戦闘開始直後、レヴィの周囲に複數の水滴が出現。

一呼吸ののち、その水滴は槍のように鋭く尖り、次々と帝蟻を強襲！

そのの一本を慌ててをひねって躱かわした。

水だからと多甘く考えていたようだが、その水とは思えない鋭さに回避を選んだようだった。

帝が沢山の水の槍に突かれ回避に徹する中、私はその一本の水の槍が刺さった場所を見てまたも驚愕してしまった。

刺さった場所に真円に近いが開いており、とても水が當たったとは思えないものだったからだ。これは水が“刺さった”と形容した方が良いくらいの鋭さで地面にを開けたようだった。

「こ、これって……本當に水の能力なの？　実は氷なんじゃ……？」

水の槍をかいくぐり、今度は帝の放つ風の刃で、レヴィの視界の外側からその巨大なに縦橫複數の凄まじい長さの裂傷を刻み付ける！

「痛たぁっ！」

長さにして五メートル以上裂けているように見えた。

が、瞬時に回復して元通り。

更に再び巨大な狼の幻影が出現し、レヴィのを食いちぎるが、それも瞬時に回復する。

「痛たたた……回復するって言っても、傷付けば痛いんだからね！」

レヴィがを反転させて尾で薙ぎ払うが、帝はそれをジャンプして避けた。

「ナ、何ダきさまノハ！　ヲ食イちぎってルンだぞ！　何デすぐに再生すルのだ！？」

「蛇は再生の象徴だから、この姿の私って回復能力が凄いのよね～。真なる魔王二人相手にたった一人で勝てるとは思わないでね」

帝蟻が著地した直後、レヴィの額付近から水のレーザーが縦一直線に放たれ、帝の右腕二本と変によって背中に生えた羽の一部が切斷された！

「ぐっ……！！」

そのままをも切斷しようと追尾するものの、素早く移して逃れる帝。水のレーザーが直撃した巖や地面は斷裂になるほど深く大きい傷跡が殘っていた。

「す、凄い水圧カッター……」

私がブルーソーンからけたものとは比べにならない…… （第325話參照）

さっきの水の槍も水圧のカッターも、もう全ての魔法の次元が違う……

しかし、帝の方も切斷された右腕が瞬時に再生。

雙方共に凄い早さの再生能力だ……確かにこれは決定的なダメージを與えない限り、戦いが終わりそうもない。

「ん？」

カイベルに抱えてもらってるためか、周囲を見渡す余裕が出て來たため、見回してみるとそこかしこにさっきの狼の頭のような幻影が出現し、地面や木々などを食い荒らしているのが目に映った。

「な、何アレ？　何でレヴィたちへの攻撃でもないのに別のところを食ってるの……？」

あれが魔王回帰レグレシオンした『暴食』の魔王の固有能力か？

無意識の発なのか？

「どうやらアレらが地面や周囲の木々を食い荒らして魔素として吸収し、自に還元することで再生力の促進や魔力の補充をしているようですね」

「魔王回帰レグレシオンして再生力が上がりしてるのに、そこに更にブーストがかかってるってこと！？」

「はい」

「それってほぼ不死も同然なんじゃ……？」

「だからこそお二方は帝に再生が追い付かないような決定打を與えるタイミングを探っているのでしょう」

カイベルとそうこう話していると、突然レヴィのが膨らんだ。

そして、凄まじい火力の炎を吐き出す。

「水の魔王が炎！？」

帝が居た辺りの平原が炎に包まれ、それを避けるために大きく跳躍する帝。

見計らっていたかのように、尾で毆り飛ばす。

帝は風切り音を放ちながら最も近くの山の方へ飛んで行き、し時間が経ってから山に激突した“らしき”砂煙を上げた。

「あわわわわ……」

その尾の持つ筋力にまたも驚愕。

山まで一何キロあるか分からないが、あんなところまで毆り飛ばすなんて……

でも、あんなに遠くまで毆り飛ばしたら、逃げられちゃうんじゃ？　わざわざ魔王二人が待ってるところへ戻って來ない気がするが……大丈夫だろうか？

そう思っていたらレヴィが更に追撃する。

どこから出したのか背中の方から大量のミサイルを放った！

「ミサイル！？　どういうこと！？　一何の能力！？」

ミサイルは帝蟻が激突した辺りに著弾し、山の上三分の一程度を吹き飛ばした。

じょ、帝蟻がいない今のうちに聞いてみたら説明してくれるかしら？

「レ、レヴィ、今の何の能力？　明らかに機械みたいなものが飛んでったけど……」

「あ～あれは……あまり他人に言うものではないけど、まあベルゼなら良いか。あれはこの姿の時だけ使える【夢見るドリーマー子供たち・チルドレン】って能力。私の自発型の能力【駄々っ子スポイル・チャイルド】の対となっている能力で、この目で見てしでも嫉妬して『しい！』って思わせたものを再現する能力みたいだね。例えばこういうのとか」

（※駄々っ子スポイル・チャイルド：初期から読んでくれてる方にお知らせです。能力名が一部変わっています。詳細は第55話と本項の後書きをご覧ください）

目の前に突然ドーナツやケーキの乗ったテーブルが出現した。

「これも嫉妬して『しい』って考えた時の記憶で再現されてるみたい。エレアースモで食べたものなんだけど、すぐにお菓子職人に再現させたよ。食べて良いよ、傷を癒すのにエネルギー補給は必要でしょ？」

「コレ食べられるの！？　幻影じゃないの！？」

「この姿になってる間だけ実化する。味もその當時の記憶と同じだから味しいはずよ」

創魔法に似た能力だ。

“夢想したものが再現できる”から『夢見る子供たち』なのか。

「じゃあミサイルを見たことがあるってこと？」

今まで各國に行ったが、この世界にそこまで軍事力が高そうな國は無かったが……

もしかして土の國や氷の國は機械的な軍事力が高いのか？

「確かに魔界には魔法があるから兵はあまり発展してないしね。亡者の人から聞いて、絵に描いて再現してもらったから知識としては知ってるんだ。能やフォルムがカッコ良かったものだから『しい』って思ったのかもね」

絵で見ただけで再現できるのか！？

「それって、絶対ダメージけない防裝置とかも絵に描いたら再現できるんじゃない？」

「殘念だけどそんな便利な能力じゃないよ。記録されるトリガーが私の抱く“嫉妬”だから、『しい』と思う前に嫉妬しないといけない。だから現実味の無いものは無理なのよね。ミサイルの場合は『こんなが地球にはあるのか！』ところと、『著弾したら発する』っていう明確な現象が想像できるから絵で見ただけでも嫉妬のが芽生えたのかもしれない。だからさっき飛んで行ったミサイルを分解しても多分機構は全然違ってると思う」

やっぱり創魔法と似てるな……

「あ、帰って來たよ」

帝蟻がスパークしながら超スピードで帰って來た。帰って來たと言うよりは……何だか山側からぶっ飛ばされてきたようにも見えるが……

そして地表にけも取らずに“著弾”。

あとからアスモが追いかけてきた。

「……を隠そうとしたから向こうから蹴り飛ばしてきた……」

「フォローありがと」

超スピードを誇るアスモが居たから、遠くまで毆り飛ばしても大丈夫と思ったわけか。

しかし、その傷もしの時間でどんどん再生していく。

「オノれ……図に乗るナよ、亜人どモがああぁァあぁァ！！！」

凄い威圧……その聲の大きさに慌てて耳を塞ぐ。

「う、うるさっ……」

先ほどまでの古風なしゃべり方はどこへやら。今はアリの顔をしているからか言葉は片言になり、言葉遣いは暴になってきている。

帝は自の両手に魔力を何重にも集め、強力な振波を放った。

激しく地面が波打つ。

「う……」

何だこれ……ただの振じゃないのか？　痛い……が側から軋むように痛い覚だ……

私が痛いってことは、風魔法の一種か。

他の二人もをめてうずくまっている。

「喰ラえ……」

帝は更に風を集め、今度はその風に炎を混ぜて、巨大な火炎旋風を巻き起こした！

「うわぁぁーー！！」

凄い熱さだ……Lv11である風屬に火屬が混ぜられたから、火によるダメージも私に効果があるみたいだ！

しかもこの炎、切れ味も鋭い！　斬られたところが火傷した狀態になる！

「二人とも私の後ろへ隠れて！」

レヴィがその巨を盾とし、水流をって防熱のを全面に展開、その後巨大な水流弾によって火炎旋風を打ち消した。

しかし、刃のごとき炎の風により、薄い青をしたレヴィのウロコは焦げて煤すすけ、中に火傷を伴った裂傷が起こっている。

広範囲を火傷してしまったようで、再生に多時間がかかっているようだ。

「う……これはちょっと再生に時間がかかるかも……」

水で消し去る前にけた火傷により、レヴィから蒸気が立ち上る。どうやら蒸発させる時に一緒に熱湯も被ってしまったようだ。

「ハハハハハ！　焼き蛇とはいかなかったか。もう一発クれてやロウぞ！」

再び両手に風の魔力が集まり始めた。

が――

「うっ！　何ダ！？　足ガ……沈ム！？　何をシた！？」

突然土や砂が巻き上がり、まるで地面自が帝を攻撃しているかのようなきをし始めた。

「グッ……砂ガ目に……！！　砂が纏まとわり付く！　何だコレは！？」

更に地面から砂が盛り上がったかと思えば、地面に引きずり込み、どんどん拘束範囲を広げていく。

自に起きた異常事態に、集めていた風の魔力は中斷されて霧散。

その隙を見計らったように、アスモが帝に向かってぶ！

「【渦ヴォルテックス・雷サンダーストーム】！」

蒸発したレヴィの水分を巻き込み、水が渦狀に変貌。その中を激しい雷が通り抜ける！

「グワアァァァァ！！」

帝はまたも全から電気をほとばしらせてきが停止。

気絶して、そのまま流砂に引きずり込まれるかのように地面へと飲み込まれていく。

「な、何で地面に沈んで行くの……？」

「どうやらアスモデウス様の能力のようですね」

カイベルがそれに気付くと、アスモがそれに応答するように説明してくれた。

「……そう……私の【自然を魅了する者エンチャンツ・ネイチャー】って能力……その名の通り、自然環境が私に味方してくれる……さっき帝が私たちに火炎旋風で攻撃したことで、帝を『私』の敵とみなしたみたい……」

自然が味方する！？

真の『』の魔王は自然環境すら魅了してしまうのか……

「……ここに火山とかが無かったのが幸いだった……もし火山があれば大噴火して、溶巖が帝に向かって降り注いでいたかも……」

怖っ！

「自然環境って言うなら、空気とか酸素が帝から逃げて行ったりはしないの？」

「……さあ？　そこまでは私にも分からない……空気や酸素は気難しいのかも……そもそも自然環境なんて意思を持ってるかどうかさえ分からないから魅了されてるかどうかなんて分からないし……」

これも自発型なのか。

自然環境が魔力と意思を持ったことで生まれた霊とは違って、魔王回帰レグレシオン狀態のアスモの能力が干渉しているのは自然環境そのものだから意思の有無なんか分からないってことか。

それに『味方してくれてる』ってだけで、ってるってわけではないみたいだから、空気や酸素をって敵を窒息させようとか、そういうことはできないわけね。

「帝、地面に沈んで行っちゃったけど……これで終わったのかな？」

「……魔王回帰レグレシオンした魔王があの程度で終わるはずがない……きっちりトドメを刺さないと……」

「地中で窒息とか」

「……しないと思う……元々地中にいる生だし……」

問答していたところ、火傷してうずくまっていたレヴィがこちらへ近付いて來た。

「ごめんね、もう回復できたから大丈夫！」

「……アイツも相當疲れが來てると思う……傷は完全に回復してても疲れとか心労とか焦りや恐怖心はそうは行かないから……」

一人の魔王ですら一國の軍隊や騎士団に相當する戦力なのに、それを二人相手にするとなるとその張は計り知れない。確かに相手にとってここが限界點なのかもしれない。

あちらは絶対的に勝てないと分かっていても退くことをしない。王としてのプライドがそうさせているのか。

「……もうししたら気絶から覚めて土の中から出てくると思う……次にダメージを與えた時に大技決めよう……」

「ＯＫ、じゃあカイベル、手筈通り隔離空間の準備をお願いね」

「了解しました」

2023/03/11に第55話で

レヴィアタンの大罪スキルの名前を『嫉妬エンヴィー』から『駄々っ子スポイルチャイルド』に、

ベルゼビュートの大罪スキルの名前を『暴食グラトニー』から『食べ奪うスキルイーター』に、

ヴェルフェゴールの大罪スキルの名前を『怠惰スロウス』から『真価の眠りスリープオールマイティ』に変更しています。

次回は7月19日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

第489話【真魔王決戦・決著！】

次話は木曜日投稿予定です。