《ダンジョン・ザ・チョイス》715.氷炎と天使の競演
「クマムちゃん……」
一人でSSランク持ちの相手をさせてしまう事になるなんて。
「氷炎拳!!」
私の燃える凍結拳を叩き込み、偽エイリアン? のを凍らせて砕く!
「“れ墨”――風のれ墨」
緑の紋様を、に刻むサザンカ。
「“瘴気転剣”――ミアズマブーメラン!!」
ホブゴブリンや大ムカデ、メガジャイアントボアの首を刎ねていく巨大手裏剣。
「隠れNPC、ヤクザの能力でブーストか余」
教えてくれるナノカだけれど、その手にはいつもの“魔神の大石刀”は無い。
リエリアがSSランク武を持っているから、もしナノカがアレを裝備してしまったら、たちまち私達のパーティーは失格になってしまう。
「やれ余、お前達!」
小魔神と魔神竜をって、數の不利に対抗しているナノカ。
ザサンカも、レイナがパーティー最大數を増やす裝備をする事で“分”數を稼ぎ、ミドリは、惜しみなく指を供にして悪魔を召喚している。
「“二刀流”、“神鉄棒”――オリハルコスイング!!」
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レイナのドワーフメイド、リスペンがオリハルコンとブラックオリハルコンの大鎚で大型モンスターをぶっ飛ばし、壁に叩き付けることで、多くのモンスターを巻きこませる形で圧死させていた。
「“炎鞭剣”――バーニングウィップブレイド!!」
「“二重武”、“八雲棒”――クラウドブレイク!!」
マリンとハヌマーは、神代文字を刻んで著実に數を減らしてくれている。
ノーザンとミキコも同様、手堅い戦い方をしながら周りをカバーしているわね。
エレジーはリエリアをサポートし、そのリエリアがどんどん敵の數を減らしていく。
レイナ達はSSランクを持っていないらしいし、消耗を抑えつつこの場を乗り切れるかは、うちのリエリアしだいか。
「――まずい! 偽エイリアンの中に、ランクが高い奴がいるぞ!!」
偽エイリアンのランクはC。それ以上ってことはB以上だけれど、ナノカの慌てようからしてBより高いかも。
「“熱の黃金拳”!!」
急接近してきた骨恐竜に、右腕から放った黃金の炎を浴びせる!
「ナオ、ソイツがそうだ!」
「ハ!? コイツ、偽エイリアンなの!?」
偽エイリアンの定義っていったいな――黃金の炎が効いていない!!
尾の薙ぎ払いを、右腕でけるッッ!!
「グぅッ!!」
円陣を組んで戦っているような狀態で、躱すわけにはいかなかったッ!
“大天使の黃金甲手”に罅がったし、コイツだけなんかおかしい!
「“兇暴化”!!」
神代文字を十二まで刻んで、強化スキルを発!
「――氷炎腳!!」
噛み付いてきた骨恐竜の頭上を取り、頭蓋にかかと落としを決める!!
「“獅子王撃”!! ――“霊魔砲”!!」
獅子のオーラをぶち込んだ“大天使の黃金甲手”が、半壊してしまう!
ていうかこれ、右腕の骨に罅がってる!?
「ハアハア、ハアハア」
“兇暴化”を解いた瞬間、嫌な汗が出て來たかも。
「ハイヒール!」
『ギャ……ギュギョ』
コイツ、他の偽エイリアンは砲撃の余波で吹っ飛んだっていうのに、半が吹っ飛んでもまだくのか!
「武換――“氷炎の競演を観よ”」
破損した黃金甲手の代わりに、だいぶ前に手にれていた赤青の小手を裝備!
両腕の氷炎の権化に、同時に十二文字を刻む!!
『グギャーッ!!』
骨の矢による弾幕を放ってきた!?
「私だって長してんのよ!! ――氷炎連拳!!」
燃え凍らせて、骨の矢をことごとく砕く!!
――左腕の“氷炎競いて猛り散る”と比べて、変質前の“氷炎の競演を観よ”じゃパワーが一段、二段は劣って――――黃金炎のように、もっと莫大なパワーと火力を!!
「――へ?」
さっき、“氷炎の競演を観よ”を裝備した時、一瞬、殘像が走ったみたいにブレて見えたけれど――“大天使の黃金甲手”の破片が、“氷炎の競演を観よ”に吸い込まれていく!?
「合……しちゃった?」
黃金の裝飾彩られた、“氷炎と天使の熱的競演を観よ”へと融合進化。
『ギョギャーッ!!』
「――“氷炎の熱華”ッ!!」
突っ込んできた骨恐竜に対し、火花と氷雪のエネルギーを纏った右拳を繰り出し――敵の破片までをも金の粒子へと変換。跡形もなく……吹き飛ばした?
「……なにこれ?」
これって、コセが今の鎧を作ったのと同じ現象?
勘だけれど、なんか違う気がする。
――一際強いと風が、この部屋全を吹き抜けた?
「クマムちゃん……」
あのが居ない……クマムちゃんが勝ったんだ。
モンスターも、あらかた片付けたみたいね。
「クソ――なんなんだよ、あのは! 雑魚じゃねぇのかよ!!」
男の聲……段々と近付いてくる?
「――どけよ、雑魚共がぁぁ!!」
ズタボロの男がいきなり現れたと思ったら、銀の棒から緑の雷? を周囲に飛ばし――その雷の中から銀の刃を無數に生み出して、見境無く飛ばしてきた!?
「――“氷炎舞”!!」
即座に迎撃行を取るも、全ては防げない!
「ぁぁあッッ!!」
「きゃああ!!」
今の、レイナとマリンの聲!?
「邪魔だっつってんだよ、クソ雑魚共があぁ!!」
コイツ、なんでこんなに錯狀態なのよ!
「“氷炎の狂”!!」
螺線狀に発される火と冷気の玉で、男の暴を止めた!
「良いから退どけよぉぉ!!」
「――よくもレイナママを」
ミドリの低い聲――彼の黒い杖に、“対価を払えぬならば死に曬せ”に神代文字が九文字刻まれている!
「クソ――“砂鉄魔法”、アイアンサン――」
「“悪魔法”、デビルハック――デビルランサー」
魔法陣をジャックし、アイツが生み出した魔法から黒い槍が発――男の全に突き刺さる。
「こ、こんなところで――“竜化”!!」
コイツ、SSランクっぽい武持ちどころか、五十ステージより上に到達した奴か!
『あのが……あのが來る前に!!』
「――それって、アタシのこと?」
男が現れた通路からやって來たのは、《日高見のケンシ》の達!!
「アキラにヒフミ!」
軍人みたいな不思議ちゃんのヒフミと、黒い鎧のアキラ率いるパーティーが、男の背後を取った。
『ぅ……もう來やがったのか』
「本のクズだよな、お前。パーティーメンバーを囮に、自分だけ助かろうとしやがって」
『お前になにが解る! 今まで苦楽を共にしてきた仲間が、同じ釜の飯を食った奴等と死に別れるのがどれほど辛く、悲しい事なのか!』
「ああ、そういう安っぽいの良いから。ていうか、お前が自分から見捨てておいて、被害者ぶるのやめろよな。レイプ目的で仕掛けて來たようなクズ共のくせに」
そういうクズほど、綺麗事が口からすらすら出て來たりすんのよね。
『お前なんざ興味ねぇよ、ブスが! 俺達の目的は、最初からそっちのっぽいだけだったんだよ!』
まあ、ヒフミの気は同から見ても凄いけれどさ。
「――ヒフミ。やっぱコイツは、アタシがぶっ殺すわ」
「良いよ~。アキラちゃんが一番の適任だし――ヤグルマ」
「はっ」
ヒフミに呼ばれて前に出て來たのは、彼が契約したっていうヤクシャの隠れNPC、ヤグルマ。
「やってくれ、ヤグルマ」
「――“無量空処”」
アキラとあの男が、黒い箱の中に閉じ込められた!?
「あの黒い箱は一?」
「“無量空処”。何も無い空間に、一時的に閉じこもる事が可能なユニークスキルだ余」
エレジーの質問に答えるナノカ。
「ナノカ、あの男の武って……」
「SSランク、“マグネット・ジオアームズ”だ余」
じゃあ、アキラはSSランク持ち相手にたった一人で?
「これ、アキラが危ないんじゃ……」
「大丈ー夫。アキラちゃんはむしろ、SSランク頼りの人間にとって最大の天敵だから♪」
ヒフミの笑顔の理由は、いったい……。
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