《ダンジョン・ザ・チョイス》741.日高見のケンシの切り札
隠れNPCシャドウを倒しつつ、三パーティーで進む私達。
「クマムちゃん、アレって……」
最深部手前の場所にて、赤い筋の死骸を発見。
「十中八九、アルファ・ドラコニアンの死ですね」
死が消えない、今回のクエストならではの報源。
「プレーヤーの死は、見當たらないね~」
軍帽のツバを押し上げながら、指摘するヒフミさん。
「他に痕らしい痕も無い……これって」
レイナさんも気付いたみたい。
「この先に、アルファ・ドラコニアンを圧倒できるプレーヤー達が居るかもしれない。という事ですね」
言い辛い事を斷定するエレジーさん。
「急ぎましょう。最大限の警戒をしつつ」
部屋を出て、長い階段を下りていくと……SSランクがある最後の部屋手前のスペースに、灰のコートを來た男子と、フリルいっぱいのドレスを著たフェアリーを発見。
「來たわよ、フウカ」
「うるさいトカゲ人間を倒して、ようやく休めると思ってたのに」
「つべこべ言ってないで、迎え撃つわよ! 裝備セット1」
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金髪ロングのフェアリーのの子の右腕に、不釣り合いな……メタリックな機械腕?
「“重機支配”」
機械のガントレットのマニピュレータ部分が消え、ローラーになった!?
「支配って、まさかっす?」
「SSランク……」
猿獣人のハヌマーさんと、フェアリーのビビンさんの聲。
「彼のSSランクは、“ヘビー・エクイップメント・アームズ”。そして、隣の異世界人が著ているのは、SSランクの“コマンダーロードコート”」
シノビのサザンカさんからの報。
「にしても、なんでSSランク使いが二人だけでここに居るんだ余――」
『8番エリアのSSランクが回収されたのを確認しました。よって、現在8番エリアに居る皆様は第三回大規模突発クエストをクリア。依頼達です』
「――遅かった!」
「フー、危ない危ない」
「運が良かったわね、あんたたち」
私達のがに変わりだす。
「案外、運が良かったのは僕達の方だったかもよ」
「本気で言ってんの、フウカ? 私達は《聖王騎士団》なのよ?」
《聖王騎士団》……確か、攻略最前線で最大規模とされているレギオン。
「僕は違うから」
「判ってるわよ! 私のパーティーの話をし――」
彼達の會話の途中で、私の視界はに包まれた。
●●●
《ようやく次が來たか》
最後の部屋のり口から見たは、だらけのアルファ・ドラコニアンと、プレーヤーだったの死が……おそらく八。
狀態が酷過ぎて、実際の數を正確に予測するのは無理だな。
「どうする、ジュリーちゃん?」
サキお姉さんに尋ねられる。
「……」
背後を気にせず戦うためにも、片方のパーティーが戦って片方のパーティーが見張りをするのがベストだけれど……私のパーティーメンバーでアルファ・ドラコニアンと戦えるのは、私とクレーレだけなうえ、クレーレは大怪我してから調が萬全とは言えない狀況。
「アルファ・ドラコニアンは、サキ姉さん達に――」
背後から戦闘音!?
「プレーヤーがアイアンバリエーションズと戦闘を始めたようだ。ちなみに、プレーヤーが優勢なうえに數が多い」
スゥーシャの姉、キジナからの報。
「……私とサキお姉さんで、アルファ・ドラコニアンを倒す。皆には時間稼ぎをお願いします」
「仕方ないな。急げよ」
キジナから、なぜか信頼のある視線を送られる。
「ごめん、ジュリー姉……」
不調のせいか、気を落としやすくなっている様子のクレーレ。
「貴が居てくれて良かったって、本気で思ってる」
彼の頭を、自然とでていた。
「……ジュリー姉、お母さんみたい」
嬉しそうなクレーレ。
「そっか」
言われてみて初めて、自分の行が母にして貰った行そのだと気付く。
「フフ……行きましょうか、ジュリーちゃん」
「はい」
サキお姉さんと共に、大きな白い部屋へ。
《り口でコソコソしていると思えば、たった二人で俺と戦うつもりか?》
「そう思うなら、なんで部屋を出て仕掛けて來なかったのかしら?」
サキお姉さんの指摘。
《お前達は、SSランクとかいう武を持っているのか?》
質問に質問で返すのか。
「持っていないと言ったら?」
《チ! 使えない事に気付いて、慌てふためく様が見たかったんだがな~》
悪趣味な奴。
「なるほど。SSランクを相手にするのが恐くて、大人しく引きこもっていたと」
《なんだと!》
サキお姉さんの安い挑発に……。
「時間を掛けていられない――裝備セット2」
“レギオン・カウンターフィット”の贋作をこの手に。
できれば他レギオンには曬したくなかった、私達のレギオンの兵。
「聞き屆けよ――“雄偉なる明星は救済を願いて”!!」
私とコセの錬剣を顕現し、十二文字刻む!!
「“隨伴の天雷”!!」
天雷を自在にり、全方位から襲わせる!
……半球狀のバリアで防がれてるな。
「SSランクが使えないはずの場所で、SSランクみたいな剣を使う……良いが見られたわ」
サキお姉さんはさすが。
「あの……」
「代わりに、私達《日高見のケンシ》の切り札を見せてあげる――“アラハバキ”」
サキお姉さんが、カムイのような黒灰のオーラを纏った?
「なに、それ?」
「クエスト報酬で、ある程度自由にユニークスキルを作れるを手にれたの。それをアテルが変質させたのが、この“アラハバキ”。カムイのTP版ね」
カムイがMPを消費するのに対し、“アラハバキ”はTPか。
「更にこの“アラハバキ”は――私・達・に擬似的なSSランクの力を齎す!」
黒灰のオーラを槍とし、アルファ・ドラコニアンの半球狀のバリアを突き破って脇腹を抉った!?
あの能、発中TPを消費するのを除けば、SSランクの支配能力そのもの。
「このオーラは防にも使える。だから、思いっきりやっちゃって良いわよ、ジュリーちゃん!」
手のを曬せって言われている気がする――ま、いっか。
他のエリアにもアルファ・ドラコニアンが居るなら、十中八九、錬剣を使っているだろうし。
「しょうがない――[サンダーズバーン]!!」
“隨伴の天雷”を錬剣に纏わせ、神すら殺す天雷の刃とす!
「“明星の翼”!」
“明星の使いの絶”の推力を利用し、高速突撃!!
《貴様らぁ!!》
掌底からの衝撃波を、正面から切り裂く!
――空気が焼き焦げる匂い。
「“天雷大地剣”――サンダーヘブングランドプリック!!」
神代の力を炸裂させる事で不可視の力を突き破り、へと突き刺す!
《グゥ――“手榴弾”》
コイツ、“手榴弾の指”を持って!?
「――させないわ」
放られた“手榴弾”をオーラで弾き飛ばし、ドラコニアンの背後で発させてくれるサキお姉さん!
更に黒い翼と大刀、杖にまで神代文字を纏わせ、共振させている!?
「“神代の大刀”」
《させるか!!》
「――[萬雷花]!!」
突き刺している刀から、直接天雷を流し込んできを阻害!
「“瞬間再生”は使わせない――“斷罪斬り”!!」
《ふざけ――》
アルファ・ドラコニアンの――首が飛んだ。
同時に一気に天雷を流し込み、を炭化させる。
《“瞬間再――》
「使わせないって言ったでしょう――パワースラッシュ」
姉さんがオーラで生首を拘束し――容赦なく真っ二つにした。
「フー。まさか、こんなに簡単に倒せるとは思わなかったわ」
「急ごう、サキ姉さん」
二人で、すでに亀裂がっていた壁に攻撃し続ける。
『12番エリアのSSランクが回収されたのを確認しました。よって、現在12番エリアに居る皆様は第三回大規模突発クエストをクリア。依頼達です』
壁の向こう側にあった灰の機械翼を回収し、私達は無事に地下施設から帰還した。
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