「“二重魔法”、“溶巖魔法”――マグマイラプション!!」

「マジックガイド――ハイパワーカウンター!!」

魔法を吸い寄せるマジックガイドでタイミングを調整しやくすし、タイミングがシビアなカウンター能力を功させ――者を溶かし殺す。

「く、クソ！」

逃げ出した仲間達も、カプアとリンピョンによって簡単に始末された。

「裝備や戦からして、三十より低いステージの奴等だな」

後衛であるサトミとウララに付いていた、バルバの意見。

「そっか。格上ばかり気にしてたけれど、今回は全ステージから挑戦できるんだものね」

Ｌｖによる差は埋まっているが、その他の要因による差があまりにも大きい。

「もうしでシェルターでしたね。ようやく休めます」

バルバがマップから気付いた、休息に最適な場所。

「先約が居なければ良いがな」

私達のように、目を付けた連中が居てもおかしくない。

金屬の通路を進み、階段を発見。

「この先は一方通行の行き止まりだ。気を付けろよ、メグミ」

「ああ、バルバは後ろを頼む」

盾使いである私を先頭に、長い階段を何度も折れ下り……戦闘音が聞こえてきた。

「あれは……」

広い空間で戦っていたのは、黒い靄を纏った――キクル達!?

○○○

「シェルターというところに、本當に良い寢床があるのか？」

階段を下りている最中、人魚のグダラが尋ねてきた。

「拡大しまくったら、それっぽいが見えたからね」

バロンの隠れNPC、ミレオが答える。

『シェルターなら、食料なんかもあるだろうか？』

持ち込んでいる分でなんの問題もないが、り口がバチカン市國のバチカン宮殿の地下だったから、珍しい保存食があるかもしれない。

『できれば、ガルムとかの調味料がしいな』

「ガルムとはなんですか、キクル様？」

ヒョウカに尋ねられる。

『魚で作る、ローマの伝統的な魚醤らしい』

興味が湧いたけれど、その辺のスーパーに売ってなくて未験なんだ。

「キクル様、奧から聲が」

ホーン・メイドのディアが、階段の終わり手前で教えてくれた。

『さてと』

階段の先、広いドーム狀の空間へと足を踏みれる。

『グルルルル』

『熊？』

「“グラップラーベアー”です。対人戦闘に秀でています」

ディアからの報。

『人の聲は、奧の建か』

天井までくっついた、黒いビルみたいな六メートル程の建……地下基地に建？

「指モンスターの見張りだろうね」

ミレオの斷定。

「キクル様、私がやります」

『いや、ヒョウカは建から出て來る奴等を頼む。グダラ、派手にやってくれ』

おびき出してもらわないと、シェルターが使えなくなるからな。

「行くぞ――“回遊魚雷”!!」

『グル？』

全ての魚雷が命中……グラップラーベアーは、なんの抵抗もせずに散した。

「対人戦に優れてはいますが、人間離れした攻撃には弱いんですよ、あの熊」

『……そうか』

知らないモンスターだったから、きとか見たかったのに。

ビルの重厚な扉がスライドし、中からプレーヤーが出て來る。

「――紫電」

“抜刀”による連続切りで“不意打ち無効”の守りを突破。そのまま人魚の男を始末するヒョウカ。

「容赦ないな、ヒョウカは」

『同盟相手なら殺せないからな』

「いや、そういう事じゃなくて……まあ、良いけど」

グダラが呆れている？

「――行きな」

「やめ――」

半の男が突き飛ばされてきて――ヒョウカに斬り殺された。

「――“呪縛の悪手”」

ヒョウカの腰に手を回し、間一髪で引き寄せに功。

一歩遅ければ危なかった。

「ありがとうございます、キクル様」

抑揚のない聲で禮を言う雪……無表なのに、本當に綺麗だな。

「“竜化”しなさいよ、使えない奴ね！」

ヒョウカを襲ったのは人魚の……得は斧か。

「へー、珍しいね。男一人に四人のパーティーとは」

出て來たのは男が四人で、種族はバラバラ。

あんな扱いを見せられた後なのに、男達に不満のが無い……どころか、俺だけに敵意を向けている？

「ボアドラ様、アイツを新しいハーレムに加えるのですか？」

……ハーレム？

「落ち著きなさい。一人減ったから、面しだいでは加させたいところだけれど、クエストが終わったらどうせ離ればなれだもの――今夜くらいしか相手しないわ」

あのが喋るほど――鳥がヤバい！

「ねー、仮面を外して見せてくれない？」

『……良いだろう」

「キクル？」

仮面を外し、火傷跡を曬してやる。

「……――あら、良いじゃない！　その顔の怪我、男の勲章ってじで素敵よ♡!!」

なんなんだ、このぼけ人魚!?　気持ち悪い。

「あの人魚、しは男を見る目があるようだな！」

何を言ってるんだ、グダラ？

「ですね」

「確かに」

「業腹ですが」

ディアにミレオにヒョウカも、なんなんだこのノリ？

「良いね、明日にはお別れなのが殘念だよ――“波”!!」

「まずい、あれは!!」

なんだ？　デカいピンクのハート型の何かが、人魚の頭上に出現して――

『――なにが!?』

思考が、グチャグチャになっていく!!

「さあ、私の虜になりなさい。キクル」

「どうしたの、キクル！」

グダラの聲が……変に聞こえる。

「SSランク、“ラブコメ・アンジュレーション”。裝備者の異を虜にする、“支配”の力を持っている！」

……支配？　……なんだよ、それは。

「さあ、來なさい。私の――の下僕ちゃ～ん♡」

人魚の姿が歪んで、別のの姿に見え――

「――ぅおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「な、なに!?」

腰の“悪運のクリス”を摑み――左太に深々と突き刺す!!

「――あんなの幻影で、俺をわそうなんてッ!!」

こんなに憎悪が滾ったのは、いったいいつぶりか!!

「キクル、何をして！」

「グダラ――お前らは手を出すな」

このだけは、俺が絶対に殺す。

何度も殺してやりたいと思ったの幻影――母親の幻影をり付けたクソ人魚は!!

「――オールセット３」

右腕に、俺のSSランク――“カース・オブ・オーガントレット”を裝備する。

「た、たまに居るのよねー！　効くのが遅い男ってさー！」

取り巻きの男達が、前に出てくる。

「こんなクソみたいな神支配に屈したこと――あの世で後悔しろ!!　――“呪縛支配”」

黒い靄を、右腕の濃紫のガントレットから俺の全に――武にまで纏わせていく。

「“魔炎”!!」

紫炎の玉、連なる浮遊する蛇を生み出し――“呪縛支配”の靄を纏わせる。

「こんなもんで！　ハイパワーアックス!!」

斬られた“魔炎”の炎と呪縛の靄が、男に纏わり付く。

「た、助け！」

“呪縛支配”の応用で、混ぜた炎もある程度は作できる。

「“毒玉発”」

呪いを混ぜた毒玉を、四人の男達に數発ずつ當てる。

「この程度の毒なんて、耐が高けりゃ！」

“呪縛支配”の靄は、風で簡単に散らされる。だから混ぜて使う。

この弱點のおかげで、前の持ち主を倒すことができたんだけれどな。

「が……重い」

“呪縛支配”の呪いは、浴びれば浴びるほどステータスを下げるデバフ能力。靄そのものに殺傷能力は無い。

「“猛毒魔法”――ヴェノムウェーブ!!」

呪いを混ぜた毒の波を放つ！

「――“魔斷障壁”!!」

さすがに良いスキルを持っているな、あの！

だが、取り巻き連中はこれでけないはず。

――また思考が！　が足の痛みに慣れてきたか……――どうせ見えないんだ。

「――キクル!!!?」

左眼を短剣で突き刺し、脳髄に怒りと憎悪を刻み込む!!

「な!?　……い、逝かれてるわよ、アンタ！」

「男に依存するようななんかに」

「はあ？　私は依存なんて!!」

頭が、ボーッとしていく――憎しみ以外のが希薄になっていく。

――“紫幻の悪夢を食らい盡くせ”に、十五文字が刻まれる。

「こ、來ないで!!　“猛毒の薔薇”!!」

黒に近い紫の薔薇が生まれ、踴り迫ってきた。

「――“神代の斧”」

瞬時に切り刻む。

「に、逃げ……逃げなきゃ」

が背を向けた瞬間――肩から脇腹まで、一気に切り裂いた。

「…………」

薔薇……そういえば、このとユウコのやってたことは、大して変わらないのか……。