《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1739話 決意の言葉

そしてソフィとミスズの両者から視線を向けられたシゲンは、靜かにその口を開くのだった。

「玉稿殿の言葉は有難い事だが、ここは先程の天狗達が戻って來るまで俺達は待った方が良いだろう」

「なっ――!?」

シゲンの言葉を聴いた鬼人族の玉稿は、目を見開きながら驚きの聲を上げるのだった。

「俺達の本來の目的は『止區域』の調査だ。ここで集落を離れたところで奴らは俺たちを追って來る事は予想に難しくない。そうなれば調査は出來ないだろうし、それ以前に貴方がたに迷をかけたままでここを去るという選択肢を妖魔退魔師組織の総長として俺はまない。奴らが貴方がた鬼人族に対して実力行使を行うというのであれば、それを阻止するために俺達『妖魔退魔師』組織は貴方側に付こう」

シゲンはそう玉稿に告げた後、改めて妖魔召士であるエイジやゲンロク、そしてソフィ達へと視線を向け直すのだった。

そのシゲンの視線の意味とは、自分の決斷に対して『妖魔退魔師』組織以外の者達には無理強いをしないという意味が込められているのだった。

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つまり『妖魔退魔師』組織は『鬼人族』側に付くと、この場で明確に立ち位置を決めた様子であった。

そのシゲンの決意が伴った視線に、最初に反応を見せたのはソフィだった。

「クックックッ……! では我もシゲン殿達と殘るとしよう」

「はぁっ、てめぇはエヴィを見つける為にここに來たんだろうが?」

半ば分かりきっていたヌーではあるが、それでも一言咎めなければ気がすまなかったようで、言葉にして口を出すヌーだった。

――だが。

「すまぬな、ヌーよ。だが悪いが我はあの者達の勝手な言い分が許せぬ。玉稿殿はしっかりと我達がこの『妖魔山』に來た事に対しての説明責任を果たしておった。當然にそれが全てというわけではないが、しかし考えてみてしいのだが、靜かに自分達の縄張りの中で暮らしておっただけの彼らの集落に、あれだけ々しい數を引き連れて土足でり込んで自分達の主張の為に彼らを怯えさせたのだ。その原因を擔わせてしまったのが我達なのだというのであれば、その責任は取らねばなるまい?」

そう口にしたソフィの視線の先には、未だに怯えた様子を見せる鬼人族の子供の姿があった――。

――シゲンと同様にソフィもまた明確に立ち位置を決めた。

次に天狗に黙ってついて來いと口にされたならば、ソフィはもうシゲンの言葉を待たずについていく事だろう。

そしてもし何も言わずに鬼人族に対して実力行使に出ようとするのならば、大魔王ソフィは全力を以てその天狗達の行いを阻止するだろう。

今この場で妖魔退魔師の総長シゲンと、大魔王ソフィは同じ気持ちを抱く事となったのであった。

「ふふっ、では小生もシゲン殿やソフィ殿と同様にこの場に殘ろう。ゲンロク、構わぬな?」

「仕方あるまいて……。そもそも先程の話は『妖魔召士』であるワシらが原因のようなものじゃったからな」

どうやら妖魔召士のエイジやゲンロクも足並みを揃える事を良しとしたようである。

「ちっ! わぁったよ、俺も殘ってやるよ!」

エイジ達も殘ると聞いたヌーは、テアを一瞥した後に舌打ちを行いながら仕方なくそう口にするのだった。

「お、お主達、考え直すのだ! ここに殘れば奴らはお主達をも手に掛ける事は間違いない。先程ワシはああいったが、天狗共は正面きって戦って勝てる相手ではないのだ。このままではっ――」

「クックック、安心するがよいぞ、玉稿殿。あやつらがどれ程強かろうが、この集落に居る者達には指一本れさせぬと我が約束しよう」

ソフィは玉稿の肩に手を置き、安心させるようにそう告げるのだった。

言葉を続けようとした玉稿ではあったが、そのソフィの言葉を聞き、目を見た事でそれ以上は口にする事が出來なかった。

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