《天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭なと便利スキル『創魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~》第495話 追悼、そして風の國を去る時
しかし、その後もフレアハルト生存の続報は來ること無く……
帝蟻撃破から一週間――
傷も癒えたため、外出が認められイルリースさんの空間転移魔法でカゼハナを訪れた。
「あ、あれが溶巖地帯ですか?」
「はい、もう大分冷えて固まっていますが、私では未だにこの辺りが限界の熱さです」
「送ってくれてありがとうございます。帰りは自分で帰れますので」
「では、私はここで失禮します」
イルリースさんは空間転移魔法で帰って行った。
ドロドロの溶巖地帯に変貌したと聞いていたが、この一週間で溶巖のほとんどが冷えて固まってしまい、最早捜索が不可能に等しい狀況に……
そのため、一週間を目途に捜索は打ち切られ、赤龍峰から召集されたレッドドラゴンたちは、失意の中エアリアさんの空間転移魔法により赤龍峰へと帰還したそうだ。
殘ったのは、私が連れて來た二十二人だけ。
固まってしまった溶巖地帯を見つめ、し項垂うなだれているフレイムハルトさんを見つけ、話しかける。
「フレイムハルトさん……」
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「アルトラ殿……怪我は治ったようですね」
「その……あなたたちを連れて來てしまってごめんなさい……」
もし……フレアハルトが死ぬ未來が見えていたのなら、私は絶対に同行をお願いしたりはしなかっただろう。
アイツなら絶対に死なないという確信を持っていたからこそ協力を仰いだのだが……
その結果がこれか……
「我々は力が全ての戦士の種族です。生きるも死ぬも自の責任。アルトラ殿が謝る必要はありません。むしろあの赤アリを世に放つことなく倒せたことを、私が兄上のお蔭で無事に生還できたことを褒めてやってください。ヤツが世に放たれていたら一何千、何萬の生が死んだか分かりません」
心が痛い……しかしすら見えないのでは死んだという実は湧かない……
もしかしたらどこかで生きてるのではないか? そう考えてしまう。
「明日、カゼハナで追悼式とかいうものが開かれるそうなので、我々はそれに參加後、エアリア殿の空間魔法で赤龍峰まで送ってもらいます」
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「分かりました」
し會話に距離をじるが、私の依頼による結果なのだからこの距離も當然のことだろう。
アリサとレイアを見つけた。
フレアハルトと最も関りが深かったアリサとレイアは、既に泣き腫らしている狀態だ。今も枯れることなく涙を流している。
話しかけるのも憚れるが……
「二人とも……」
「「………………」」
「ごめん……」
「「………………」」
「アルトラ様……しの間……私たちに話しかけないでください……今は……顔も見たくありません……」
アリサからは完全無視され、レイアには明確な拒絶の言葉を聞く。二人とも顔を合わせてもくれなかった……
付き合いは一年ほどだが、ここまで明確な拒絶をされたことがなかったので、なからずショックをけた。
が、私の判斷ミスが原因であるためこういう態度を取られても仕方ないことだろう。
「分かった……ごめんね……」
その言葉しか出てこなかった……
その場を靜かに離れ、【ゲート】にてボレアースの病院へ戻った。
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今後……レッドドラゴンたちとのお付き合いも難しくなるだろう。もしかしたらもうアルトレリアには寄り付かなくなるかもしれない。
◇
翌日――
回復魔法をけ、ほとんどの者がけるようになったため、首都ボレアース、カゼハナの町、ヴァントウの町の三ヶ所で三國合同の戦沒者追悼式が執り行われることとなった。
私とカイベルはボレアースにて參加。
レッドドラゴンたちは昨日の宣言通りカゼハナの町で、雷の國と樹の國はヴァントウの町での參加となった。
ボレアースでの式はキノコ巖の崖下にて執り行われた。
ジャイアントアントとの戦いの前に、私が吹き飛ばした雨雲も元通りになり、ボレアースは悲しみの小雨に降られる。
追悼が行われた後、場所をキノコ巖上部へと移して、戦沒者の記念碑が建てられた場所で祈りを捧げる。
石碑が戦場であった崖下に建てられずキノコ巖の上に建てられた理由については、崖下に建てた場合、雨が降った時に水沒してしまうからだそうだ。
風の國騎士たちの親族・親類も多く參加し、死者を悼んで涙を流す。
通例のジャイアントアント討伐であれば、ここまで大規模な戦死者を出すことは無かったそうだが、今回はあまりにも特殊なことが重なり過ぎていて、被害が甚大であったため追悼式を催す運びとなったようだ。
◇
追悼式が終わって翌日、アルトレリアに帰る日。
國の機能が、間借りした仮庁舎へと移されたため、アスタロトに挨拶をしに仮庁舎に赴く。
「アスタロト!」
「ベルゼビュート様、ごきげんよう」
「まあ、気分的にはごきげんようでもないんだけどね……」
「フレアハルト殿のことですか……」
「………………」
「今回の討伐作戦では様々な國に悲しい思いを強いることになってしまいました……」
「……うん、私からは何も言えないけど……」
「人間の世界は私は存じませんので分かりませんが、この世界では駆除や討伐で命を落とすことは珍しいことではありません。あまりお気になさらずに。心を潰してしまいます」
そうは言っても……魔界に來てから今まで近なヒトが死ぬことなんて無かったからな……
「そうだ! 大事なことを伝えておかねばなりません。今回の報奨金についてです」
「やっぱりお金出るんだ」
「命を賭けて討伐に當たるわけですから、當然のことでしょう。報奨金はそれぞれの方々に支払われます。一応フレイムハルト殿にはお話しましたが、金銭の授について要領を得ないところがあったので、きちんと伝えていただけるとありがたいです」
ああ……彼はアルトレリアで暮らしていたフレアハルトと違って、まだ銀行や貯金の概念が無いだろうからな……
「それからレッドドラゴンの方々にもお伝えください。フレアハルト殿には賞恤金《しょうじゅつきん》 ※として多額の報酬を支払う予定です」
(※賞恤金しょうじゅつきん:本作二度目の登場。公務員に危険任務で死亡したり傷害を負ったりした時に、弔意やお見舞いの意味で支払われるお金だそうです)
このタイミングで伝えなきゃいけないってのも気が重いわ……
「そのレッドドラゴンたちは、カゼハナからどうしたかしら?」
「昨日の追悼式後、エアリアの空間転移魔法によってすぐに赤龍峰の方へ帰られたようです」
「そう……ありがとう。エアリアさんにもお禮を言っておいて。それじゃあ私もアルトレリアに帰るから。今後修復やら補償やらなんやらで忙しいと思うけど、頑張ってね」
「はい、ベルゼビュート様もお元気で。それから私から一つ、『思いつめないで』ください」
「……分かったよ、じゃあまたね」
【ゲート】にてカイベルと共に我が家へ帰還した。
◇
「ただいま」
「お帰りなさいませ」
「いや、あなたも『ただいま』でしょ」
カイベルにツッコめるだけの余裕はまだあるらしい。
家の中が閑散としている。
リディアとネッココが居ないが……
「リディアとネッココは?」
「リナ様に預かっていただきました」
「そっか、じゃあ迎えとお禮をよろしくお願い。私は今日一日自室で寢るから、誰もれないようにして」
「かしこまりました」
『思いつめるな』とは言われたが、それは無理という話だ。
今日一日だけでも、何も考えずに寢て過ごそう……
◇
アルトレリアに戻って翌日――
気が重いがアスタロトから言われたことをなるべく早く伝えるべく、赤龍峰へ赴いた。
「お帰りなさいアルトラ殿。父上は憔悴してしまっているので、私が話を聞きます」
出てきてくれたのはフレイムハルトさん。
どうやら族長さんはを壊してしまったようだ……
「アリサとレイアは?」
「現在は塞ぎ込んで出て來ません」
「そう……ですか……」
「とりあえず座りましょう、こちらへどうぞ」
王宮の応接室のような場所へ通された。
そこは石造りの四角い部屋で、テーブルと椅子が並べられていた。
この火山部の町って、一応こういった部屋もあるのね……誰がこんな熱いところへ訪問するか分からないけど……
あ、このテーブルと椅子も石造りだわ。
何気なくテーブルに設えられた椅子を引こうとしたところ――
!?
重たっ! 何キロあるのコレ!?
――百キロ二百キロは十分ありそうだ。筋力強化魔法を使ってようやく引き出せるほどに重い。
ようやく引けた……
「どうしましたか?」
「い、いえ……ちょ、ちょっと椅子が重かったもので……手間取ってしまいました」
座った狀態で今度はテーブルに近付けようとしたが、びくともしないから諦めた。
「それで今日はどういった話ですか?」
「今回の報奨金の話です。風の國のアスタロトから要點を説明しておいてくれと言われたので來ました」
「ああ、それですか。銀行口座がどうのこうのと言われて、私では何のことか分からなかったので要りませんと斷って來たのですが……」
「口座ならアルトレリアで作れますよ?」
「そうなのですか? まあ二十二人にそれを理解させるのも面倒ですので、我々の代わりにアルトラ殿が貰っておいてください」
「いやいやいや! 結構な金額ですよ!? 功労者への報奨金ですし!」
前回デスキラービーの時ですら一般兵に対して一千萬程度の報酬があったから、今回功績が大きいフレイムハルトさんへの報酬額はかなり多いはず。フレアハルトは多分それにをかけて多いだろう。
「しかし赤龍峰に住んでいると使い道もありませんので……金銀財寶でなら頂きますが……」
ドラゴンと言えば寶を集めることで有名だ。
「じゃあそうしてもらいましょうか?」
「可能なのですか?」
「恐らくは可能だと思います……ところで、この火山部でどうやって保管してるんですか? 金銀財寶だとここの熱では溶けてしまいそうですけど……」
「大事なは我々のウロコから作った特殊な石箱にれてあるんですよ。竜燐は抜いた後も強く魔力が殘るのである程度の熱を遮斷してくれます。まあ……紙のようなものは遮斷しても燃えてしまうでしょうが」
「なるほど。そういうことですか」
以前族長さんから頂いた時から、この場所だと保管するのに溶けるんじゃないかと疑問に思っていた。
竜燐と言えば、んなゲームでも強い力を持つことで有名だ。『竜燐で守ってるから』って言うだけである程度納得できてしまうくらいには強力なアイテム。
ってことは、以前族長さんから貰ったあの石箱も竜燐が混ぜてあるってことなのか。
「じゃあ金銀財寶で貰えるように打診してみます」
「お願いします。それと、アルトラ殿に一つ相談なのですが……兄上はアルトレリアに骨を埋めたいと話していたそうなので、アルトレリアに弔いたいと思うのですが……」
「もちろん、構いませんが……通常、レッドドラゴンはどうやって弔っているんですか?」
「この町のとある場所に火口に繋がるがあり、そこへ骨を投げれ、赤龍峰の山の溶巖と同化させることで弔いとします」
「じゃあ墓や石碑のような慣習は無いんですか?」
「ありますよ。そのの近くに特別な魔石が鎮座しています。亜人社會のように個々人に墓を殘すような風習はありませんが。今回は兄上の最後のお願いですから、アルトレリアの方式に則って弔ってやりたいと思います」
「あなた方がそれで良いと言うのなら……」
「すら戻って來てはいないので形だけの墓になってしまいますが……余程住み心地が良かったのでしょうね。山に住んでいた頃とは隨分と格が変わりましたよ」
「へぇ~、そんなに変わったんですか?」
確かに最初の彼はかなり排他的だったからな…… (第42話參照)
「以前は眼鋭く、誰に対しても厳しい態度を取っていた兄上でしたが、アルトレリアから帰って來た時には隨分と和になり、他人への心配りもされるようになりました。レッドドラゴンの中には『腑抜けたんじゃないか?』と警戒を持つ者もいましたが、私から見れば斷然今の兄上の方が魅力的に見えました」
『腑抜けた』と思わせたところが、幽閉に繋がったわけね…… (第100話から第104話參照)
「でも、フレイムハルトさんは最初から隨分と溫和ですよね」
「私は気が小さいので兄上のように自信のある言ができないだけですよ。では近々アルトレリアの墓地へ足を運びます」
「墓石とかどうしますか?」
「ちょうど良いので山の外で働いてるリースヴュールとルルヤフラムに頼んで、手頃な石を用意してもらいます。葬儀の日にちについては追って報せを遣わせます」
「分かりました」
余談ですが、椅子を石で作ると、150から200kgほどあるそうです (チャットGPT調べ)
次回は8月12日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第496話【フレアハルトの葬儀】
次話は來週の月曜日投稿予定です。
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