《天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭なと便利スキル『創魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~》第479話 際限無く増するデュプリケート
アスタロトが目の前で、とは言え自分の國の國民が取り込まれたのを見て絶句していたが、すぐに冷靜さを取り戻し口を開く。
「……なるほど。しかしそんなことを我々に教えて良いのですか? ここですぐさまあなたを殺してしまえば終わりなのではないですか?」
「「「ククク……ハハハハハハハハ……!」」」
それを聞いて突然笑いだす三匹のデュプリケート。
「フフ…………淺い考えですね……」
「同じ姿の『私』がどれくらい周りに居ると思ってるんですか?」
「數十、數百に増えた『私』が目にらないのですか?」
三人がそれぞれの口でしゃべり出す。
「何だと!? 貴様ら!」
その馬鹿にしたようなセリフを聞いてロックスが凄む。
言われて周囲を見回してみると、確かにさっきよりデュプリケートの人數が増えてる気がする!
そして私たちに話しかけてきた“混じってない”タイプのデュプリケートが再び話し出す。
「私がいつ本だと言いました? もしかして私があなたたちに聲をかけたから私が本だとでも思いましたか? 今この場で私を倒せば複製された『私たち』は全部消えるとでも思っているのですか?」
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「…………違うのですか?」
「私に本はいませんよ」
「増えた『私たち』は魔法で増えた幻影ではありません」
「実態がありそれぞれがそれぞれの思考で行します」
「言うなればここに居る全部が『私』の本です」
「例え『私』が一萬人殺されても、たった一人でも『私』が殘っていれば、私は本當の死を迎えることがありません」
その衝撃的な事実に、この場に居た全員の顔が変わるのが分かった。
さっきのの塊を放出する様子を見る限り、ごく短時間で増が完了する。
つまり、私たちが見ていないところで増され、どこかに一匹でも隠れられてしまえば実質コイツを倒す方法は無いのではないか?
隠れられて増を繰り返されれば、ずっとイタチごっこでこちらばかりが疲弊していくのが容易に想像できる。
ただ、アスタロト、ティナリス、ロックスの三人はすぐに顔が戻った。流石歴戦の勇士だ。何か考えがあるのかもしれない。
「私個人の能力は『複製』、殺傷能力で言えば他の高位存在と比べれば遙かに劣ります」
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「だが働きアリ程度の腕力は持ち合わせています」
「その私が大群になればどうなるでしょうねぇ?」
三匹のデュプリケートから、更にの塊が出現。あっという間に六匹に増え、十二匹、二十四匹と倍々に増える。
「更に私には異を取り込むことで使える能力が増える特徴まであります。混ぜるものは何もでなくても良いのですよ」
近くにあった石を拾っての塊へ投げ込んだところ、の塊が石を吸収し、石の特徴を持ったデュプリケートが誕生した。
「コ、コイツは……」
「何て厄介な能力……」
「まさか、働きアリがこの場に居ないのは?」
「ええ、そうです。働きアリなど必要無い!」
「私一人居れば働きアリ數百匹分、數千匹分、いや! それ以上の働きができるためですよ!」
その時、通信シールから更に急を知らせる連絡!
『アルトラ殿! 別のところからもジャイアントアントが発生! 城へ向かって進軍している模様! 見慣れない人型をしたも一緒です!』
一緒に聞いていたロックスとティナリスがこの聲に反応。
「だと? 帝蟻か!?」
「城へ向かっているですって!?」
それを聞いて気付いた。
「まさか……」
このデュプリケートがのらりくらりと話をするのは――
「――!?」
「やっと気付きましたか。元々はカゼハナに王が発生したと見せかけて、手薄になった城と街を制圧、風の國そのものを奪い取る予定でしたが、なぜかここが怪しいと考える者が居たようで」
カイベルがアリによる風の國簒奪さんだつを予想しなければ、風の國の戦力は全部カゼハナに集中し、今以上にこの國の防衛が手薄になっていた可能があるってことか。
「しかし最後はこちらにまんまと引き付けられてくれて謝しますよ」
「ああそうそう、あなた方が心配している街中に住む亜人たちですが――」
この後の言葉を予想し、再びこの場の全員が顔面蒼白。
「――我々主導の世界を作るのに邪魔なので皆殺しにします。王様に付き従っている働きアリも多數に上りますので、この後街中は大慘事に発展するでしょうねぇ」
「全員我々の食料にして無駄にはしませんので安心して食材になってください」
嫌な笑いを混ぜながら話しを続けるデュプリケートたち。
何と言うことだ……ボレアースに被害が及ばないようにと崖下がいかで食い止めるはずだったのに、このまま帝蟻たちに崖を登らせればボレアースの街中で慘劇が起こってしまう!
「くそっ!」
私は急いでその場を飛び立とうとすると――
「お待ちください! まずは通信連絡で各隊に指令を!」
「そ、そうか! 焦り過ぎてた……気付かせてくれてありがとう」
――アスタロトに制止され、しだけ冷靜さを取り戻せた。
『アルトラから各隊に指令! ボレアースへ向けてジャイアントアントが崖下を進軍中! 有翼族は急ぎ街中へ向かい住民の避難をさせてください! すぐにボレアースから離れるよう指示してください!』
指令を出した直後にデュプリケートが話し出す。
「こちらは良いのですか? 私はどんどん増えますよ~?」
骨に挑発してくる。
その言葉通り、の塊がどんどん生み出され、デュプリケートがどんどん増する。數十? 數百? もはや目測で測ることはできないほどに大量の數になっている。
街の方あちらを優先すればデュプリケートが増えて手が付けられなくなる。しかし、デュプリケートこちらを優先すれば帝蟻とジャイアントアントの集団にボレアースを滅ぼされる。
しかし、そのデュプリケートの挑発を合図にロックスとティナリスが飛び出した。
「うおおおぉぉぉ!!」
「はあああぁぁぁ!!」
二人の槍の一振りで風の刃を伴った暴風が起こり、十數匹、數十匹のデュプリケートが吹き飛んだ。
「この程度なら我々だけで問題無い!」
「ベルゼビュート様はボレアース市街の方をお願いします!」
しかし、その様子を見ていたデュプリケートの一人が馬鹿にしたようにパンパンと拍手を送る。
自分が産み出したものが數十匹一瞬で殺されたのに、全く気にも留めない。
「おお、強い強い、流石は風の國きっての使い手ですね。ですが私はまだまだ増えますよ~?」
二匹居れば四匹に、八匹居れば十六匹に、三十二匹居れば六十四匹に、百二十八匹居れば二百五十六匹に、再び倍々に増えていくデュプリケート相手に、數十を一振りで倒せたとて何とかなると思えない。
「もしかして、『どこかで増の限界が來るんじゃないか?』などと考えていますか? だとしたらそんな希は捨てた方が良いですよ。私の能力は私が止めない限りどこまでも増します」
「『私が止めなければ』? 全員が意識や覚を共有しているということですか?」
「覚は共有していません。殺された時に痛いですから」
ということは意識は共有しているってことか。だとするとピンチになった時にどこかに隠れられ、そこで増するという作戦は現実味を帯びる……
私がここに殘ったとて、これらを倒せるんだろうか?
弱點となる本が居らず、際限なく増する能力って……これってもしかしてもう亜人側に勝利は無いんじゃ……?
どんどん深刻に考えていたところ、アスタロトが私の選択の後押しをする。
「こちらは私とティナリスとロックスの三人で何とかします。ベルゼビュート様は他の騎士団員と共に街の方をお願いします!」
「たった三人で何とかなるの!?」
こんなに短時間で増える敵見たことないけど、本當にたった三人で倒せるってことなのか!?
「ええ、私の能力は集団戦闘向きです。私が見たところこちらは三人で十分です。し時間が経った今なら先ほど置いてきたイルリースとエアリアがカゼハナから鋭たちを何人か呼び寄せられてると思います! その鋭たちにも狀況を伝えてしでも戦力を増やしてください。街をよろしくお願い致します!」
どちらへ行くか決まった!
三人で何とかできるという言葉を信じて、私は帝蟻のところへ向かおう。
「分かったよ。じゃあ私は首都の方へ向かう! 武運を祈るわ!」
「ベルゼビュート様もお気を付けください」
鋭に狀況を伝えて戦力を増やすべく、さっきまで私が駐屯していた場所へ【ゲート】で移した。
小説で同じ敵が複數居るのを表現するってのは、中々考えさせられますね。
複數存在しているように見えてるでしょうか?
次回は6月17日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第480話【アスタロトの策】
次話は來週の月曜日投稿予定です。
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