「だったらおみ通り、魔法を使ってあげる！　【過包囲高熱弾エクサス・ケージ・フレアボム】」

高熱に燃え盛る炎の球を多量に帝の周囲に張り巡らせた。

そして、指をパチンと弾くと同時に――

「破ブラスト！」

――の一言で、一斉にそれらが破、を起こす。

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオォォォォォッッッンンンン！！！

普通の生ならこれだけの破を喰らえば、跡形も無いはずだが……

「ふぅ……ビックリしたぞ……咄嗟に変したが、亜人形態で喰らっておれば大怪我は免れなかっただろうな」

煙が晴れて出て來たのは、火の霊形態に変した帝蟻。

「その姿になるのはズルくない？」

ちょっと時間を與え過ぎたか。設置して即座に破ならいくらかダメージを與えられたかもしれない。

「炎そのものが効かんそなたが言うことか？」

「それならこれでどう！　【石神像の連撃掌ゴーレム・ラッシュ】」

巨大ゴーレムを作り出し、パンチの連打を浴びせる。

ガンッ！ガンッ！ガンッ！ガンッ！ガンッ！ガンッ！ガンッ！ガンッ！ガンッ！ガンッ！ガンッ！

という重いパンチを浴びせるけたたましい音が響く。

「ハッハッハッハ！　なんの！　この程度では全く効かぬぞ！」

何と！　腕だけ何らかの堅そうな生の腕に変化させ、ゴーレムのパンチラッシュに自のパンチを合わせ、ゴーレムの拳がどんどん削っていく！

「な、何なのあのさ！？　魔王になるとあそこまで強靭になるの？　いち生の能力とは思えない……」

理攻撃がほぼ効かない私が言うのも変かもしれないが……

そして、ひとしきりゴーレムを破壊して満足したのか、帝の目が再びこちらに向く。

「今度はこっちから行くぞ？」

言い終わった後また目の前から消え、再び頭をワシ摑みにされた。

また髪のを持って振り回されるのかと思いきや、全が一瞬で氷に包まれた。

「お？　これなら効くのか？　ならあとはこれを壊すだけで終いじゃな」

氷像狀態となった私に、容赦なく蹴りを浴びせる。

が、氷耐Lv10の私は當然凍っておらず、氷像から蹴り出されて平原に突っ伏した。

「ぐくっ……」

もう何度地面を舐めさせられたか分からない。

「ううむ……やはりまでは凍っておらんかったか……火も効かぬ、氷でも凍らぬと、本當に訳の分からんじゃな……」

ダ、ダメだ、このままじゃ埒が明かない。

スキル【分】で手數を増やそう。手數で圧倒してやる！

『分』を作り出し、戦線に加える。

「おお！　そなたは本當に退屈させぬじゃな！」

『真剣斬まじきり丸Ver.3』を作って分に放り投げて渡す。

「二人同時の剣戟はどうかしらね？」

【次元歩行ディメンション・ウォーク】を使い、帝蟻の後ろへ瞬間移。

そして背後からへの不意打ちの一閃。

「うおっ！？」

と驚かれながらも、小ジャンプして半回転して避けられた……

何でこんなに勘が良いの！　全然當たらん！

上手い合に前後に挾み撃ちになったため、前と後ろから刀による撃。

前後からの二人同時に攻撃しているのだが、一人の時と比べれば楽々ではなかったものの、それでも余裕を持って避けられてしまう。

が、『カスッ！』、『カスッ！』と僅かながらかすり傷を負わせる音がしてきた。徐々に當たるようになってきてるらしい。

帝が避けながら逃げるのを、追う形で更に追撃を続ける。

「ぬうぅ……いい加減鬱陶しい！」

帝が一度著地して大ジャンプ、上空から広範囲への竜巻攻撃を放つ。分共々上空へ巻き上げられてしまった。

しかも、この竜巻により、かすり傷を負わせられ分も傷を負って弾けて水となって消えた。

私の分は、通常の魔法では消えることが無いくらい耐久力が高いはずだが、帝の風屬Lv11により簡単に防能を破壊してしまったらしい。

「ヤ、ヤバイヤバイ、再度【分】を発しないと！　傷を負ったことがバレたら、風魔法の特質に気付かれてしまう！」

上空に飛ばされている間に、【分】の再発と自が負ったかすり傷を治すための【自己再生魔法リジェネレート】をかけ、瞬時に傷を癒す。

そして再発した分と同時に地面に著地。

それと同時に帝蟻が巨巖を放ってきたため、風魔法で切れ味を増した『真剣斬まじきり丸』で斬り飛ばし、更に接近する。

「【影縛りシャドウ・バインド】」

「ぬっ！？」

斬り飛ばした巖石の欠片を目隠しにし、帝を影のツタで縛り上げた。魔王相手では一時しのぎにしかならないが、しの間だけ、數秒だけでも行を制限するのが目的だ。

そして二人で魔力を練り上げ、極大の火魔法を放つ。

「「【二つの灼熱照砲ツイン・フレアレーザー】」」

分と同時に放つ二つの炎のレーザー。

以前、フレアハルトの【インフェルノ・ブレス】を押し返した魔法。 （第42話參照）

しかも今回は二人分だ。事前に闇魔法で縛り上げているし、直撃すればいくら魔王と言えどただでは済まないはず。

「くそ！　変が間に合わん！　ぐわぁぁぁぁ……！！」

帝は炎のレーザーに押され、この場から消え去った。

眼前には【灼熱照砲フレアレーザー】で地がドロドロに溶け、舊約聖書のモーセの海割りのような形に抉えぐられた地面。

近くに魔力はじられない。遠いところまで飛んで行ったか、消し炭になって消えたか。

死んでくれているのが一番ありがたいが……

「やったかな？」

「分からない……いずれにしてもしばらく警戒は解かない方が良さそう」

腕傷付けただけで、ブチギレた帝だ。今度は炎の直撃を喰らってるのだからブチギレどころでは済まないかもしれない。

帝蟻が視界に見えないとほんのし気が緩んだところ突然、強い突風が吹いた。

そして次の瞬間、分が割れて水になって消え、その突風に乗って“誰かの腕”が後方へ飛んで行くのが見えた。

「…………えっ？」

それを目にした直後、左腕に灼熱を當てたような熱さと痛みが広がる。

恐る恐る左下に目を向けると、肘の下辺りから先が無かった！

「ガッッアアアァァァァッッッ！！！」

視認した直後に激痛が脳に伝わる覚を味わった。

い、痛い！　魔界に來て味わったこともないような強い痛みだ！

ひ、左腕が！　左腕が切斷された！

そして一瞬で急激な気分の悪さを覚え、吐き気を催す。そして冷や汗が大量に出てきた！

左肘付近を強く押さえたまま痛みで一歩もけない！

「ほう……やはりそなたを殺せるのはこの風の魔法か。さっき一瞬だが竜巻で分が消えるのを見ておったぞ。分が消えたからもしやと思ったが……鋭い風が苦手なのだな」

私の後ろに帝が立っていた。

「な、何で……周りに気配は無かったのに……」

あ、あんな遠くまで飛ばされて、一瞬消えただけの分を見ていたのか……

それよりどうやって気配も無く私の背後に……？

「答えを教えてやろう。実はなもっと素早くける形態があるのだ。それでそなたに気付かれる前に切り裂いた、それだけのことよ」

エ、エルフ形態より速いきができる形態があるってこと……？

「全く恐ろしいことをしてくれる。全力でけ流さねば死んでおったわ。左手が消し炭になってしまったではないか」

見れば確かに左手が炭化して無くなっている。

しかし……再び火の霊の姿になり、傷は完全に治癒する。

「さて、そなたに効く攻撃が分かった今、ここからは処刑の時間じゃな」

「うぅ……」

左手からの出の所為か、凄い勢いでが冷えるのが分かる。同時にだるさを覚え、きが鈍くなるのをじた。

「【分】！」

再び『分』を出現させるも――

風の刃の一撃で消滅。

「くそっ！」

ならばと、右手に炎の魔力を溜める仕草を見せた瞬間、今度は右腕を切り裂かれた。

「キャアアァァッッッ！！」

それと同時に両を切り裂かれ、草原に勢いよく倒れ込んだ。

「うああああぁぁ……」

み、右手が、あ、腳が……が……がどんどん冷えていく……

「ふむ……流石にもう終わりか？　四肢を破壊されてしまえばな」

「うう……」

四肢全てに深手を負わされてしまった……左腕はどこかへ飛んで行った。右手は指はかせるから辛うじて神経は繋がってるらしい。でも指以外はかせないからこの手ではもう回復魔法がかけられない……

両足は切斷はされてないけど傷が深く大量に出している……今の狀態ではもうけそうもない……このまま時間が経過すればトドメを刺されなくても失死……

もう萬事休すか……

「さて、そなたを殺そうと思うのだが、最後にもう一度聞いておこう。わらわの下に付く気は無いか？　僕しもべになると言うなら傷を回復してやるぞ？」

けない私にとって本當の本當に最後の質問なのだろう。

しかし――

「な、無い……」

『あなたたちが亜人を食料としてしか見てないなら、私が折れることはあり得ない』

そこまで言いたかったが、もう聲を出す気力が無かった……

「そうか……面白い生だったが殘念だ……名前を名乗れ。せめてわらわの記憶に刻んでおいてやろう」

「…………アルトラ……」

「そうか、ではアルトラ、これで終いだな。そなたのはくて食べられそうもないが、食べられそうなところはきちんといただく、安心して仏するが良よい」

風を纏まとった刃のように変化させた腕が振り上げられる。

「本當に最期だ、何か言い殘すことはあるか？」

「………………」

「もはやしゃべる気力も無いか……ではさらばだ！」

そして、風の刃が振り下ろされる――

アルトラが負ったかつてないダメージ！

次回は7月8日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

第486話【絶の中訪れた希】

次話は來週の月曜日投稿予定です。