《T.T.S.》File.5 Worthless Road Movie Chapter 4-7

〜2176年12月26日AM13:04

日本國 青ヶ島沖合〜

中天を過ぎたばかりの太が、容赦なく紫外線量の多い太をつるべ撃ちしてくる。影すら焦げる遮るもののない船上で、遠く水平線を睨みながら、ギルバートは忙しなくデッキの上を行き來していた。

デッキの片隅に転がっていた骨の錆びたパラソルを広げ、日の元で風の爽やかさを堪能していた紗琥耶は、落ち著きのない相棒バディに思わず口を尖らせる。

「ジッとしてろよ鬱陶しい」

傍で船を漕ぐアグネスのに剝がれそうなブランケットを掛け直しながら、プワッと火気を上げて欠をする。

「……クッソ寒い」

真冬の太平洋は、偏西風と高波で大いに荒れる。

八丈島を掠めるように流れる流に乗った巡視船は、落とした錨を引き摺らんばかりに北東に船を傾がせていた。

もし抜錨すれば、本船は長い時間をかけて太平洋を環狀にグルリと廻る大きな流れに乗って、樺太を掠めてアラスカ側から北アメリカ大陸にアプローチすることだろう。

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Braços de chama炎の腕社のコンテナを抑え、同社を隠れ蓑にした組織がT.T.S.本部を襲撃に関與している証拠は得た。

これ以上、ここに用はない。

しかしながら、直後にアグネスがふつりと眠りに落ちてしまった。

普段の彼にはあるまじき行だが、無理もない。

一晩中駆けずり回ったことはもちろん、自の古巣が関與している事件の捜査を行なったのだ。

とてつもないプレッシャーとストレスの中、纏まりのない仲間を獻的に支えた彼の心労は大きいだろう。

だが、アグネスの洗脳によって拿捕された船上で彼が臥床し、手綱を手放したらどうなるか。

想像は容易い。

が、結果もまた想像に易い。

紗琥耶とギルバートという比類なき人外を前に、イチPMCごときができることなど何もない。

包み剝がされ、救命ボートいっぱいに詰め込まれたむくつけき漢たちは、泣きそうな顔で歯をカチカチと鳴らしながら、凍える冬の太平洋に消えていった。

「海保はいつ來てくれるんだっけ?」

自らを落ち著かせるように、紗琥耶の傍に腰掛けたギルバートが尋ねる。

「ん〜あと1時間くらいじゃない?」

気のない紗琥耶の言葉に、ペストマスクからきがれた。

「そんなに気になるなら、海面走って行きゃいいじゃん。止めねえからさ」

「作用反作用の法則くらい知ってるだろう。この船を津波に乗せて東南アジアまで漂著させるわけにはいかないよ」

かつて源に拘ってT.T.S.と対立した立場だからこそ、ギルバートは一杯アピールする。以前のように任せではない、今の自分は冷靜を保てると。

そして、新しい仲間のことも思えると。

「アグネス君は大丈夫なのかい?」

「わっかんない。姫、いつもなんも言わないし、そんな話さないからね……だから初めて見るのよ、この子がこんな悲しい顔で寢てんの」

そう言ってアグネスの頭をでる紗琥耶の表は、どこか穏やかだった。

「存外面倒見がいいんだな、君は」

「……うるせえな」

巡視船の舵を取る者がいない以上、こうして時間を潰すしかない。のだが、2人の預かり知らぬアグネスの脳では、また別の危機が始まっていた。

〜????〜

記憶の宮殿という記憶がある。

頭の中に巨大な宮殿を築き、部屋ごとに巨大な書架を並べ、理メディアのようにそこに記憶を保存していくという記憶方法だ。

非常に難しいが、出來れば大きく記憶力を向上させることができる記憶向上だ。

しかしながら、宮殿では書架が納まらないほどの記憶を持った場合どうするか。

「ここ、知ってる」

そこは、ある大學のキャンパスだった。

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