の外からもシギンはその中に居る『存在』の『魔力』の殘滓をじ取れてはいたが、そのに一歩足を踏みれた瞬間からは、全く異質な空間に迷い込んだかと錯覚する程であった。

（これは前回にここに來た時にじた『結界』とは全く違う。これはどうやら元から張ってあった『結界』を模倣していちから作り変えられた『結界』で間違いなさそうだな。そもそも俺が張った別の阻害の『結界』が完全に効力を消失させられている。形骸的けいがいてきな『呪・符・』が今もの天井付近に吊るされてはいるが、ただの飾りに過ぎなくなっている）

シギンがじた通り、し前にこのへと逃げ込んできた『殿鬼でんき』によって、シギンの用意した阻害の呪符は消失させられて、更にはその殿鬼の當たりによって、外側からであれば一定の強さを持つ存在がれることであっさりと効力の役目を終わらせられるかつての『封印式』は、もうその意味を完全に為さなくなっている。

今も一応は妖魔ラ・ン・ク・５・や・６・程・度・の存在くらいであれば、抜け出す事が出來ない『封印』効果がある『結界』がこのの部に張られているようだが、あくまでそれは何者かが模倣して作り出した児戯に等しい作りと呼べる代用に過ぎず、この中に封印されていた存在を閉じ込められる程の効力は當然にない。

そもそもがこの中に居た存在が作ったのだろうから、その効力がないのは當たり前だろう。自分で自分を外に出さぬように封印の『結界』を施すわけがないのだから。

――そして、遂にシギンがの最奧が見える場所にまで辿り著くと、その『存在』がシギンを出迎えた。

「！？」

シギンはその『存在』と相対した瞬間に、外にれ出てしまうという事も忘れたかのように一気に『魔力』を高め始めるのだった。

どうやら無意識に防衛本能が働いたのだろう。

自分自でようやく自分の『魔力』の高まりをじた時、直ぐにの外へとこれ以上『魔力』がれ出ないように『結界』を施したが、一定以上の実力者であればすでに気付かれてしまったかもしれない。

シギンは明らかに自分らしさを失っている狀態だと自己分析を速やかに行うと、視線は前に向けたままで深呼吸を行いながら冷靜さを取り戻そうとする。

「ふっ、変わらんな卜部うらべ。ここに俺を閉じ込めた時もそのように『外界』と切り離しながら俺と戦っていた。そこまでして他の連中を守ろうとする理由は何だ？　この山に居るのはお前のような人間じゃなく、俺と同じ妖魔しか居ない筈だろう？」

目の前に居る『存在』は、確かに自分に話し掛けているという事は間違いないのだろう。しかしシギンは目の前の『存在』の質問容よりも、自分の事を卜・部・と呼んだ事の方に疑問を抱くのであった。

「何を勘違いしているのか知らぬが、俺は別にこの山に生きる者の安否を気にして『結界』を張ったわけじゃないぞ。単に俺の居場所を探っている輩からを隠す為に『魔力』を外に出さぬように施しただけに過ぎぬ。それで俺からもお前に質問があるんだが、そのは一どうしたのだ？　前に見た時は本が衰弱しきって、神でなければこの現世に維持が出來ない程に、慘・め・な・狀・態・だったと記憶しているが？」

この薄暗いの中で長年強引に閉じ込められていたその『存在』には、そのシギンの煽るような言いが存外に効いたようで、鬼人族のをしたその『存在』は、先程までの飄々とした表から一転し、憎々しげにシギンを睨みつけるのであった。

「貴・様・が・俺・を・閉・じ・込・め・た・癖・に・、よくもそのような事を口に出來るものだな。これだから人間は嫌いなんだ！　お前達人間は、俺達妖魔を野蠻だ何だと口々に貶して文句を言うが、お前達人間の方がよっぽど殘忍で酷い事を平気でする生きだ！　それもやった事に対してしも罪悪などを抱かぬのだから手に負えぬっ！」

――その『存在』はシギンを睨みつけてはいるが、実際にはもうシギンを見てはいない。

どうやら先程の容を口にしていた時點で、その目の奧には過去の人間の事を映している様子であった。

「なかなかに熱・量・の・あ・る・言・葉・を吐するではないか。誰のを乗っ取ったのかは知らぬが、その鬼人の姿も相まってなかなかにお前の嫌っている人間らしさのようなモノがじられているぞ？」

シギンが皮ぶった言い方をすると、その『存在』は今度こそシギン本人をしっかりと睨みつけたのだった。

「さて、ようやくちゃんと俺という人間を認識してくれたようだな？　々と託を並べ立ててはいたが、過去の出來事を俺に言っても仕方あるまい？　そういうのはこれからも長く居る事になるであろうこのの中で、いつまでも自分に言い聞かせていればいい」

シギンはあえてきつい言葉を口にすることで、しっかりとシギンという妖魔召士に意識を向けさせる事が目的だったようであった。