《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1778話 戦友から託された言葉を

「それで? 話はついたのかね」

どうやら魔神に対して伝えたい事は伝えられたとばかりに、王琳は自の周りに出していた『魔力』をあっさりと消し去ると、この場に戻ってきたソフィにそう尋ねた。

「ああ……。お主らの同行を認めるとの事だ。まぁ一度『鬼人族』の集落へと今回の報告を行いに戻るが、それでも構わぬな?」

「それはいいが、肝心な事をまだ聞いていないぞ? 別に俺はお前達と山・で・楽・し・く・ピ・ク・ニ・ッ・ク・をするつもりはないからな?」

王琳の言いたい事を理解しているソフィだが、その例え話が実・に・ユ・ー・モ・ア・が・利・い・て・い・た・と・ば・か・り・に・、ソフィは楽・し・気・な・笑・み・を・浮・か・べ・始・め・る・のだった。

「クックック……、分かっておる。シゲン殿との約束である山の調査が終わり次第、お主が満足いくまで我が戦ってやろうではないか」

ソフィがそう言うと、今度は王琳が口角を吊り上げて邪悪に見える笑みを浮かべるのだった。

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…………

この妖魔山の調査の主導権を握るシゲンと話し合い、元々の目的であったソフィの配下である『エヴィ』を探すという名目と合致する為に、このまま『止區域』へと足を運ぶという結論に至った。

九尾と七尾の妖狐を連れ立ってではあるが、ひとまずは今回の天狗達の件を鬼人族の集落に居る『玉稿』達に報告に戻る事にしたソフィ達であった。

「――」(ねぇ、ソフィ? 先・程・の・は・・し・だ・け・油・斷・し・て・い・た・だ・け・な・の・よ・。私が『固・有・結・界・』を・展・開・す・れ・ば・、絶対にどのような攻撃も無効化してみせるから、だから……)

「クックック、心配せずともお主の力を疑ってはおらぬ。これからも我の為によろしく頼むぞ?」

そのソフィの言葉に心底ほっとした様子を見せた魔神は、満面の笑みを浮かべながらソフィに返事をするのだった。

……

……

……

そしてソフィ達が移を始めた後、天狗族の縄張りがよく見える山の崖の上にある巖で、彼らの様子を窺っていたウガマ達は後を追うかどうかの選択を迫られていた。

「どうしますか、ウガマ殿? 奴らはどうやら山を引き返していくみたいですが、わ、我々も『結界』を張ったままで、一緒についていきますか?」

「し、しかしあの『天狗族』をあっさりと片付けた、黒い羽の妖魔みたいな奴が居る元に行くのは危険ではないでしょうか?」

「それはそうだが、シギン殿はあの黒い羽の奴と一緒に居る妖魔召士を頼れと仰られていたのだぞ? それにこのままここに居てもいつシギン殿が戻って來るか分からない以上は危険な事には変わりがない。それならば奴らの姿が完全に見えなくなる前に後を追うべきではなかろうか?」

イダラマの護衛の退魔士たちが口々に話し合っているのを傍で聴きながら、ウガマは腕を組んで考え始める。

(個人的にはシゲン総長達の前に姿を見せたくはないが、そんな事を言っていられる場合でもない。それに最後にアコウとわした約束が何よりも優先される。たとえ俺がどうなろうがイダラマ様だけは守らねぇとな……!)

シギンとの別れ際、アコウがどうなったかを尋ねたウガマだったが、返ってきた言葉は彼が予想していた通りであった。

アコウとウガマは親友と呼べるような間柄というわけでもなく、特に仲が良かったというわけではないが、それでも戦友であった事には変わりがない。何よりもライバル関係にあったアコウの事は誰よりもウガマが認めている。

そんなアコウが自分に託した『イ・ダ・ラ・マ・様・を・頼・む・』という言葉を決して蔑ろにするわけにはいかない。

意を決したウガマは、今も護衛達の間で會話を繰り広げている最中、割ってるように今後の指標を口にし始めるのであった。

……

……

……

王琳の命令で山の麓まで、妖魔召士の人間達を送り屆けようと駆けている妖狐達だったが、もうしで『特別退魔士とくたいま』が張った『結界』のある場所に辿り著くというところで、唐突にその足を止めるのだった。

「山全々とおかしなことになってるわね」

々な場所で無視が出來ない程の魔力の奔流がじられているし、何より先程まで大騒ぎしていた天狗共の『魔力』が完全に知出來なくなったわねぇ?」

的な顔立ちをした妖狐の『五立楡ごりゆ』と、黒くツヤのある長い髪が印象的な『六阿狐むあこ』の二の妖狐は、互いに先程からじられている『魔力』の奔流から、いまこの山で起きている出來事を自分達のじている違和から報を共有しようと話し合うのだった。

「それに天狗共の縄張り付近から唐突に人間達の匂いや『魔力』もじられたわ。もしかしたら天狗共と爭っていたのは人間達なのかもね?」

九尾の王琳の居る前では、奇妙な言葉遣いで話をしていた妖狐達だったが、この場では普通に會話を行っていた。どうやら普段からあの口調で喋っているわけでもないらしい。

そしてそんな二の妖狐の會話は、當然にも同じ場所で足を止めたコウエンの同志の『妖魔召士』達の耳にもってくる。二人の妖魔召士は顔を見合わせた後、意を決して妖狐達に喋りかけるのだった。

「ご、五立楡殿に六阿狐殿と言ったか? お主らはどうやらこんなに遠く離れている者の『魔力』でもじられるようだが、その人間達はワシらくらいの『魔力』を有しておるのだろうか?」

「はて? それはどうでしょうかねぇ。分かっている事は、妾たちにも咄嗟には探れぬ程に『魔力』を隠せるだけのコントロールに覚えがある人間達……、という事くらいしか分からないわねぇ。間違いなく『妖・魔・召・士・』だとは思うけどねぇ」

妖狐の返答に直ぐに二人の同志達はピンとくるのであった。

「この妖魔山に我々の後からってきた魔力が高い『妖魔召士』の人間ともなれば、追って來ている筈の組織の者で間違いないだろうな」

「という事は『特別退魔士とくたいま』ではなく、組織の『妖魔召士』で間違いないな。ゲンロクがその場に居るかは分からぬが、ワシらを追って妖魔山にってきている者であれば、幹部以上の者で間違いないだろう。彼らに事を説明して、エイジに取り次いでもらうように頼んでみるか?」

「ああ……。今更組織に直接顔を出すよりも、エイジ個人に會える可能があるのならば、斷然そちらの方が良いだろうな」

彼らはコウエンから預かった『サイヨウ』の呪符をエイジに渡そうと考えているが、別に今更組織に戻ろうと考えているわけではない。

あくまでコウエンがあの時に口にした通り、事をしっかりと組織の者達に説明して、その後はどうなるかは分からないが、運よく生き延びられる事が出來そうならば、もう今後はひっそりと暮らしていこうと考えている様子であった。

「ここまで案してもらってすまぬのだが、し頼み事を聞いてもらえないだろうか?」

そして同志の二人は、妖狐達に再び山の中腹まで戻させてもらえないかと口にするのであった。

……

……

……

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