《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1781話 封印が施されたと、中に居る存在
悟獄丸ごごくまるがこんな僅かな時間の間に本當にやられてしまったのか――。
その結論に至ってしまったその悟獄丸と同じ『妖魔神』の片割れである『神斗こうと』は、薄ら寒さを覚えると共に小さく舌打ちをするのであった。
「もし本當にそうだったとして、彼は一何を企んでいる? 何故これまで私達を始末しにこなかった? 何故王琳おうりんの同胞である『七耶咫なやた』をり、この妖魔山でを隠していたのだろうか……」
シギンという人間の真意が測りかねず、誰も居ない場所で彼はひとり悩み始めるのだった。
「!?」
そしてふとした違和を近くの森からじた神斗は、そちらの方に意識を向ける。
「僅かだが、ほんの一瞬、何やら歪いびつな『魔力』の流れをじた……。この途切れ方は『魔』の技法を使用の途中にその何者かが『結界』を張り始めたか、そもそも張ってあった『結界』の上書きが行われた事によって、一瞬だけ外へと『魔力』がれ出たかのような奔流だった」
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神斗は向かおうとしていた場所とは違う方向へと視線を向けると、その一瞬だけじた『魔力』を調べに森の方へと歩き始めていくのであった。
……
……
……
山の中腹付近の崖の上でウガマ達と別れたシギンだったが、神斗が向かおうとしている森の中にすでに足を踏みれていた。
「信じられない事だが、 『結界』が施されている筈のの中から、奴の『魔力』が外にれ出ていた。からは決して破る事が出來ない筈であるし、外から誰も侵が出來ないように認識阻害の『結界』を呪符で展開していた筈だ。い・っ・た・い・何・が・あ・っ・た・と・い・う・の・だ・?」
妖魔召士シギンはそう獨り言ちながら件のへと足を向けて歩いていく。
かつてシギンがゲンロク達と共に『止區域』の調査の為に山へ足を踏みれた時、この『存在』の『魔力』を彼だけがじ取ってしまった。
前時代の『妖魔召士』組織の最高戦力が揃って『妖魔山』の調査に乗り出たが、そんな高い『魔力値』を有する妖魔召士の中でもシギン以外には誰も奴の存在には気づけなかった。
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どうやらその『存在』を封印したかつての妖魔召士は、相當の実力者であったのだろう。調査を終えた後に一人シギンは『妖魔山』に殘り、実際にそのに施されている『結界』を見た事で、後世に殘ってはいなくとも、優秀な妖魔召士は過去に多く存在していたのだろうという事を改めて理解したのであった。
シギンの時代が『妖魔召士』の歴史の中で一番優秀な世代だと言われ始めていたが、実際はそんな事はなくて隠蔽が施されたか、単純に表に出てきていないだけなのだと、他でもない最強の妖魔召士と謳われているシギン本人が認めていた。
もうそのの中には、かつての妖魔召士の『魔力』の殘滓など消え去っているというのに、今でも尚『結界』はその効力を維持し続けていて、直接その現場を見た時にシギンは自分が『結界』の側であった場合に、その『封印』されている存在と同様に『結界』を破る事は『非常に困難で時間を要する』という結論を下す程であった。
まず間違いなく封印を施した妖魔召士は、今のシギンと比肩する程の実力者であった事は間違いないだろう。
そしてそんな過去の妖魔召士が、妖魔を討伐せずに封印を選んだという事は、その妖魔が強大な力を持っていて、封印以外に取る方法がなかったのだと容易に想像がつく。
ただそこまで考えたその時のシギンは一つの疑問を抱いた。
――何故それならば、そんな化けの存在を後世に伝える事をしなかったのか。
勿論安易な考えであれば、理由は直ぐに頭に思い浮かぶ。
それは軽い気持ちで『自分であれば封印ではなく、討伐が可能』だと考えて、安易にこの場にきてしまう恐れがある為である。
妖魔召士は誰でもなれるわけではなく、生まれ持った『魔力』の高さで決まる先天の資質が必要である。
それはこの世界に『理ことわり』というモノが存在せず、また霊といった存在が居ない為に、生まれた時に『捉』が使えるだけの魔力値がなければ、その魔力値をばす事が出來ない為である。
つまり妖魔召士と名乗れる者は、すでに他者と一線を畫していると呼べる上に、育てられる環境下の中で例外なく特別扱いをけて育つ為に、自分は他とは違う選ばれた存在なのだと考え始めてしまう為に、非常に頑固な格な上に、自信家が多いのが常である。
もちろんそれが一概に悪いというわけではなく、そういった妖魔召士が居るおかげで世界に生きる民達の妖魔による被害が減っているという事も確かな事実ではある。
しかしこの『封印』されている存在は、生半可な『妖魔召士』で太刀打ちが出來る範疇にはなく、シギンから見れば、自分が長として組織している當代の妖魔召士組織に屬する四天王を含めた『最上位妖魔召士』が、総出で討伐に乗り出たとしても全滅する恐れがあると考える。
それ程までにの中に封印されている『存在』は、想像を超える程の化けなのである。
シギンが當時の封印を施した『妖魔召士』であったとしても、確かに伝承を殘すかどうかを一度は悩んでいたかもしれない。
しかしそれでもシギンであれば、間違いなく伝承としてこの『封印』の存在の事は後世に伝えていく努力をしていただろう。
『生兵法は大怪我のもと』という言葉もあるにはあるが、それでも何かの拍子に『結界』が破られてしまった時、何も知らされていなければ未曾有の危機が世界に訪れる事となるからである。
しかしそれでも先駆者が下した通り、生半可に伝える事もまた危険が付きまとうのは事実であり、シギンはそれを踏まえた上で自分が生きている間だけは、この場所に極力人を寄せ付けず、また信頼のおける仲間達にさえも伝える事をせずに自分だけがこの山に殘って監視を続ける事に決めた。
もちろんこの山以外の場所にも同様の封印が施された場所があったりする可能もあるが、現時點でそんな場所が見つかったという報告もなく、また各地を練り歩いたシギン當人でさえも『妖魔山』以外にそんな場所は見つからなかった為、この『妖魔山』を最優先して組織を仲間や次代を擔う若者たちに託す事に決めたのであった。
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