絶命したニシィー？　とかいうのが倒れる。

「フー、ようやく片付いた」

まだ、あの大蛇の相手が殘ってるんだっけ？

「……死が消えない？」

――“霊化”を使う暇もなく、右腕を抉り飛ばされたッッ!?

『クソッ、外した！』

「ハイパワースラッシュ!!」

エレジーの一撃で、肩からまでバッサリ切られた蛇。

が派手に……すぐに腕を拾って、ハイヒールを掛ける。

「ハアハア、ハアハア」

視界が、ザワザワとした青に染まっていく……前に死んだ時も、こんなじだったわね。

「私が殺るので、ネロは回復に専念していてください」

『エレジー……本気でそのを守るって言うの？　いい加減にしなさいよ』

「彼が……リョウに殺された事は知っていますか？」

『――ええ、知ってるわよ！　リョウさんが私達の仇をとってくれたのでしょう!!　さすが、私がした人よ！』

よくもまあ……あの一部始終を知らなければ、そう思って當然か。

「……そのまま幸せな記憶の中で、今度こそ死んでください。ニシィーさん」

エレジーのハルバードに、再び十二文字が刻まれる。

『なんで……なんでアンタばっかりッッ!!』

「――“獣化”」

エレジーのやつ、わざとを貫かせて!?

『な――は、離せッ!!』

刻まれている文字數がどんどん減っていく。

『――“暴慘禍”』

『――イヤだぁぁぁぁッッ!!!!』

頭から腰まで、バラバラに挽き潰されてようやく……に変わりだす蛇。

「……無茶して」

私の盾になるようなが、ツグミ以外にもいるなんてね。

●●●

○生贄數286/444で、“アポピス”がこちら側に降臨します。

黒い太から、真っ黒な巨蛇が大河に著水――発生した水飛沫が、津波のように船を打ち付けた!!

「あれが“アポピス”……ハハ、巨人が可く見えてくる」

この“渡河船”くらいなら、簡単に締め潰せそうな程の巨。

「あんなのと、どうやって戦えって言うのよ」

私の遠距離攻撃手段なんて、大した威力の無い魔法くらいだってのに。

「ミキコさん！」

リエリアが、“マキシマム・ガンマレイレーザ”を投げ渡してきた!?

「それを使ってください！」

「アンタはどうするのよ？」

「私はコレを！」

“レギオン・カウンターフィット”の偽を手にするリエリア。

「遍く世界よ――“雄偉なる世界は――祝福を謳う”」

アレが、リエリアがコセと共に作り上げた錬剣……なんてしい。

「行きましょう、ミキコさん！」

「ええ！」

やっぱり、このレギオンの人間は頼りになる！

●●●

「クソ、數が多い！」

“アポピス”も復活したし――出し惜しみする必要は、もう無いわよね！

「ノーザン！　私が“アポピス”を仕留めに行くわ！　裝備セット３」

“ディグレイド・リップオフ”を裝備。

「燃え吹雪け――“雄偉なる氷炎の共演に魅せられよ”!!」

コセとのの結晶をこの手に!!

「限界が來たら代わってください！」

アンタはコセと作った錬剣が使いたいだけでしょ、ノーザン！

「はいはい――“飛行魔法”、フライ！」

空から船の端へと移しようとすると、そうなコウモリが追撃してきた！

……よく見たらコイツら、蛇の尾が生えてるし。

「――“隨伴の氷炎”」

燃える青い炎をり、丸ごと氷漬けにして船へと落下させる。

「余計な力を使わせて」

急いで、“アポピス”とかいう黒い巨蛇の前へ。

『《贄が足りぬ――強者よ、完全な顕現のため、我が贄となれ!!》』

「“隨伴の青雷”!!」

青い雷が轟き、巨蛇の進行を阻んだ！

「ナオさん！」

やっぱり、リエリアの仕業か！

「私がきを封じるわ！　“六重詠唱”――“氷炎魔法”、アイスフレイムバーン!!」

“隨伴の氷炎”と合わせ、目の前の大河を一気に凍らせる!!

「あのデカブツ！」

きは制限出來たの、容易く氷の大河を割砕いて來るし！

――一筋の青白いと、“萬雷砲”の“連”が“アポピス”を襲う。

「ミキコさんとツグミさんみたいですね！」

「一気に決めるわよ、リエリア!!」

刻んだお互いの十二文字か共鳴し、私達の隨伴の力が強化される!!

「こ、コイツ！」

をくねらせて大河の水を防に使っている上に、吹っ飛ばした部位があっという間に再生していく！

「これ、どうしろってのよ！」

セリーヌも文字の力で援護してくれてるけれど、ダメージが再生能力を上回れていない。

いや、損傷部位はしずつ増えてる。

ダメージがほんのししか上回れていないこの狀況……無限に攻撃し続けでもしないと倒しきれないけれど、神代文字の力はいつまでも持たない！

「刻みつけろ――“雄偉なる波紋夜はもんよの渉緑えにし”」

この聲、ユイ？

●●●

雄々しき英雄と私の太刀を、この手に顕現させる！

「私も、ようやく実戦で使える」

私は十二文字刻めてたのに、何故か最近まで錬剣を作れなかった。

「――“太刀神降ろし”」

雄偉の太刀を、十倍の大きさに。

「“神代の太刀”」

十五文字刻み、青白い刀を形して更に巨大化。

五十三ステージのクエストで自覚した己の未さを、弱さを、けなさを乗り越えるビジョンを追い求め、私が行き著いた境地。それは――夜のコセさんのように!!

「――“隨伴の勇猛”!!」

赤く猛きオーラを刀に纏わせ、更なる強化。

「“勇猛大地刀剣”――――ブレイブグランドスラッシュ!!」

空中にて、邪悪な巨蛇を縦一文字に切り裂く。

「――ハァァァッ!!」

止むことなく、切り刻み続けるッ!!

「ハアハア――今だよ!!」

一斉攻撃が巨蛇へと襲い掛かり、片の大部分が消失……やがて、再生する気配も無くなった。

「……太が」

日蝕が終わり、強いしが私達を照らす。

『と、突発クエスト・波の渡河の旅へ――終了だッ!!』

観測者の悔しげな聲……どっかで聞いたことある気がする。

◇◇◇

『……クソ――またあの!!　あのが!!　ユイが、私の計畫をぉぉぉぉッ!!』

運良くターゲットのユイと、仲違いにちょうど良いと見ていた鹿娘にピエロまで巻き込めたというのに!!

『……どこまで私をコケにすれば気が済むのだ、ジャップのクソ雌がぁぁッ!!』

第三ステージといい、第四ステージといい!!

『……次だ。次こそは……』

次の私の擔當ステージで、今度こそあの生意気な小娘ジャップをぶち殺してやるッ!!　このセルゲイ様がなぁぁッッ!!

●●●

クエスト終了後、私達はに包まれ、どこかの港に転移した様子。

「ここ、いったいどこ？」

ナオさんの疑問。

「“渡河船”の到著先だ。この跡は安全エリア扱いだよ」

セリーヌさんが教えてくれる。

「そういえばセリーヌさんて、六十ステージより先まで進んでたんでしたね」

「……まあな」

その先で一度死んだんですし、心境は複雑ですか。

「……どこ、ここ？」

ハユタタさんが目を覚ます。

「おはよう、ハユタタ。もう晝だけれど」

「おはようございます、ハユタタさん」

ネロさんとエレジーさん、なんだか距離がんだみたい。

「お、おはよう？　あれ、祭壇は？　て、あの塔に付いてるのってボス扉……？」

まだ、だいぶ混しているみたい。

「ハユタタさん、丸二日ぶりですね」

手を差し出す。

「丸二日？　なに言ってんの、ツグミ？」

「この様子……もしかしてハユタタって、クエストの最初から水槽に閉じ込められてたのか？」

「そうみたいですね」

セリーヌさんに同意する。

「え、水槽って何よ？　ねー！　私になにがあったのか教えなさいよ！」

「まあまあ。先に“神の館”に戻って、私達の安否を伝えましょう。皆さんきっと、心配しているはずですから」

クマムさんに押し切られる形で、私達は久し振りの我が家へと帰還した。