《天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭なと便利スキル『創魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~》第492話 それぞれの顛末

「さて、では帝蟻がどうなったのかお聞かせ願えますか」

「私からお話します」

と、レヴィ。

帝蟻と思われる個は、私、アスモデウス、カイベル、そしてアルトラの三人で倒しました。先ほどのアリの死骸が帝蟻のものです」

帝蟻はヒトの姿をしていると聞いています。あれはどう見てもアリのような形でしたが?」

「推測でしかありませんが、死んで擬態能力が解け、本來のアリの姿に戻ったのではないかと思います」

「なるほど。それで――」

さっそくキタ……

「――『暴食グラトニー』の大罪はどうなったのでしょうか?」

「…………見つかりませんでした」

「は?」

レヴィの言葉にしばらく思考停止してしまうアスタロト。

「ですから、あれは魔王ではありませんでした」

「……ただの突然変異種だったみたいだね……」

「『暴食グラトニー』が見つからなかった!? 突然変異種!? そんなバカな!!」

アスモの追撃に、更に驚くアスタロト。

「で、ですがアリですよ!? アリが亜人のような姿で、人語まで話すのですか!? ベルゼビュート様!?」

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「え!? ああ……そ、そうらしいね!」

突然こちらに話を振られてビックリした……

「でも倒しても『暴食グラトニー』が見つからなかったのは事実だから……」

というてい。

私からも『暴食グラトニー』が“見つからなかった”ことを刷り込む。

ああ……また重大な噓を抱えないといけないわけか……心中は憂鬱だ……

「そ、そんなバカな……だ、だが確かにベルゼビュート様からは魔王の放つ魔力の片鱗も見えない……しかも王様二人にも分からないとなると……本當に一どこへ行ってしまったのか……」

アスタロトが意気消沈している。これが『暴食グラトニー』が見つからなかったことにあるのか、私が継承してないことにあるのかは分からないが……

「しかし、王様二人のお手を煩わせるような強大な敵だったのですね」

ギクッ

「あ、あまりにもコロニーが大きくなり過ぎたから、強く進化した個だったんじゃない?」

「そういえば、先日起こった樹の國のデスキラービー騒でもそういった報告がされてましたね……確かにハチとアリは伝的に近い生態をしていますが……まさかただの特殊進化個だったとは……」

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「そ、そういうわけだから、引き続き王様代理の継続お願いね」

と言った私の言葉に否定の言葉が返って來た。

「それがそうも行きません」

「どういうこと?」

「今回、私の提案した獨斷の作戦により他國の兵士にもなくない被害が出ていますので、私は國王代理を辭することになるでしょう。それどころか作戦立案時にこの命も差し出すと條件付けていますので罪にも問われ、最悪極刑の可能があります」 (第454話參照)

「な、何でそんなことに?」

「屬國アーヴェルムのヴァントウにジャイアントアントが発見されたと聞いた時に作戦をカイベルさんの仰ったものに沿って変更しました。結果的には功を奏しましたが……それでも他國兵士への被害は甚大だと報告をけていますから」

きょ、極刑……?

何でそんな約束を……

カイベルの提案が元になってるってことか……この提案でアスタロトに責任を強いてしまったということか……

そう考えていたところ、病室のり口側から聲が聞こえた。

「その必要はありません」

って來たのは雷の國のエリザレアさんとラッセルさん、樹の國のマルクさんだった。

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「……エリザレア、ラッセル……討伐ご苦労様……」

「「はい!」」

アスモから二人を労ねぎらう言葉。

「マルク殿もお疲れ様でした。それで……必要が無いとはどういうことですか?」

アスタロトのその問いに、マルクが話し始めた。

「我々は『もし作戦が外れ、大いなる被害を出してしまった場合』という條件の下、責任を取ってもらう約束をしました。ですので、損害はあったものの、作戦自は外れてはいませんので責任を取る必要はありません」

「しかし……戦死者も多かったと報告されています」

なくない犠牲でした……しかし、ここでジャイアントアントを止められていなければ、いずれは世界中でもっと沢山の死者が出たことでしょう。強大な敵を風の國國だけで止められたことを考えれば、むしろアスタロト殿の作戦変更は英斷だったとも考えられます」

エリザレアとアスモがそれに続く。

「それに急に國王代理を替えられると私たちの國も困ってしまいますから。そうですよねアスモデウス様」

「……うん……長い間務めてくれてるから、別のヒトになるとその後の勝手が違う……できればそのままで……」

更にレヴィが続く。

「水の國としても三十年近く懇意にしているあなたに辭められるのは面倒ですから、そのまま続けていただけるとありがたいですね」

「そうですか……當事者國にそう言っていただけるのなら、続投も考えておきます」

どうやら國王代理は続投してもらえそうだ。

「ところでベルゼビュート様、何かしらに変質はありませんか?」

「変質? どこに? いや多分無いけど……何でそんなこと聞くの?」

「もしかしたら、王やりたくなさに継承したことを黙っているのかと思いまして。もしくは知らず知らずに継承していることもあるかもと思いまして」

疑われてるのか!?

まあ、そりゃそうか。

『やりたくなさに』という言葉が合ってるだけに文句も言えない……

迂闊に『変質は無い』と答えてしまったけど、『何か変わった』って答えるのと『変質は無い』って答えるのはどちらが私にとって正解だったのかしら?

「そうですか……変質が無いなら継承はしてないようですね……魔力総量も上がってはいないようですし……」

どうやら『変質は無い』が正解だったらしい。

「どういう変質が起こるの?」

「まず、格に違和が出るらしいとのことです。今回の件は『暴食』の大罪ですので、お腹が減りやすくなるとか、食べのことで不都合があると怒りっぽくなるとか。大罪との相にも依るのでそういった特徴が出ない方も歴代魔王の中にはいたようですが……」

ゲッ……たかが食べで怒りっぽくなるの……?

凄くあさましく思えるわ……

ルシファーを見ると、大罪との相が良いと格にも変化が起こりやすいらしいし、今後何も変わらなければ良いのだけど……

「前代ベルゼビュートの時にはどうだったの?」

「あ~……え~と……そういえば『あまりお腹空いた』みたいな話は聞いた覚えがないですね。大食いだったように思いますけど」

と言うことは、私はあまり変わらない可能が高そうだ。

このまま大罪の話題になり続けるのも噓を吐いてる手前居心地が悪いので、話の方向転換を図ることにする。気になったことを聞いてみよう。

「ところでさ、ボレアース城はどうなった?」

帝蟻との戦いで、城の謁見の間で戦っていたはずなのに、いつの間にか崖下に寢てたからその後が気になっていた。

私の予想ではかなり修繕しないといけないのではないかと思っているが……

「余程激しい戦いがあったのか、ほぼ全壊の狀態でした」

「ええっ!? そんなに!?」

「城に著いた時には城の形をしていなかったので唖然としましたよ。と言うよりも土臺となっていたキノコ巖が、大きく損壊していたので、今殘っている城の一部もいつ崩れるか分からず放置しておくのは危険な狀態です。そのため今後城で亡くなっていた者を収容し次第、土臺ごと壊してしまう計畫に移行するでしょう」

「そ、そう……」

「城にはまだアリが殘っていましたので探し出して駆除しました」

予想を遙かに超えて大ごとだった……

「し、城はどうなるの……? 再建するの?」

「現在はごたついていてまだまだそんなことは考えられません。ただ……『暴食グラトニー』が戻って來ない以上、新たな王も立てられませんし、一時的に仮庁舎を作る程度に留まるのではないかと。城が再建されるのは大罪が見つかってからでしょうね」

何てこった……

私が國の象徴的な建造を一つ壊しちゃったことになるのか……

「いかがいたしましたか? ベルゼビュート様が責任をじるようなことではないと思うのですが……?」

「城が壊れたのって、私と帝蟻が城で戦った結果だから……」

「「「えっ!?」」」

その場に居たカイベル以外の全員が驚いた。

「し、しかしベルゼビュート様は城とは全然関係無い平原に居たではないですか! 城には帝蟻も居りませんでしたし」

「ちょっとの時間気絶しちゃったから予想でしかないけど、城で対峙してる最中に、まず城の床と土臺のキノコ巖をぶち抜かれて崖下に落とされて、次は崖下からぶっ飛ばされた時にボレアースを囲んでる山壁をぶち抜いて吹っ飛ばされて、最終的にさっきの平原に落ちたの」

「「「…………!!?…………」」」

再びカイベルを除いた全員が驚愕した顔をしている。

「じょ、帝蟻と戦いながらそんなに移してたんですか!?」

「に、二十キロくらい移したんじゃ……?」

「ボレアースがある場所って、世界で二番目に高い山の中腹ですよ!? そんなところから落ちてよく無事でいられましたね!」

全員の心配の聲をよそに話を続ける。

「そんななんで、私にも責任の一端があるかと……」

意気消沈したのが分かったのか、アスタロトがすかさずフォローしてくれた。

「し、仕方なかったのですよ! 城の中で対峙してしまったからには壊れるべくして壊れたと考えないと! むしろ帝蟻を留めて、街への被害が無く、魔王に匹敵する相手からベルゼビュート様も無事に生きて戻って來られたのですから、儲けものくらいに思っておきませんと!」

他人ひとんちの城をぶっ壊してしまった手前、到底素直にけ止められはしないが……

「分かった……そう思っておくよ……」

ただ、修繕費を請求されたら、一どれほどの額になるのか戦慄を覚えるが……

気を取り直して、まだ聞きたいことを聞いておく。

「ボレアース市街へのジャイアントアントの襲撃はどうだった? 大丈夫だったの?」

「はい、まだ街中にて騎士団員が対処中です。この病院のあるエリア周辺はもう危険は無いでしょう。街への損被害や建損壊などはありましたが、ジャイアントアントが街に到達する前に避難指示していたため、住民には怪我人こそあれど死者は出ていません」

「そう、それは良かったわ。この病院の職員は避難しなかったの?」

「はい、負傷者や負傷兵を見込んで避難せず殘ってくれた方が多かったようです」

「ジャイアントアントはどう対処したの?」

「カゼハナに行っていた全鋭部隊を喚よび寄せ、ローラー作戦で駆除に當たっています。間もなく絶できるかと。イルリースとエアリアが空間魔法にて召喚を頑張ってくれたので援軍を迅速に喚よび寄せることができました。イルリースは々無理をしたため現在はこの病院に院中です」

院!? 大丈夫なの!?」

「ベルゼビュート様のお怪我に比べれば大したものではないので心配無用です」

「そう、それなら良かった……」

そういえば、アイツはどうなったんだろう、あの増するアリ。

「デュプリケートはどうなった?」

「私の能力で死の宣告を與えたので、今後未來にアレが脅威になることはありません」

「ああ、あの毒の能力か」

……

…………

………………

アスタロトがし驚いたような表で沈黙した。

何かおかしいこと言ったか?

「私は……今生こんじょうのベルゼビュート様に私の能力について話をしましたか?」

しまった! 失言した!

「あ、ああ、ちょ、ちょっと小耳に挾んだもので……」

「ティナリスからですか?」

ティナリスはアスタロトがこの毒の能力を嫌っていることを知っていたはず。

故にベラベラとしゃべることはしないはずだ。

「いやいや、ティナリスからそんな話聞いたことないよ」

「ではなぜご存じだったのでしょうか? まさか……本當は『暴食グラトニー』を継承したのを隠していて、実は記憶が蘇っているとか?」

この一言に、私、レヴィ、アスモにが走る。

アスタロトのこの予想は概ね合っている。実は大罪を継承した時に、ベルゼビュートだった頃の記憶がかなり掘り起こされた。

そのため、アスタロトが毒の能力を持つのも知っていたのだ。

しかし、全記憶が戻って來るわけではないらしい。恐らく、大罪が再び私に戻って來るまでに何百種類もの生を経由したため、その間に欠落していったのではないかと思う。

「き、記憶が蘇る? そんな特徴があるの……?」

継承したことを印象付けないためすっとぼける演技をする。

「私は存じません。何せ魔王が一度死んで、前世で得た大罪の魔力を持ちながら戻って來たケースはありませんので」

「記憶が蘇るとかどうとか、継承してないから分からないよ……」

「ではなぜ私の能力が毒だと?」

詰問されるような言い方だ……

うぅ……不用意な一言で一気に窮地に……

………………そうだ!

「つ、通信の魔道から聞こえてきたのよ! 私が魔道の親元だったからたまたま近くにあった魔道がその言葉を拾ったみたい!」

「通信の魔道? そんな報告は聞いていませんが、どこにあるんですか?」

「親元はウィンダルシアに預けたから、彼から聞いてみればまだ持ってると思う!」

「ふむ……聲を拾っていたのならデュプリケートの顛末もご存じなのでは?」

うっ……

「そ、その時にはもうウィンダルシアに預けてたから詳細を! 詳細を教えてほしいの!」

「詳細をおみでしたか。デュプリケートは私の能力によって最早土の中からは出られないと思います。彼の生態報で作った彼にのみ特効する毒を大気中にばら撒きましたので毒を吸い込めば一呼吸で即死します」

「そっか、それなら安心した。あれがもし世に放たれたら尋常じゃない混が起きそうだから」

ふぅ……な、何とか継承の件は有耶無耶になりそうだ……

改めて帝蟻戦での移距離を整理してみましたが、凄い距離移してますね……

次回は8月1日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

第493話【アスタロトがアルトラに心酔する理由】

次話は木曜日投稿予定です。

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