鬼人族の族長である『玉稿ぎょっこう』から『妖魔団の』の発端となった時の話を聞かされて、シゲンやミスズもそれぞれ思案をしていたが、妖魔召士組織側のエイジやゲンロクの方が々と思う事が多かった。

何故なら『妖魔団の』にを委ねた妖魔達の狙いが、彼ら妖魔召士であったからに他ならない。

そしてその『妖魔団の』を引き起こす事となった鬼人の『紅羽くれは』に話を持ちかけたのが、妖狐の『朱火あけび』と鵺の『真鵺しんぬえ』だったという事も當時の事変を経験した者達にとっては、その事実は非常に衝撃的な事でもあった。

（小生らがようやくこの場で得た報でさえも、サイヨウ様であればすでに得ていた可能も否めぬ。もしかするとサイヨウ様がこの世界から去った理由というのも、この妖魔団のという事変に関連した何らかの理由が関係していたのかもしれぬな……）

妖魔召士のエイジは顎に手をあてながらそう推測すると共に、ゲンロクもまた目を細めながら思案の海に潛る。

（程……。サイヨウ様が突然居なくなったのには驚かされたが、紅羽や朱火を『式』になされたのには、この『妖魔団の』に関係する理由があったのやもしれぬ）

この場に居る『エイジ』や『ゲンロク』達は、鬼人王の『紅羽』や、妖狐の『朱火』といった妖魔達が『サイヨウ』の『式』とされた事実を知っていた為、サイヨウがすでに彼達を『式』にしているという事実を省みて、今知らされた報をサイヨウ自はすでに得ていて、その上で被害を食い止めるために『式』にしたのかもしれないと推測を続けるのだった。

妖魔召士の中でもサイヨウの直弟子であった『エイジ』や、當時の四天王であった『コウエン』達は『妖魔団の』の主だった者達をたった一人で相手取り、苦戦を強いられながらも何とか収めた上で彼達を『式』にして見せた事を知っている。

――それもを用いたまぬ契約ではなく、彼達に納得させた上での従來の妖魔召士の『式』契約である。

そして『サイヨウ』は『妖魔団の』が収まって瞬く間にこの世界から去ってしまった。

妖魔召士組織に屬する他の四天王たちには別れの挨拶を告げたというが、直弟子であった『エイジ』には結局顔すら見せなかった。

後に四天王の妖魔召士である『イ・ッ・テ・ツ・』から、サイヨウには今後やるべき事がある。その為に組織を離れなければならないとだけ告げられたが、それでも納得が出來なかったエイジは獨自にサイヨウの居場所を突き止めようといたが、結局『転置寶玉てんちほうぎょく』と呼ばれる、かつて『シギン』様が保有していたアイテムを使い、この『ノックス』の世界から消え去ったという報しか得られず、何処に向かったのかすら分からなかった。

伝承によれば『転置寶玉』とは膨大な魔力を吸い取って者を別世界へと送るものであるらしく、管理を行う事が出來るのは『妖魔召士』を束ねる長だけであり、一介の妖魔召士であったエイジにはそれ以上のことを調べられる権限もなく、その時は『サイヨウ』が何処へ向かったのか、悔しくも知る事が出來ずに終わってしまった。

――しかし今のエイジは、紆余曲折うよきょくせつの末に『妖魔召士』の長となる事が出來た。

そして偶然にも何処へ行ったのか分からなかった『サイヨウ』の居場所は、ソフィという別世界から來た『魔族』達から無事であることを知らされた。

サイヨウがこの世界から去った理由として、かつての『妖魔団の』と引き起こした『紅羽』や『朱火』を『式』にした事が関係している事は、すでに可能としてエイジも考慮は出來ていたが、そこに新たに鵺の代表格である『真鵺』の名が出てきたことはエイジも初耳であり、なからず衝撃をけるのだった。

エイジは過去にあれだけサイヨウの足取りを摑もうと願い多くの行を起こしたにも拘らず、あれだけ手を盡くして何も分からなかったというのに、ソフィ達と知り合う事が出來た事によって、トントン拍子に謎であったことが解明されていく事に、縁というのは本當に不思議だと考えるのだった。

もちろん単なる偶然なのかもしれないが、あのままケイノトの裏路地でひっそりと今も暮らしていたならば、自が再び『妖魔召士』組織に戻って組織の長となる事も、更にはこうして妖魔山の中腹に來る事はなかっただろう。

（毒を食らわば皿までだ。ここまできたら最後までソフィ殿と行を共にして、行き著く先に何が待っているかを見屆けようではないか……）

妖魔召士の長であるエイジは、奇しくもソフィと出會ってからここまでの報を得る事が出來た。ならばこれからも彼と行を共にすれば更なる報を得る事が出來るだろうと、半ば確信めいたものをじ取りながらエイジはこの『妖魔山』で共に最後まで行く覚悟を持つのであった。