《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1731話 鬼人族の集落での宴會

妖魔山の調査に訪れたソフィ達を含めた両組織の一行だが、ここまでは想像通りであり、かつて麓を見張っていた妖魔召士組織の『特別退魔士とくたいま』達から上がってきた報告と遜はなかった。

だが、まさか目的の一つであった『百鬼なきり』の同胞を探す為に訪れた『鬼人族』の集落で、かつての大きな事変であった『妖魔団の』の新たな報を得る事が出來るとは思わなかった。

その中でも報として一番大きかったのは、鬼人王である『紅羽』に話を持ちかけたのが、妖狐の朱火とその傍に居たという鵺の『真鵺しんぬえ』の存在であった。

「玉稿殿、貴重な報をありがとうございます。百鬼殿も無事に同胞の方と再會を果たせたようですので、そろそろ我々は次の目的の為に、ここいらでお暇させて頂こうと思います」

シゲンと同様にここまで思案を続けていたミスズだったが、ようやく思案にも一段落著いたようで、鬼人族の族長である玉稿にここを離れる旨を伝えるのだった。

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「お、お待ち下され! せめて今夜一晩だけでもこの集落に……! 貴方がたは無事に百鬼をここに屆けて下さった。そうだというのに何も持てす事もせずに追い返すような真似は出來ません!」

「え、っと……。どうしましょうか、総長?」

『百鬼』という彼らにとって大事な同胞を屆けたという前提はあるが、それでも自分が想像していた『妖魔山』の『妖魔』達とは全く違った為、その予想だにしない鬼人族の族長の言葉になからず面食らったミスズは、困ったようにシゲンに決斷を委ねるのだった。

「こんな機會はまたとないだろう。玉稿殿が本當に良いのであれば、是非言葉に甘えさせて頂きたい」

當然にシゲンは『止區域』の調査を一番に考えてはいるが、それ以外にも『妖魔山』そのものを調査したいと考えていたようで、こんな機會でもなければ『妖魔山』にある『鬼人族』の縄張りを調べる事は出來ないだろうと考えたようであった。

「おお、もちろんですじゃ! それに忍鬼やイバキ殿も々と貴方がたと話をしたい様子ですからな」

そう言って玉稿はイバキ達に視線を送ると、彼らも苦笑いを浮かべながら素直に頷くのだった。

…………

その後ソフィ達は、玉稿の家で彼の言葉通りに歓待をけた。

當初はミスズ達も妖魔達が作る料理という事に々の抵抗があったようで、一口目を口にするまでは會話がメインとなって中々料理に手をつけなかったのだが、流石にいつまでも食べないというわけにもいかず、渋々と食べ始めたところ、直ぐに目のを変えて驚いていた。

この集落の畑で作られた野菜が中心の料理ではあったが、どうやら相當に味しかったらしく、ミスズはこっそりとおかわりを頼む程であった。

そして普段は酒を呑まない鬼人族達だが、何か祝い事があった時にと、人間達が呑んでいる酒も常備していたらしく、足りなさそうに食事をしていたヌーの元にその酒が屆けられると、直ぐにヌーは機嫌を良くし始めるのだった。

この世界の酒は非常にきつく、呑み慣れた者であっても直ぐに酔いが回る為に、一度に大量に呑み干すという事がないのだが、ヌーとソフィが酒に手を付けてからは、あっという間に備蓄している酒の量が減ってしまい、ミスズやイツキ達を呆れさせてしまうのだった。

そして最初は全員が同じ席で宴會をしていたが、久しぶりに再會した者同士や、珍しい人間と話をしたいと考えていた鬼人が意を決してヒノエ達と呑み始めたりと、気が付けば各々がそれぞれ別の場所で呑み始めていた。

そんな中、ソフィは忍鬼とイバキの三人で呑みわしていた。

ソフィは三人で呑み始めた最初のに、改めて忍鬼に勝手な事を言ってしまったと謝罪を行い、忍鬼の方は慌てて首を橫に振って、ソフィの頭をあげさせていた。

忍鬼にとってはむしろあの時にソフィに止めてもらったおかげで、今こうしてイバキという頼れる相方と日々を平穏に過ごす事が出來ている。

謝られる事など何一つないのだと笑みを向ける忍鬼を見て、ソフィもようやく満足そうに頷いて見せるのだった。

そして忍鬼との話が終わった後、今度はイバキの話を聞いていたソフィだが、加護の森で仲間だと信じていた『退魔組』の退魔士たちに失してしまい、そしてこれまで行を共にしてきた相棒であった『スー』が、妖魔召士の『イダラマ』が使役した『式』によって命を落としてしまい、自らもまた契約している『式』に助けられた事で、命からがらこの『妖魔山』の鬼人の集落に辿り著いたのだと説明をけたソフィであった。

「お主も大変だったのだな……」

ソフィの言葉にイバキは、泣き笑いの表を浮かべながら小さく頷くのだった。

「ここに來た當初は、俺自本當にどうでもよくなってしまってね。寢ても覚めても死んだような目をしていたように思う。でも気よく『鬼頼』……、俺の『式』の鬼人なんだけど、彼にこの集落は皆おれの味方だからって何度も言って聞かせてくれて、集落の者達に馴染めるように紹介とかしてくれて、一緒に仕事をするようになってようやく、俺は生きててもいいんだって思えるようになったんだ。だから俺はもう『ケイノト』に戻るつもりもないし、今後はずっとこの鬼人族の皆のために生きようと思っているんだ」

そう言って憑きが落ちたような目をしながらイバキは、橫に居る忍鬼の顔を見つめるのだった。そして視線を向けられた忍鬼は、しだけ頬を赤らめながらも嬉しそうにイバキに笑みを返していた。

「うむ。ここの者達も皆良い者達のようだ。お主のその考えは間違ってはおらぬだろう。

ソフィがそう言うと、嬉しそうにイバキは首を縦に振って笑顔を見せるのだった。

……

……

……

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