《ダンジョン・ザ・チョイス》706.TR-3Bと偽エイリアン
「景が変わらないな」
もうどれだけの部屋や広大な通路を通り過ぎたのかも解らないのに、相変わらずの鉄で覆われた地下空間。
「巨大宇宙移民船の中とか、リアルだったらこんなじなのかしら?」
アヤナの発言。
ここに來るまでに、水道やトイレなんかも幾つかあったけれど。
「なんだありゃ? デカくて黒い三角?」
部屋の端が吹き抜けの上部になっていたらしく、そこからザッカルが下を覗き込んでいた。
「なんかあれ、どっかで見た覚えがあるような……」
「TR-3B……みたい」
アオイの呟き。
「なによそれ?」
「アメリカ政府が作ったっていう、地球産のUFOって言われてる……畫で飛んでるの見た」
私も思い出してきた。
「UFOって……もっと丸い楕円形じゃないの?」
「電気である程度見た目を変えられるらしい。を引き寄せるトラクタービームもあったはず」
今度は私が報を提供。
「それって、宇宙人がUFOで家畜とかを攫う時のあれ?」
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「アレが開発されていたのは、八十年代から九十年代と言われている」
ちょうどアメリカ政府が宇宙人と約をわしたとか、各地でUFOの目撃、宇宙人による人攫いが多発したとされる時期のあと。
「五十年くらい前には、地球人がUFOを作ってたってこと?」
「第二次世界大戦頃、南極に派遣されたアメリカ軍がUFOと戦したという報もある。當然の如く、隠蔽されたけれど」
「ジョン・F・ケネディが暗殺されたのは、その辺りの事実を暴しようとしたから、て話もあるよね」
アオイも、そのての話に結構詳しいんだな。
「日本でもたびたび特集されるわよね、例の暗殺。そのたびに違う論説が展開されてて、當時、番組作ってた人達って無責任なバカ多過ぎって思って興味失せたけれど」
辛辣だな、アヤナ。まあ、同意見だが。
「謀論て言葉が生まれたのも、その暗殺のあとくらいかららしいね」
々なの転換點だったのかもな、あの事件も。
「よく分からねぇけど、取り敢えず行ってみようぜ」
ザッカルが手摺りを飛び越え、TR-3Bが並ぶ下へと降りてしまう。
「私達も行こう」
ザッカルの後を追うと、TR-3Bが六機も置かれた格納庫らしき場所へ。
「これ、どっから発進するんだろう?」
「そこの壁じゃない? 見るからに変形しそう」
雙子の會話。
「フェルナンダ、このUFOって私達は使えるのか?」
「コレは厳にはUFOって呼ぶべきじゃないと思うが……それ自は使えないが、破壊すれば貴重な素材が手にるはずだ」
貴重な素材か。
「頼む、ザッカル」
「おうよ!」
ザッカルに預けられたSSランク、“ゲイボルグ・ディープシー”でる海水で、TR-3Bを攻撃して貰う。
「結構、ぇな!」
“深海支配”で生み出した水の槍が襲うものの、刺さってもなかなか貫通しない。
「これならどうだ!」
傷に一點集中させて、海水を大量に流し込んでいる?
「皆さん、伏せて! “魔法障壁”」
アルーシャの警告の直後、TR-3Bが大発。
「SSランクの消耗無しの能力だけじゃ、ちょいと時間が掛かりそうだな」
「それよりも來るぞ!」
フェルナンダのびが響くと、通路奧から人型の異形が次々と現れる!
「なんだコイツら? 統一がなさ過ぎるだろ」
一一のデザインがバラバラ。全部違うモンスターなのか?
「ルイーサ、上と後ろからも來てる!」
さっきまで私達がいた部屋からも落ちてきているだと!?
「フェルナンダ、進路はどっちだ?」
「前だよ」
「よし、ザッカルは進路の確保! アオイとアヤナで後ろを頼む! アルーシャはザッカルのサポートを! 私とフェルナンダは遊撃に回る!」
「「「「了解!!」」」」
各々がく中、私は離れた位置のTR-3Bに攻撃を集中させる。
「ちょ、ルイーサ! 今はそれどころじゃないでしょ!」
「そうでもない!」
狙い通りまでダメージを與えたのち、距離をめてきた異形共を相手取っていく。
「やはりいな、“古生代のヴァリアブルシールド”」
鋭利な覚や爪だけでなく、吐きかけられた酸も問題なく防いでくれる。
“ヴリルの聖骸盾”よりも重いの、こっちには衝撃を軽減してくれる効果もあるからなかなか便利。
“ヴェリタライズ”で切り払いつつ、後退しながら迎撃していたアヤナ達と合流。
そろそろ頃合いか。
「下がれ、二人とも。派手に吹っ飛ばすぞ!」
「あ、なるほど」
「なに、どういうこと?」
私の手が向けられた方向を見て、アオイは気付いたらしい。
「――“霊魔砲”!!」
魔神・付與霊から手にれたスキルを行使し、ダメージを蓄積しておいたTR-3Bに攻撃――近場にモンスターが集していた狀態で吹き飛ばす!
「無茶するわね、まったく」
「ルイーサ、こっちは全滅させたぞ!」
さすがザッカル。
「ザッカル、手前のUFOを破壊してくれ!」
しでも消耗を避けつつ、手にれられるは手にれる!
「俺は飽きた! お前がやれ、アオイ!」
“ゲイボルグ・ディープシー”を投げ渡した!
「しゃーなし」
け取った“ゲイボルグ・ディープシー”をり、海水の巨槍でTR-3Bを、ものの數秒で散。現れた異形の第二陣を全滅させてしまうアオイ。
「ハアハア。急にとんでもない數が出て來たわね」
「アレはなんだったんだ、フェルナンダ?」
私の契約者に尋ねる。
「全部、“偽エイリアン”というモンスターだ」
「「「全部同じなの?」」」
「ああ。大なり小なり、姿は全て違うという設定だな」
なんで、その偽エイリアンだけわざわざそんな設定に。
「偽エイリアンってなに? なんでわざわざ偽?」
アオイがフェルナンダに尋ねた。
「……さあな」
今の間の開け方、メルシュそっくりだったぞ、フェルナンダ。
「その“偽エイリアン”ての、妙に歪な見た目だったな。生的に不自然つうか」
「なんとなく、アップデートの時に現れた男に似てたよね」
アオイの意見には同意だが。
「アレみたいな化けじみた耐久力とかは無かったが、確かに似てた気はするな」
「取り敢えず、ここでし休もう」
TP・MPもだが、深夜からいてたから力的にも結構キツい。
「もう晝近い。軽く食べて晝寢でもしておけ。見張りは私とアルーシャでやっておく」
「ああ、頼んだ」
お言葉に甘え、二時間ほど仮眠を取らせて貰った。
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