《ダンジョン・ザ・チョイス》733.黒人侍のメイベル

「つ、疲れた」

ハユタタさんが弱音を吐いてる。

「さすがに、四方八方から狙われたらツグミ頼りってわけにはいかないか。ていうか、ロボット系って“即死”効かないの?」

ネロさんがシレイアさんに尋ねる。

「“アイアンバリエーションズ”には効かないね」

「じゃ、この指は要らないか。オールセット2」

メリットが無くなったと判斷したからか、“死の宣告の指”を外してデメリットを取り除くネロさん。

「ネロ、あんたって刀使えるの?」

腰に現れた武を見て尋ねるハユタタさん。

「昔はこれメインで戦ってたから」

「フーン」

「そろそろ行くよ」

皆を先導し、先へと進む。

「大きな部屋……」

橫幅も上下も、數十メートルはある四角い部屋。

「また來たし!」

“アイアンバリエーションズ”が次々とってくる!

「もうしでSSランクのある部屋なのに、コイツら!」

セリーヌさんが、またお口悪々に。

「――“獅子支配”!!」

のオーラが獅子を型取り――“アイアンバリエーションズ”を引き裂いて、噛み砕いていく!?

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「この能力、SSランクの“レグルス・アウルム”」

「じゃあ、近くにSSランク使いが居るんだ――」

シレイアさんの報に、ユイさんが靜かに濃な殺気を垂れ流し始めた。

「おいおい、私を殺す気かよ!」

すぐ傍に飛び降りてきたのは、大きな金の鉤爪を持つ虎の獣人――タイシュさん!

「あんた、SSランク持ちだったの?」

「態度がデケー人魚だな」

「あんたに言われたくないし」

何故か喧嘩腰になるハユタタさんとタイシュさんの二人。

「おーい、落ち著け、タイシュ」

部屋の角に設置されていた階段を下りてきたのは、白い足が特徴的な黒人の、このパーティーのリーダーであるメイベルさん。

「お、このエリアに居たのはツグミ達だったかニャ~」

「良かった、同盟相手のパーティーは居ないのかと」

「…………」

メイベルさんに続いて、彼の隠れNPCであるバステトのムイナさん、エルフのラフォルさん、金の竜の面を付けた魔導師風のが現れる。

「そちらの面の方は?」

こんな煌びやか白いローブを著た人、以前の集まりで見た覚えが無い。

「……メイベル」

「コイツはナナコ、異世界人だ。この前の集まりには參加したがらなくてな」

代わりにメイベルさんが説明。

「お前ら、食っちゃべってる場合じゃないぞ!」

セリーヌさんの言葉を肯定するように、“アイアンバリエーションズ”が再び突してきた!

「私がやろう。武換――“八百尺大太刀”」

メイベルさんが、バカでかい日本刀に持ち替えた!?

「それ……八百尺もある?」

「あるわけないだろう、マスター。実際には二十四メートルちょいだよ」

「ああ、十分の一なんだ」

ユイさんとシレイアさん、隨分と吞気な會話を。

「“舌先三寸”――私は強い! 最強のスーパーパワー! スーパーハイパーゴッド!!」

「メイベルさんはなにをしてるんですか?」

廚二病みたいな言がさすがに気になって、隠れNPCのムイナさんに尋ねてしまう。

「ユニークスキル、“舌先三寸子”。適當なこと言うと能力値が上昇するんだニャ~」

「ゲームのシステムに全然合ってないから、観測者側がいい加減に用意したんだろうね~」

ムイナさんの話を、補足してくれるシレイアさん。

「じゃあ、今は筋力を上げてるって事ですか?」

さっきからパワーパワー、連呼してるし。

「そうなんですよ。言えば言うほど強くなれるらしくて」

ラフォルさんが苦笑い。

「持続時間が短い分、上昇値は理論上無限か。破格の能なのか外れ能力なのか、イマイチ判斷に困るね」

シレイアさんの評価が割と辛辣。

「――紫電一閃!!」

新たに出現したロボット四を、メイベルさんが一撃で両斷して見せた!

「これぞ、ザ・サムライの一撃!」

「いや、違うから」

いつものほほんとしているユイさんの聲が、とても冷ややか。

「あれ、あんまりサムライっぽく無かった?」

「メイベルさんは侍が好きなんですか?」

「そうなんだよ! まあ、サムライに憧れた切っ掛けを思い出すと、今でも苦い気分になるんだけれどさ」

「苦い気分?」

「メイベルは、サムライのルーツが黒人ていう、黒人記者が書いて広めたフェイクニュースを信じて憧れたらしい」

無口だったナナコさんが、背後で急に喋りだした!?

「ふぇ、フェイクニュース?」

「今もだろうけれど、當時はなんでも黒人を組み込もうとするポリコレ勢力が猛威を振るっていたから」

「ああ、ゲームキャラを不細工にしたり、デブを無理に容認させようとしたり、リメイク作品でわざわざ黒人を起用したりするアレ?」

急に早口になったユイさん。

「差別をけ続けた反なのか何か知らないが、侍ブームに乗っかって、昔の日本に居たヤスケって黒人を侍に仕立て上げて、正史扱いしだしたりな」

「メイベルだって、日本に來るまで信じてた口でしょ? ヤスケは日本人なら誰もが知る人気者だって」

「……黒歴史だから思い出させないでくれ」

この二人、仲が良いんだ。

「おい、さっさとSSランク回収しないと、また敵が來るかもしれねーだろ。とっとと行こう……ぜ」

虎獣人のタイシュさんの視線が、部屋の奧へと注がれる。

解る――奧から、何か危険なが來る!

だけの集団……ケンシという名のレギオンメンバーか』

『つまり、當たりを引いたな』

現れたのは、トカゲ人間型のロボット。

「アルファ・ドラコニアン・アバター。それも二か」

「メイベルさんは知ってるんですか?」

「大規模突発クエストで戦ったからな。気を付けろよ、奴等はアルファ・ドラコニアンと同じ能力を使ってくる」

よりは念能力が抑えられているってリンピョンさんから聞いたことありますけど、そもそも私はアルファ・ドラコニアンと遭遇したことが無い。

「常に神代文字を刻んで、力をに纏う。きを止められたら、神代文字の力を炸裂させてすぐに拘束から逃れて」

ユイさんの口調がマジだ。

「対応が遅れたら――その分だけ死が急速に迫ると思った方が良い」

あのユイさんですら、余裕が無い相手なんだ。

「それぞれのパーティーで一ずつ、で良いか?」

メイベルさんの顔からも、張が窺える。

「解りました。私がメインで攻めるので、皆はサポートを」

誰もが口を揃え、強敵認定する相手。

いったい、どれほどの力をめているのか。

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