「これは驚いた……」

この場に現れたのは合計で五の鬼人と人間が一人だった。そしてソフィはこの場に現れた者達の中から二人の存在に素直に驚くのだった。

何故ならその二人とソフィは、面識があったからである。

しかし更にその二人の存在の、の鬼人の方にソフィは視線を固定させられた。

その面識ある二人組のの一とは、加護の森で最初に出會った特別退魔士の『タクシン』が『式』にしていた妖魔の『忍鬼どうにんき』と呼ばれる鬼人のである。

――そしてソフィはずっとこのの事を気に掛けていたのであった。

ヌーがタクシンの『式』であった忍鬼の契約を解除させた後、彼はソフィと別れた後にこれまでの清算をお行うつもりで『妖魔召士』組織に報復を行おうとしていたのだが、それを止めたのがソフィだったのである。

その時のソフィは、このままでは折角自由のとなれた彼が、黒いに支配されたままでこの世を去ってしまうと予見した為、それを阻止するためにあえて『報復をするのならば、それに見合った力をにつけてからにする事だ』と告げたのである。

確かに彼のの安全を考えるならば、ソフィの発言に問題はない筈だった。

――だが、その黒いの本質は、決して他者がとやかく言えるような容ではなく、誰よりもアレルバレルの世界で『報復の価値』というものを分かっている筈の自分が、気安い言葉で彼の覚悟を無礙にさせてしまったのではないかと、この世界で旅をしたことにより改めて理解して発言に後悔を行っていたのである。

再びこうして再會することがあれば、あの時の一件を改めて謝罪したいと考えていたソフィだった。

そんなソフィを見た忍鬼もまた驚いた表を浮かべたが、その後に儚げな笑みを向けたかと思うと軽く頭を下げたのであった。

そしてソフィはその忍鬼の笑みを見て、酷く心を打たれたのだった――。

…………

忍鬼は集落で報告を聞いた後、妖魔召士に『式』にされているのが『百鬼』だと知り、イバキの事もあって自分もこの妖魔召士達の元に向かおうと決意をしていたが、まさかその妖魔召士達の元にソフィの存在が居るとは思わなかった為に最初はびっくりしたが、何やら思い詰めた様子の彼の目を見た事で、何故かは分からないが彼は『一刻も早く彼に笑って見せなければいけない』と思わされて笑顔を作り向けたのだった。

単なる笑み一つ、されどソフィにとってはその忍鬼の見せた笑みによって、彼が思い悩んでいた後悔や、その他もろもろのが瓦解して、彼の神の底部分にある、とあるが負から正へとフラットに戻される覚を覚えさせられて、ソフィはほっとをなでおろすのだった。

――この忍鬼のソフィを見た時に笑みを見せなければ。という咄嗟に思いついた行で、本當の意味でソフィは後悔による彼に対する不安が、綺麗さっぱりと取り除かれたのだった。

ソフィはこの経験を経た事でまた一つ心が強くなった事だろう――。

――そしてそれこそは彼が新たな『覚』を形すると共に、大魔王ソフィの揺るぎない神に決してなくない経験値が上乗せされた瞬間であった。

…………

「忍鬼！！」

そしてその鬼人のが見せた儚げな笑みには、百鬼のをも揺さぶる効力があったようだ。百鬼は涙を目に溜めながら、自分が探していた同胞を両手で必死に抱きしめるのだった。

「な、百鬼兄さん……！」

「無事だったのだな！　本當によかった……！」

忍鬼はいきなりに抱き著かれた為に再び驚きの表を浮かべていたが、直ぐにその百鬼の涙と溫かい手に彼もまた涙を流して再會を喜んだのであった。

その場に居た周りの者達は、まだ完全に両者側に警戒を解いたわけではなかったが、集落側の忍鬼と、人間の里の方から山を登ってきた百鬼の両者が再會に涙を流しながら喜んでいる様子を見て、雙方ともに當初程の殺気などは薄れ始めていくのだった。

やがて忍鬼達の姿を見て嬉しそうにしていたイバキが、ソフィ達の方に視線を向けたかと思うと、ゆっくりと近づいてくるのであった。