《ダンジョン・ザ・チョイス》727.地下エリアのテーマパーク
「起きて、リューナ」
私を起こしたのは、ツェツァ。
「もう時間か?」
「いえ、敵襲よ。モニター室のネレイスから連絡があった」
時間を確認すると、深夜の1時……予定より三時間も早く起きる羽目に。
地下空間に広がっていたテーマパーク、そこのホテルの一室フロアに泊まっていた私達。
他のパーティーメンバーを起こして水を飲み、ジャーキーを咀嚼して眠気を振り払う。
「――今、揺れたな」
「モニター室にいたコツポン達が襲われたのかも」
このホテルの監視カメラの映像を全て見られる場所に、隠れNPCであるコツポンとサカナは詰めてくれていた。
「予定通り、パーティーごとに別れてロビーに移しよう。私達は西階段から」
「私達は東階段ね」
寢る前に、奇襲をけた場合を想定し、ツェツァと二人で話し合っていたこと。
「行くぞ!」
フロア丸ごと部屋になっている六階から、西階段を通って六人で下へ。
「言うまでもないだろうが、レミーシャはクオリアの護衛を優先。ノゾミは援護。私とサンヤとヒビキで奇襲する」
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無駄に幅が広い階段を下りながら、段取りを確認。
「――止まれ」
三階まで來た所で、私達以外の気配をじ取る。
サカナ達が居るモニター室は、一階のロビー近く。ちんたらしている時間は無い。
「サンヤ、何か判るか?」
「たぶん、人間じゃないと思う。數は四。でも、その下にはもっと居るかも」
仕掛けてきたのはプレーヤーだと思っていたが、モンスターまで引き連れて來たのか?
「とっとと突破する。行くぞ」
敵の姿を視認、獰猛な“マッドハウンド”か。
「ハイパワーフリング――“散弾化”!!」
階段を転げ落ちるマッドハウンドだが、仕留めきれてはいない。
すぐに距離を詰めて首を落とす。
その間にサンヤとヒビキが先へと進み、マッドハウンドの大群と戦闘を開始。
數が多いものの、今のところ問題は無い。
「“音階”――ド・レ!!」
打撃武で、後ろから來るハウンドに対応するレミーシャ。
二階部分に相當數のマッドハウンドがり込んでいるからか、一階を目指す私達は挾撃されている形に!
「――古代魔鳥」
多様學區の依頼で手にれたという指で、クオリアが機械の黒鳥を呼び出す。
「後ろは私とレミーシャで対処します」
機械の黒鳥が、用に立ち回ってマッドハウンドを始末していく。
「頼んだ」
「リューナ、一階の數がバカげてる!」
サンヤからの切羽詰まった聲。
「私が減らします――ファイア!!」
一階と二階の間の踴り場から、二丁の“線拳銃∞”の最大火力をぶっ放すノゾミ。
階段と階段前のハウンドを一掃するも、またすぐに埋めるように集まって來る!
「一々相手している場合じゃないな」
――反対側から発音。ツェツァ達か。
「“三重魔法”、“大海魔法”――マリンウェーブ!!」
巨大な津波が、階段の前を通り過ぎていく!
「“海水作”!」
生き殘っていたマッドハウンドの顔を海水で覆い、呼吸を奪って窒息死させたのか。
「ハァー、回復したMPをだいぶ持ってかれましたですの」
「お掃除に時間掛かっちゃいましたー」
サカナとコツポンの無事な姿。遅れてツェツァ達がロビーに集合。
「乗り込んできたプレーヤーは?」
「マッドハウンドに食い殺されましたよ。おかげで時間稼ぎになりました」
シルキーのポツコンの説明。
「外にもかなりのハウンド系モンスターがいるみたいですの。このテーマパークエリアを縄張りにしてるっぽいので、早く出することを薦めますの」
「二度寢している余裕は無さそうだ。このままSSランクがある最下層まで目指そう」
「その方が良さそうね」
ツェツァの同意は得た。
「ワロース、コッラ、先行してちょうだい」
「「了解」」
燕鳥人のワロースと海獺獣人のコッラの二人が、ホテルの外へ。
「リューナ達は後ろで良いわよね?」
一瞬、クオリアに視線を向けるツェツァ。
気遣いなのかもしれないが、若干の侮蔑も含まれている気がした。
「――ツェツァ」
自然と圧がこもる。
「……悪気はないわよ」
「――構いません。ならば、私が敵を引き付けましょう」
クオリアからの申し出に、私達の方が気圧されてしまった。
「すぐに追いますので、私の事はお気になさらず――“合”」
古代魔鳥を鎧のように纏うクオリア!
そのクオリアが飛び出し、派手に戦闘をおっぱじめた!
「行くぞ、ツェツァ!」
●●●
ああいう空気には慣れてる。
むしろツェツァ様なんて、だいぶ優しい方だ。
目が見えないという一點のみで、役立たずの烙印を無意識レベルで押しつけてくる輩なんて、腐るほどいるのだから。
リューナ様とて、私のハンデを欠點だと認識しているでしょうし。
「――“一斉掃”!!」
左腕の裝から神代文字の力を流し込んだ狀態で、ミサイルやレーザーを全から発――この階層の大通りにいたハウンドを殲滅。
群れの中にいの、たぶんアイアンハウンドも混じってる。
「皆は……」
大きな階段を下りながら、下へと向かっていた。
「それなら」
階段へと集まろうとするハウンドを狙って始末しながら、一度上へと向かって引き付けようと試みる。
このテーマパークと呼ばれていた場所、何重もの階層に別れていて、複數箇所、下まで突き抜けている場所がある様子。
――上から、なにかが飛び降りてきた!?
「“古代障壁”!!」
四角い障壁を作り出し、大型の鋭利なハウンド系と思われるモンスターを――弾き飛ばす!
「“逆三暗黒宮”」
黒い槍を即座に見舞い、仕留めきる。
ハウンド達のきが……鈍くなった?
「さっきのが群れのリーダーだったのでしょうか?」
――巨大なプレッシャーに當てられる!!
「……まさか」
《ようやく、退屈せずにすみそうだ》
空中に佇む、アルファ・ドラコニアン!!
《小手調べだ!!》
突き出された掌底と連して、衝撃波が飛んでくる!
「“魔力障壁”!!」
左腕の裝、“鬱屈なるの発”に十二文字刻んで――障壁を強化!
「“悪夢魔法”――ナイトメアバットズ!! ナイトメアミスト!! “悪夢魔法”――ナイトメアフェネクス!!」
蝙蝠と霧の変幻自在な攻撃に念能力のリソースを割かせ――守りの薄いカ所から悪夢の不死鳥をぶつける!!
《……お前、強いな。俺達の能力を把握しているのか? ハハ! 戦いとはこうでなければな!!》
左腕が酷い狀態なはずなのに、覇気が衰えない!
「“化け首・四重”!!」
文字の力を込めた首だけの化けで、隙を狙う!
《“雙爪”――ハイパワースラッシュ》
アルファ・ドラコニアンが、武を使った!?
化け首が瞬く間に倒される……。
《どうした、こんなか?》
「――“一斉掃”!! “六重詠唱”――“悪夢魔法”、ナイトメアフェネクス!!」
火力と數の暴威を振る舞うも、念の壁に防がれ続けてしまう。
《ハハハハハハ!! 良いぞ! だが、それほどの攻撃、いつまで持つかな!》
――きを止められれば、それで良い!!
「――――“神代の直”!!」
出し惜しみ無しの、全力の一撃!!
「ハアハア、ハアハア、ハアハア……逃げられた」
“立知覚”で、左半が消えたアルファ・ドラコニアンの形を直前まで知覚していた。
「クオリア!!」
リューナ様と……ツェツァ様?
「すみませ……逃げられ…………」
意識が遠のいて…………。
●●●
《……ククク――“瞬間再生”》
失った半を取り戻す。
《鎧まではダメか。まあ良い》
まさか、こんな簡単に死にかけるとは。
さっき、微かにあの目隠しの名を呼んでいるのが聞こえたな。
《クオリア……クオリアだな。ククククク!》
俺を殺し掛けた、クオリア。
《良いぞ――楽しくなってきた!》
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