《ダンジョン・ザ・チョイス》726.二日目の夜

「コトリ、戦闘音だ」

「エトラ?」

出口で一緒に見張りをしていたエトラから、聲を掛けられる。

「向こうから微かに」

角度的に、ちょっと見えづらい。

「……あ、こっちに來る!」

種族がバラバラっぽい集団が五人――

「なぁんだ、ミカゲ達じゃん」

黒髪ポニーテールの戦士、ミカゲをリーダーとする五人パーティー。

い仮面付けたSSランク使いのハルナ、アンドロイドの隠れNPCのアンナさんて名前のアンナさん、ハクビシン獣人の刀剣使いであるジャコンに、紫人魚のドーマ。

「うん? 先を越されていたか」

ミカゲ達も私達に気付いたようで、武を下ろして空へ。

「ボロボロだね、五人とも」

「強敵と戦ったり、モンスターの集団と遭遇したりで、ここまでろくに休めていません」

気ムンムンのドーマからの告白……たまんねーな、おい!

「コトリ達は、今日はここで休む気みたいだな」

食事や寢床の準備していれば判るか。

「ミカゲ達も休んでく?」

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「良いのかい?」

「同盟結んでるんだから、當然でしょ♪」

広さも充分なうえ、代する見張り要員も増やせるんだから、追い出す理由が無いってね!

「それで、ここで何を手にれたんだ?」

ミカゲの、確信に満ちたいやらしい目。

「向こうに見覚えの無いメンバーが居るでしょ? たぶん、第二回大規模突発クエストの景品だった隠れNPC、だと思うんだけれど……」

、リンカには狀況を一通り説明したけれど、まだ々混しているみたい。

今はモーラ専用の裝備である、黒い肩出しドレスを著ている。

「もしかして、元人間か?」

「さすが、よく分かったね」

「ホイップというについて、聞いてたからな」

そういえばこの前の顔合わせの時に、いなくなったホイップの話題が出てたっけ。

●●●

「……ここは」

どこかの……金屬製の建の中? しかも夜か。

「良かった、レリーフェ」

ローブで顔を隠した……私と同じ髪のエルフ。

「……他の者達は?」

「スライムのバルンバルンさん以外は無事です」

「バルンバルンが!?」

「プレーヤーに殺されたと、スゥーシャさんが……」

私達がアルファ・ドラコニアンと戦っている最中に、橫槍をれてきた連中が居たのか!

「ボロボロだった皆さんを、近くにあった……大きな車? 壊れているらしいんですけれど、家みたいな機械の中に運んだんですよ。それで、今日はここで夜をやり過ごそうということになり」

……また一人、失ってしまったのか。

「……ノーファ様、ですよね?」

「……」

答えてはくださらないか。

「ご無事で何よりです」

「……それは、皮ですか?」

「いえ、決して!」

あの日、私率いる森の騎士団が壊滅した原因は彼、フォルカスカナの一族の姫、ノーファ様だ。

運が悪かったと言うべきか必然か、ノーファ様が前線に安に來てくださったタイミングでデルタの襲撃に遭い、私は騎士団を壊滅させてしまった。

ユリカと出會った日の數日前、ノーファ様が檻に送られて來た時は驚いたな。

王族に対する不満が兵士達の間で高まっていたのもあり、私はノーファ様の存在に気付きつつ、敢えてれないようにし……その結果、クエスト後に行方不明。

アテル達と合流後、薄々ノーファ様の存在には気付いていたが……。

「ルフィルとは、上手くやっていますか?」

副幹であったルフィルは、私以外で王族との拝謁が許されていた唯一の騎士団員。

ノーファ様の素顔を知るのは、森の騎士団において私と彼だけ。

「気付いていると思いますが……気付いていない振りをしているのかと」

「そう……ですか」

ルフィルとの確執は、間違いなくあの日の私の指揮によるもの。

騎士団が壊滅すると半ば解っていて、私はノーファ様を逃がすことを優先した。

故・郷・へ・の・忠・義・が・薄・い・彼にとって、私の判斷はさぞ面白くなかった事だろう。

「……おまもりできず、申し訳ありません」

「……もう良いのです」

「ノーファ様?」

「私はノーファ。只のノーファ。アテル様と共に歩む、只の一人のエルフ」

その言葉はつまり……。

「私達は、した夫と共に歩く一人の。それで良いではありませんか」

「……そうですね」

同胞を化していたように、私は王族にも幻想を抱いていたのだろう。

ノーファという王が、只の一人の娘でしかないと知っていたはずなのに。

「……私と友人になってくれないか、ノーファ?」

「……喜んで、レリーフェ」

差し出した手が、優しく握られる。

ルフィルともまた、いずれこんな風に……。

●●●

「フゥー。助かったよ、ラウラ」

「どういたしまして、コセ」

部屋の隅にあった倉庫みたいな場所で、握手をわす。

日系ブラジル人のラウラにガーゴイルの隠れNPCであるメアリー、中國人のトンファー使いのユイリィ、金棒使いの戦闘狂トキコ。

そして、自稱のマサコ。

いや、だとは思ってるんだけれど、背が高いのもあってかと言われると……うーん。

ほとんど彼一人で死の群れを倒していた。彼のあの金棒はおそらく……。

「さっさと食って寢て、早めに出発しましょうよ」

ユイリィからの提案。

「この中にはモンスターはって來られないし、外側に監視カメラも付いてる。見張りは私達に任せて」

メルシュの言うとおり、倉庫には監視カメラの映像を見られる場所が。

キッチンやトイレ、バスルーム、ベッドまで完備されてるし……金持ちの道楽が半端ないな、この倉庫。

「お前ら、頼むから今日は我慢してくれよ。私らだって我慢してんだから」

ラウラの言っている意味が解らない。

「な、トキコ」

「なんで私に振るんだ、この不良娘」

あのトキコが頬を赤らめている?

「トキコはな、最近アテルとくっついたんだ」

「おい、マサコ!」

こんな照れたトキコは初めて見た。

まあ、大して付き合いは長くないっていうか、ほとんど話したことないんだけれど。

「助けて貰ったし、今日は俺達から飯を提供するよ」

「良いのかい?」

「その代わり、俺達は奧の方のベッドを使わせてくれ」

俺とトゥスカの神的消耗は激しい。

けない話だけれど、萬が一プレーヤーに仕掛けられた場合、できれば彼達に対処して貰いたい。

「コセ、今日は我慢しろと言っただろう」

「そうよ、SSランクを手にれるまでの我慢でしょう!」

「私だってキツいんだぞ! 我慢しろ!」

ラウラにユイリィにトキコまで……いったいなんなんだ?

「奧を使わせて貰いたいだけなのに、なんでそんなに反対なんだよ」

「お前達、コセは本當に奧で寢たいだけだと思うぞ?」

マサコが味方に!

「……噓だったら只じゃおかないからな」

「その時は一発毆るからね!」

「覚悟しておけよ!」

噓もクソもねーだろ! なんでこんなにけんか腰なんだよ、コイツら!

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