《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1748話 大魔王ソフィの靜かな怒り
「それは順を追って話をさせてもらうとだ。そもそもが山の見回りを行っていた部下から、赤い狩を著た妖魔召士が數名、更にその護衛と見られる人間が複數名が『式』にされたと見られる鬼人を引き連れて、この『妖魔山』にある鬼人の集落へと近づこうとしていると報告があったのだ。それで我々はまた人間共が鬼人達に悪さをしようと企んでいるのではないかと憂い、ここにいる『歪完ゆがん』を含めた『幹部』數名を主らの元へと派遣したのだ」
「その時にワシらはしっかりと説明を行った筈だ。ここに居る彼らはかつてのような不屆き者達ではなく、人里で道に迷っていた我らの同胞を助けてくれた上で、こうして危険を冒してまでワシらの集落まで送り屆けてくれたのだと。そして何も心配は要らぬから引き上げてくれとその『歪完』殿に説明したのにも拘らず、そやつは我らが客人達を無理やり連れて行こうとしたのだ。こちらとしても同胞を助けてくれた客人を差し出すわけにはいかぬ。だから主らに大人しく帰れと口にしたのだ!」
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一度目の天狗族の來訪の時に説明した容を、そっくりそのまま同じように説明を行った玉稿だが、それを聞いても表を一切変えずに『華親かしん』は笑みを浮かべたままであった。
「ふふふふっ! 程、程。そう言う事であったのか。しかし人里で迷って人間に保護してもらうとはけない鬼人族も居たものだな? よちよち歩きの赤子がちょこちょこと集落を抜け出してしまったのか?」
そう言って馬鹿にするような視線を百鬼に向ける華親であった。
「ふんっ、言っておれ。こちらの事は全て話した。事を理解したならば、さっさとワシらの縄張りから出ていけ! ここで素直に引いたならば我々の縄張りにずけずけとり込んだ事に関しては不問にしてやる! さぁ、さっさと去ね、天狗共!」
その玉稿の言葉に更に追い打ちをかけようと華親が口を開きかけたが、それを右手を出して靜止した後に彼ら天狗の首領である『天・魔・』が一歩前に出て口を開くのだった。
「そうは行かぬな、當代の鬼人族の族長。妾たち天狗はこの山の管理を妖魔神殿から任されて中腹に居るのだ。その妾達天狗が目の前に居るこの山にり込んだ『妖魔召士』達を見逃して、剰あまつさえこの場去るわけにはいかぬ。別にお主ら鬼人族と今更事を構えようとまでは思っておらぬが、そこの人間共を連れては行かせてもらう。こればかりはいくらお主らが人間共を恩人だと申していても、天狗の首領としての立場で妾は行を取らせて頂く」
「うっ――!」
そう言って『帝楽智』が『魔力』を纏いながら貫くような視線を玉稿に向けると、鬼人族の族長としてそれなりの強さを有している筈の『玉稿』の表が青ざめてしまうのだった。
『鬼人族』を取り囲んでいる天狗達は、自分達の首領が『鬼人族』の族長との格付けが行われる瞬間を見て、次々と厭らしい笑みを浮かべ始めていく。
どうやらトップ同士のやり取りを見て、自分達もまた『鬼人族』に対して優位を明確にじ取り、自分達の方が彼らよりも偉い立場なのだと本能で決斷を下したようであった。
『天従十二將てんじゅうじゅうにしょう』と呼ばれる天狗達の數が驕り始めてからというもの、他の天狗達もつけあがるように威圧的な態度を取り始めて行き、やがてはそれが天狗達全に伝播していってしまった。
鬼人族の子供たちは、その威圧的な天狗達の視線や態度にさらに怯えてしまい、ビクビクとを震えさせるが、それを見た天狗達の一部が嘲笑うと、再び周囲の者達にも態度が伝播していく。
「気・に・・ら・ぬ・な・……」
そして遂にこれまで黙って事のり行きを見守っていた存在が口を開くのだった。
「ああ?」
怯える鬼人族の子供を見て馬鹿にするように笑っていた天狗の一が、耳聡くその存在の呟きに反応を見せて、そちらを振り向いた瞬間であった。
「気にらぬと言ったのだ。そこに居るお主らを束ねている者は、我達が目的なのだと口にしたのだろう? ではお主らはそれに従って黙って立っておけばよかろう。そうだというのにいつまでも嫌がらせを行うように、何もしていないそこの子供たちを怯えさせて嘲け笑う。一お主らは何・様・の・つ・も・り・な・の・だ・?」
気にらぬと口にしたその存在は、大・魔・王・ソ・フ・ィ・であった――。
これまではあくまで妖魔退魔師組織の客分としての立ち位置を守り、一切主張を誇示する事もなく黙っていたソフィだが、流石に増長していく天狗達の視線と態度。そしてその視線の対象に選ばれてしまった子供たちの怯える様子に、彼は黙ってはいられなくなったようである。
そして靜かに呟くソフィの言葉とは裏腹に、その聲からソフィという存在を深く知る『大魔王ヌー』は、テアを守るように彼の前に立つと、そっと『三併用』を纏い始めるのだった。
――その唐突な大魔王ヌーの行いは、これから起こるであろう出來事から、自分と自分の大事な者を守る為の防衛の手段であったが、まだその事に気づけた者はこの場には居なかった。
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