《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1772話 託された呪符
四翼の戦闘狀態にっているソフィを見て、今すぐにでもこの場にして戦う事も辭さないといった様子を見せている九尾の王琳だが、そんな彼を更に後方の崖の上から見下ろしながら観察する者が居た。
それは意識を失っているイダラマ達や、そんな彼らを運んで移してきたウガマと共に居る『シギン』であった。
當然にシギン以外の者は、王琳の存在を認識出來てはいない。何故なら王琳達は限りなく気配を隠した上で『結界』を施して姿形を悟られぬようにを潛めているからである。
しかし『魔』の概念に関して言えば、この妖魔召士シギンの右に出る者は居らず、あの神斗こうと以上の卓越した『魔』をる程である為、そんなシギンを相手に流石に王琳でも姿を隠し通す事は出來なかったようであった。
(あれは九尾の妖狐か。どうやら『天魔』達の様子を窺いにここにきたといったところか? いや、違うな。アイツの視線の先に居るのは『天魔』ではなく、あの青年のようだ。俺と同様にあの九尾も『魔』に傾倒している事は事前に調べがついていたが、まさか神斗ではなく九尾が先にこの場に來るとは思わなかったな)
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シギンは腕を組みながら冷靜に分析を進め始めると、神斗がこの場にまだきていない事を確認するように視線を周囲に這わせ始めた後、魔力知を行い始めるのだった。
(ん……? これはまさか神斗の奴は例の場所に近づいているのか? 意識を遮斷させる札をの『結界』近くに吊るしてあったはずだが、誰かが意図的に外したのか?)
シギンは神斗や悟獄丸と戦っていた時ですら見せた事のない、焦りといった表を一人その場で浮かべると、再び視線を王琳や、その先のソフィ達に視線を向け始める。
(ちっ、予想以上に面倒事が多くなってしまったな。こちらももうし観察しておきたかったが、もし神斗が例の場所の『結界』を破ってしまっての中にってしまうと非常に厄介な事になる。これはもう仕方あるまい……!)
「ウガマ殿、すまぬが俺は今すぐにしなければいけない事が出來た。直ぐに戻ってくるつもりだが、もしこの場での天狗達と彼らの戦闘が終わっても俺が戻ってこなければ、あの場に居る妖魔召士達に俺の名を出して事を説明しろ。そうすればお前達の命だけは助かる筈だ」
「し、シギン殿……!?」
「「え、えっ……!?」」
このまま麓まで安全に連れて行ってくれると考えていたウガマやイダラマの護衛達は、突然のシギンの言葉に驚きながら、不安そうに互いの表を見始めるのだった。
「ウガマ殿、これをお主に渡しておく。これをあの年老いた妖魔召士に見せれば俺と一緒に居た事が伝わる筈だ。お主らと奴らの間にどういった事があったのかまでは存ぜぬ。だが、俺が関係していたとしればしは事も変わる事だろう。それとイダラマが戦闘が終わるより先に目覚めれば、イダラマにこの山には俺に會いに來るように言われていたと伝えておくといい。こいつは非常に頭がキレる。直ぐにもっといい案を思いつけるだろうからな」
何とシギンはウガマ達にそう告げると、巖を背にして座らされているイダラマの頭に手を置いて、優しくで始めるのだった。
イダラマをでるシギンの顔は、まるで自分の大事な子供を見るような笑顔をしていた。
その表を見たウガマは、どうやらシギンにはのっぴきならない事が本當に出來たのだと理解する。
「分かりました、シギン殿。もうし天狗達と彼らの様子を見てから、貴方に言われた通りに行しようと思います」
そのウガマの言葉に、イダラマをでていたシギンがウガマの方を振り返る。
「ああ、勝手な事を言ってしまってすまぬな」
「いえ、ここにこうして安全に居られたのも貴方のおかげですし。それに助かる道を示してくれたのも貴方ですしね。でも、もしこれで我々全員が助からなかったら、貴方の元に化けて出て文句の一つは言いに行くかもしれねぇっすけど」
「ふふっ、その時は改めて謝罪しよう」
そう言ってウガマとシギンは笑みを見せ合っていた。
「では、この繋ぎの札を『ゲンロク』に見せてくれ。これは俺が作った専用の『呪符じゅふ』でな? 俺以外の者が持っている筈がない。だからこそ先程の俺が言った言葉が活きてくる筈だ」
「わ、分かりました。確かにお預かりしました」
シギンよりも頭一つ分以上の差がある大男のウガマは、並び立ったシギンから彼専用の『呪符』を預かると、互いに頷き合う。
「では俺はもう行くが、エイジやゲンロクに『俺は元気にしている』とだけ伝えておいてくれ」
「分かりました、あと最後に一つだけ……」
何やら神妙な顔つきとなったウガマは彼の元に一歩近づいて小言で何かを呟き、それに対してシギンも険・し・い・表・・を浮かべながら返答を行っていた。
その二人が何を話していたのかは、他の退魔士達にも分からなかった。
やがて二人の會話が終わった後、音も立てずに忽然とこの場から『シギン』の姿が消えた。
――そしてこの場には、彼らの安全を願うように『結界』だけが殘されていた。
……
……
……
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