《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1776話 王琳の思とその視線

(あ、あれは!? ま、まさかっ、まさか……!?)

先程まで天狗達を相手にたった一で立ち回っていたソフィに、驚きこそはすれど勇ましさにすら覚えていたが、その天狗族との戦闘が終わった直後、何者かが魔神の張った『結界』を強引に破ってこの場にしてきたことで何事かと別種の驚きを抱いたゲンロクだったが、その者の『妖狐』の顔を見て完全に固まってしまうのであった。

そのゲンロクの額には脂汗が浮かび、手や足が唐突に震え始めたかと思えば、顔を真っ青にさせ始めた。

「どうかしたのか、ゲンロク?」

當然にそのゲンロクの隣に立っているエイジが、こんな様子を見せるゲンロクに気づかない筈もなく、訝しそうに眉を寄せながら靜かに聲を掛けるのだった。

「え、エイジよ……! あの妖狐こそが、かつて『・止・區・域・』で・出・會・っ・た・妖・狐・だ。わ、ワシはあやつを見て調査を放り出して山を下りたのだ……」

視線を妖狐から外したかと思えば、ガクガクと震えながら靜かにエイジに告げるゲンロクであった。

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「あ・の・妖・狐・が・……!」

どうやらソフィは妖狐との話し合いを終えたようでこちらの方へと歩いてくるが、妖狐はその場で腕を組んだままで待機していた。

そんな妖狐に視線を向けたエイジだが、直ぐにその妖狐はエイジに視線を合わせるように顔をこちらに向けてくるのだった。

「!?」

妖狐からは『殺気』や『殺意』などといった敵意のようなモノをじられない。しかし単に視線を合わせられただけで恐ろしい程の重圧をじたエイジであった。

(これは、確かに若い頃にゲンロクが逃げ出したという話も理解が出來るな……。確実に『魔・』の・概・念・を・正・し・く・理・解・し・て・修・め・て・い・る・者・の・『魔・力・』だ・。視線一つでここまで揺させられるとは)

エイジは今を生きる最上位妖魔召士ではあるが、その『魔』の概念においては『サイヨウ』から直々に學ばされたである為、前時代の最上位妖魔召士とそこまで遜はない。

むしろ『天狗族』の扱う『僧全』をいち早く取りれた『妖魔召士』である為、この『魔』の概念に関しては『ゲンロク』や『コウエン』よりも上であろう。

そんなエイジであるが、あの九尾の妖狐の無意識に纏わせている『魔力』から『魔』の概念にを置く者の『力』が、視線一つで明らかに自分よりも上だとじさせられるのだった。

『魔瞳まどう』というものには歴史があり、この世界では『青い目ブルー・アイ』というものが妖魔召士の間で存在しているが、元をたどればこの『魔瞳』もまた『魔・』の概念の一つである。

妖魔召士たちの獨自の研鑽と歴史を語り継いだ事によって、今に至る『魔瞳』の結果が『青い目ブルー・アイ』ではあるが、その『青い目』呼ばれる前の単なる『魔力』を伴った目こそが、原初の『魔瞳』と呼べるものなのである。

別に王琳はエイジと視線を合わせた時に『魔瞳』を使ったという意識はなく、単に普段から『魔力』というモノを近に纏わせている結果によって、目や自の周囲に『魔力』を點在させているだけに過ぎない。

しかしそれでも単なる視線一つでさえ、こうまでしてエイジを狼狽させられるだけの力を『九尾の妖狐』は有しているというわけであった。

そしてエイジと視線をわし合っている王琳もまた、そのエイジという一人の妖魔召士に対して、ソフィまでとは言わないが、し前に戦ったコウエン以上の興味を抱いていた。

(俺には相手の目を見れば分かる。奴もまた『魔』の概念に対して、並々ならぬ思いを抱いているな。そして実際にその思いを『魔』の形として取りれている者だろう。奴も魅力的ではあるが、それでも黒い羽を生やしたさっきの奴と比べては流石に劣るな。何せあの『帝楽智ていらくち』殿の代名詞と呼べる魔力値で放った『魔力波』を完全に黒羽は同じ『魔力波』で圧倒していた。俺や神斗様には屆いてはいないが『帝楽智』殿の総魔力値は、この山でも五指には確実にる。そんな『帝楽智』殿をあっさりと倒した黒羽と戦う事は何よりも優先される……!)

(な、何を笑っているのだ!?)

エイジは王琳が自分を見て笑っていると思い込み、何とか表を崩さずには居られたが、心では狼狽させられる事となった。

どうやら王琳はソフィの事を考えて、知らず知らずのうちに口角を吊り上げてしまい、図らずも視線がわっていたエイジを驚かす結果となったようである。

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