《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1803話 組織の長としての最後の挨拶

「この山もとんでもない奴が居たもんだな……。最後のは俺に向けて放ったものではなく、どうやら封印式札に対して何かを試そうとしての行いだったのだろう。ひとまずは奴の存在を知れただけでも収穫だったと思う事にしようか」

そう言ってシギンは麓まで『魔法』で移を行おうと考えたが、そこでふと何かに気づき、出していた『魔力』を消失させた。

「今すぐは奴に近づくつもりは頭ないが、認識阻害の札は張り直しておいた方がいいかもしれぬ」

先程の古い札を見る限り、奴を縛る『封印式札』だけではなく、認識阻害の効力を持った札の方もそろそろ効力を失う時期が近づいているとシギンはじた様子であった。

「どちらにせよ、今のままでは奴の『封印』は確実に解かれる。かといって今の俺では奴を縛るだけの技量はまだ備わっていないだろう。封印の側に居る奴の『魔力』を僅かながらにじ取っただけでこれ程までの危機を抱かされているのだからな……」

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そう言ってシギンはに再び足を踏みれると、間違っても奴には気づかれないように細心の注意を払いながら、間近にある札を一枚抜き取り、代わりにシギンの『魔力』を込めた新しい札を付け直すのだった。

(本當ならば認識阻害だけではなく、奴自を封じ直す『結界』を張りたいところだが、今はまだ時期尚早だ。それに慌てる事はない。俺はもう組織の長の座を降りるつもりなのだ。多目的は変わる事になったが、奴を封じられると思える時がくれば、おのずと俺の『魔』に対する疑問も減らせたという事に繋がるだろう)

半ば自分を納得させるような決斷を下すと、シギンはから外に出る。

そして先程より中に居る存在の気配が薄くなったのを確認すると、ようやくシギンは満足した様子で山の麓へと移を始めるのだった。

この山の頂にはまだ『妖魔神』の『神斗』と『悟獄丸』の存在が居るという事には、既にシギンは気づいてはいたようだが、今はそちらを後・回・し・に・し・て・も・問・題・な・い・と判斷して、存在を分かっていながらもあえて見逃すように『空間魔法』を用いて山を下りていった。

すでに外は夜になっており、今頃はサイヨウ達もコウヒョウの町で宿を取って寢靜まっている頃合いだろう。

「最後にサイヨウ達には事を説明していた方がいいだろうな……」

シギンは獨り言ちると、コウヒョウの町まで移を始めるのだった。

そして山の麓から近くにあるコウヒョウの町へは直ぐに辿り著き、門を見張る警備の目を掻い潛る為に『空狹閑』を用いてあっさりと中へとり込むシギンであった。

「見つけた……」

シギンはそう言って南側のり口近くの方に視線を向けると、あっさりとサイヨウの張ったであろう『意・識・阻・害・』の『結界』を打ち破って、彼らが居る建の宿を見つける事に功するのだった。

(※このサイヨウの張った『意識阻害』の『結界』は、山のの『認識阻害』の『結界』とは異なるものであり、位階的には『認識阻害』の方が上となります)。

そしてシギンがその宿にろうと足を踏みれかけた時、逆に中から外へと出て來る者が居た。

「お待ちしておりましたよ、シギン様」

「全く、何をしていたのかは分かりませんが、想像以上に遅かったですね」

「待ちくたびれて、俺はちょっと寢てしまいましたよ」

「おかえりなさい……」

シギンにそう言って聲を掛けてきたのは、彼の仲間である『四天王』のサイヨウ達であった。

「ああ……。ゲンロクはもう寢たか?」

この場に唯一姿を見せていないゲンロクに気づいたシギンは、サイヨウに向けてそう口を開いた。

「はい。シギン様の口にしていた通り、彼は妖狐の『魔力』にあてられた事で神を弱らせてしまったみたいでして、宿につくなりすぐに意識を失うように寢てしまいました」

「そうか。分かっているとは思うが、これより當分の間は無理をさせるな。任務なども外してゆっくりと休ませてやるのだ。今回の事がトラウマになれば、奴の長は止まってしまうかもしれぬ」

「分かっています。一時的なものであるに、心のケアをしっかりと行うように注意して見守っておきます」

「ああ、頼んだぞ」

「まぁ、そんなに心配はないでしょう。最近はゲンロクの奴も『魔力』が高まってきて、増長していた部分もあったから、今回の事はいい薬になったぐらいだと思いますよ」

コウエンはそう言って豪快に笑うのだった。

「ふふっ、逆にお主は山に登る前より元気そうになったな」

シギンがコウエンにそう告げると、彼は嬉しそうな笑みを浮かべた。

「分かりますか? 俺の今後の目標はあの妖狐に打ち勝つ事です。今すぐは無理でも、いずれ必ず奴に挑戦を申し込んでやろうと思っています!」

「そうか……」

コウエンの九尾の妖狐に対する覚悟を見たシギンは、自分があのに居た『存・在・』に対する者と似ているなと考えるのだった。

「よいか? 『魔』には近・道・な・ど・と・い・う・都・合・の・い・い・モ・ノ・は・な・い・。目的のものが手にりそうになったからといって、修めなければならぬモノをおざなりにして、その目的を手に取ってしまえば、本來そこに辿り著くまでに必要な研鑽が足りずに必ず後悔する事になる。これは肝に銘じておけ」

そう言ってシギンはコウエンの肩を叩くのだった。

「は、はぁ……。分かりました……」

そう返事をするコウエンの言葉を聞いたシギンだが、実際にはその事に気づけるかどうかは、その時になってみないと分からないだろうがなと心の中で呟くのだった。

「サイヨウ、コウエン、イッテツにノマザルよ、本當に今まで世話になった。こうしてみれば全てお前達に任せっぱなしにしてしまった不甲斐ない長だった。本當にすまなかったな……。しかし俺はお前達が居たからこそ安心して任せられたのだ。それだけは覚えていてしい」

「「し、シギン様……」」

そのシギンの最後のような挨拶を聴き、ようやくノマザル達はシギンが組織の長の座から降りるのだという実が湧いてきた様子であった。

「どうやらあの山で何・か・を・見・た・様・子・ですね……。それは長くなりそうですか?」

この中でサイヨウだけが、シギンがあの山で何かをや・ろ・う・と・し・て・い・る・と・気・付・い・た・様・子・だった。

「ふふっ、當面は退屈をしなさそうだ」

「そうですか……」

シギンとサイヨウの會話を理解出來ていない他の四天王の面々達だったが、傷的な気分も相まっているようで、何を話しているのかと尋ねてくる事はしなかった。

……

……

……

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