、このナニカはたった獨りでこの山に殘る事を選び、その『妖魔』の監視を行い続けたのであった。

――そしてこのナニカの存在とは、今ではもう數世代前の妖魔召士の長となった、稀代の天才と呼ばれた妖魔召士『シ・ギ・ン・』であった。

……

……

……

山の頂から『空間魔法』を用いて悟獄丸の居場所までを狹めながら、確実に同次元に居る者達からは観測されないようにしずつ移を行っていたシギンだが、もうすぐで悟獄丸やイダラマ達が居るだろうという場所の近くで、首を引き千切られて事切れている人間の姿を発見するのだった。

「悟獄丸も慘い事をするものだ……」

――その人間とは青く長いピアスを耳につけていた『イダラマ』の護衛であった『ア・コ・ウ・』であった。

「後で必ず葬ってやるから、いましばらくは悪いが我慢してくれ」

シギンはアコウの亡骸にそう告げると、再びその場から姿を消して悟獄丸達の場所へ向かうのだった。

……

……

……

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