《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1787話 始狀態
「ちっ! 『始・・狀・態・』でこれか……」
シギンは煌阿があっさりと自分の想像していた戦力値を上回った事で、苦々しく舌打ちをするのだった。
それも明らかにまだ本気とは言えないだろう。眼前に居る今の煌阿こうあはあくまで戦闘態勢の初期段階にったに過ぎないという様相をしており、まずはこれまで長きに渡って封印されていた事で、どれだけ自分の力が鈍っているかを把握しようとウォームアップを行おうとしている狀態といえた。
シギンも戦闘にを置く者として、戦闘のイロハというものを知している。
彼の場合は的に與える負荷を考えるのではなく、自分の扱う『魔』の威力と消費を考慮して『魔力枯渇』を起こさぬように調節を行いながら、ない消費で相手に絶大なる効果を及ぼす『費用対効果』を主に重視して戦うのだが、戦闘局面における起承転結を考えれば、煌阿もいきなり全力になって暴れるような稚拙な戦い方はしないだろう。
そんな戦い方で何とかなるのは、相手が何をしても勝てるような明らかな格下の場合だけである。
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それを分かっているからこそ、シギンは煌阿が力をある程度抑えながらの戦闘態勢を取るだろうと考えていた為に、凡そ妖魔ランク『9』程度から始めるだろうと考えていたのだが、今の狀態の煌阿でさえ、すでに『10』の始狀態と呼ばれる領域に達している。
このシギンが勝手に名付けた『始狀態』というものは、あくまで妖魔ランクが一つ下の者達とそこまで遜がない力を示す者の事を指す言葉であり、簡単にいえば妖魔ランクが『10』ではあるが、まだその先が控えている狀態の相手の強さの指標を表現するものであった。
しかし今の始狀態である煌阿でさえ、シギンのによって無理やりに弱化をさせられていた『悟獄丸』が、本気で戦っていた狀態に匹敵する。
大まかなものではあるが、この始狀態の煌阿の戦力値でさえ、數値で表すのであれば『2兆』を下回る事はまずありえない。
(※天狗族をたった一人で絶滅させた時のソフィの狀態でさえ、戦力値が1・兆・5・0・0・0・億・程・だった事を考えれば、今の煌阿の始狀態を見たシギンが舌打ちをした理由が分かりやすいかもしれない)。
(もうこの『妖魔山』が戦いの余波で崩落する懸念があった『存在』が、こうして目の前に現れた事に加えて、もう一の厄介な『妖魔神』がこの場に姿を見せた以上は、結界等を張らずとも構わないといえば構わないが、今度はこの世界の危機をじ取った神々達が現れかねぬ。そうなれば今度こそ最悪のシナリオの出來上がりとなってしまうだろう。何とかして奴を再び『次元の狹間』や、大勢の犠牲を出さぬ『空間』の中へと押し込みたいところなのだがな……)
この『煌阿』という存在のこれまでの言や態度を見るに、神斗とは違って自分以外の者や場所がどうなろうが知った事ではないといった格をしている。
神斗も面倒な格をしてはいるが、あくまで駆け引きの中での話なだけであり、彼の知そのものや格はまだ許容出來る範囲である為に、しっかりと説明を果たせば口車に乗せられるのだが、どうやらこの『煌阿』だけはどうしようもないだろう。
いくらこの存在に説明を行ったところで世界が崩壊しようが、天上界から神々共が我々を『世界の敵』と判斷して執行を行いにこの場に現れようが、何の抑止力となる言葉にならずに無茶苦茶に暴れて、自分の目的を果たそうとしそうである。
だからこそ『卜部』とやらの過去の妖魔召士は、煌阿の討伐を考えながらも力及ばず、されどもそのままにするわけにもいかない為に、仕方なく『封印』という代替案を行使して見せたのだろう。
始狀態の戦力値ですでに妖魔ランク『10』に到達している以上、何がきっかけで気まぐれに世界を滅ぼそうと考えるか分からない。
この世界ではシギンを含めて戦力値を數値化出來る手立てを持ってはいないが、それでも彼はすでに煌阿があっさりと世界を崩壊させられる程の力を有していると、その『魔力』の高さから判斷出來ている様子であった。
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