《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1697話 目に見える攻防と、目には見えない攻防
「俺を妖魔神と理解した上で、そこまで舐めた口を利ける奴がまだ居たとは驚きだ。だったら仕方ねぇよな? 痛い目にあわねぇと分からねぇようだから、俺にそんな口を利けばどうなるかをそので分からせてやる」
何と元々筋隆々の見た目だった『鬼人』の悟獄丸だが、オーラを纏わせた後には更にその筋が膨れ上がっていき、その見た目からも力の強さが窺い知れるのだった。
「お前は本當に見た目通りの奴だな? まぁ、そんな対策の取りやすくも分かりやすい戦闘スタイルで『妖魔神』として止區域でも恐れられる程の強さを示している以上、どんなものでも突き詰めていけばそれなりに厄介な代となるという事か」
「託はもういいぞ……? 今すぐにその偉そうな口を利けなくしてやるから覚悟しやがれっ!」
上半だけではなく、下半に至るまで筋で膨れ上がったをしている悟獄丸は、そう啖呵を切ると同時に一気に地を蹴って、シギンの居る場所へと毆りかかっていった。
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「ほう? 思ったよりも速いな……」
あっという間に自分の間合いにられたシギンだが、口では驚くような言葉を呟いたが、全くじずにその振り下ろされた右拳に合わせて右手を上げると、その手の前に『障壁』と呼べるような壁が出現して悟獄丸の拳を止める事に功する。
『魔』の力で出來た『障壁』のようだが、これはソフィ達の世界にあるような『理』から生み出された『障壁』というようなモノではなく、あくまで『魔力』の殘滓から組み立てた単なる『魔力』の通った平面的な質であった。
しかしその耐久は悟獄丸のオーラを纏った拳で割れない程であり、まず『障壁』と呼べる代で間違いなかった。
「おらぁっ!!」
しかし拳を止められたにも拘らず、今度は軸足を変えて腰を捻ると、悟獄丸は左手をその『障壁』に突き出し始める。
「ははははっ! 強引だな悟獄丸? 全くお前は想像通りの事をする奴だ」
障壁で隔てられているとはいっても、目の前で恐ろしい程の大男が全を使って思いきり毆りかかってきているというのに、シギンは生み出した障壁に、軽く手を添えるように置いて笑ってみせるのだった。
がんっ! がんっ! と何度も悟獄丸は障壁を毆り続けるが、その障壁には亀裂どころかヒビすららない。
ランク『10』である筈の悟獄丸が『青』のオーラを纏って尚、全くその障壁は割れる様子を見せない。つまりそれだけこのシギンが張った『障壁』の耐久が優れているという事であり、いくら腕力に頼った攻撃であっても耐え得るのだと証明してみせたのだった。
「私にとってお前のように、力に頼った『鬼人』という相手は非常に相が良い。そこにいくら『魔』の力を込めようが、ありとあらゆる対処法が確立されているのでな。殘念だが、お前に勝ち目はないぞ?」
「うるせぇっ!! 舐めてんじゃねぇぞ、コラァッ!!」
いくら『障壁』に絶対の自信があったとしても、こうして『鬼人』であり『妖魔神』である悟獄丸が、その大きなで全力で振りかぶりながら毆りつけている姿を目の前で見せつけられては、普通の人間であれば震えが止まらなくなる程の恐怖に取り憑かれるものだが、シギンという男は涼しい顔をしながら顔の前に迫る拳に瞬きすらせずに、余裕綽々と言った様子で笑みさえ浮かべていた。
しかしそこでシギンは何かに気づいたように、視線をしだけ下げて悟獄丸の足元を見る。當然『障壁』を張り続けるために手に『魔力』を込めながら、悟獄丸の拳の位置辺りには変わらずに都度視線を這わせてはいるのだが、その合間には徐々に距離があいていく様子を見せる悟獄丸の足元にも視線を送り続ける。
(連続で毆り続ける拳の威力は、目に見えては変わってはいない。このまま同じ行をいつまでも繰り返す理由がないとは思っていたが、一目には気付かない程にしずつではあるが、こいつは距離を取り始めている。さては意識を障壁に向けさせつつ、裏で何かを狙っているな?)
悟獄丸の全を使っての拳の毆打は、目を背けたくなる程の迫力があるが、シギンはその拳だけに意識を向けずに、このままで終わるわけがないとアタリをつけた後、しっかりと悟獄丸の狙いを先読みしてしずつ離れて行く足元に著目し始めるのだった。
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