《ダンジョン・ザ・チョイス》782.上級平和街

魔神を倒し、いつもの祭壇に転移。

「ここは、塔の最上階なのか? ……あれ?」

先に來ていた面子の格好が、二種類に別れてる?

一方は、白いローブの上から白いケープを著たかのようなデザインで、一方は黒くてボロいローブ姿。

中は布の服。

「裝備が……」

鎧や武だけじゃなく、指などのアクセサリーも無くなっている!

「婚姻の指だけは殘ってたか」

し安心した。

「裝備セット1……ダメか」

「この街に居る間は、この服以外は裝備できないよ」

ジュリーが教えてくれた。

「それどころか、スキルも全て使用不能だからね」

メルシュの言葉。

「スキルも裝備も使えない――まさか!」

魔法の家の鍵を実化させようとすると、小さな白いキューブに。

「魔法の家まで使用不能か」

ここまで、できる事を縛られるとは。

「まーた白い街か」

最後に転移してきたユリカの臺詞。

「全員無事か? メグミは?」

「……ああ、なんとか」

また苦しそうにしているメグミ。

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「辛そうに見えるけれど?」

「だが、今回で安・定・し・た・という覚があったぞ」

俺もクレーレも験した覚。

「なら、取り敢えずは一安心か」

あとは、一度形にしてしまえば特に負擔にならないはず。

「魔法の家が使えない以上、早めに拠點を確保したほうが良さそうですね」

「ああ……けど」

トゥスカの言葉に同意するも、ここから見えるだけでもかなりのプレーヤーがこのステージに居るようだ。

階段を下り、祭壇の麓までやって來ると、人型のロボットが近付いてきた?

『初めまして。ようこそ、上級國民様とその奴隷の方々』

上級國民と奴隷……なんとなく察してたけれど、白い格好が上級國民で、黒い格好が奴隷という分け方か。

モモカ達には、あまり聞かせたくない言葉だな。

『ここでのルールを説明いたします』

アンドロイドが語り出す。

『ここでは全てのスキル、アイテムが使えません。なんと言っても、平和の街ですからね』

平和……ね。爭い事は法度と。

『ここではGゴールドではなく、$ドルが使用されています』

金の通貨が、ここでだけ違う?

『上級國民の皆様には、毎日の朝五時に100$、奴隷の方々には30$が支給されます。今日の分は、訪れたその瞬間に支給されております。ちなみに、チョイスプレートから、1000Gにつき1$に両替が可能です』

明らかな格差を當たり前のように。

『ここには空き家がたくさんございます。どうぞ、お好みの場所をお選びください』

どうやら、レギオンリーダーとパーティーリーダーにのみ選択権があるらしい。

の外観や裝に差はあるものの、広さや設備などは特に違いは無いらしい。

「頭金が1000$?」

どの建でも、一律1000$か……高いな。

「ジュリー、メルシュ、一軒契約してしまった方が良いか?」

「うん、必須だと思うよ」

「ここがオリジナルだったら、私は購しないんだが」

迷い無く斷言するメルシュと、周囲を警戒しているジュリーの意見。

「おい、の集団だぜ」

「めちゃくちゃ若い娘が多くね? 子供まで居るし」

「最高じゃん。リーダーに教えようぜ」

白い服の奴等の下卑た視線が凄まじい。隠す気すら無さそうだ。

「皆、金を貸してくれ」

快く1000$が集まり、俺は余っている件の中から、周囲が空き家だらけの一軒を選んで契約。

すぐに全員でそちらへと向かう。

「へー、良いところじゃん。開放的だし」

ナオが、大きなリビングから一できる広大な庭を見ながら、大きな窓を開けて風を浴びている。

俺としては、あまり窓が大きい家は好きじゃないな。しが鬱陶しそうだし。

「庭にプールに、上には天風呂もあるよ」

メルシュが和やかに解説。

天風呂なんて久しぶりです♪」

「“渡河船”のプールは小っちゃかったから、思いっきり泳ぎたい♪」

はしゃぐタマとスゥーシャ。

「ぷ、プールはともかく、ろ、天風呂は覗かれるかもしれないんじゃ……」

地味カナの発言。

「裝備もスキルも使えないのであれば、覗かれる可能は無いのでは? 部外者は、許可無く塀の側にれないそうですし」

イチカの指摘。

「隣の家から覗かれる可能も……」

「大丈夫だ、ノゾミ。だからこそコセは、周囲が空き家のこの屋敷を選んだのさ」

リューナ、俺の心配りに気付いてたのか。

「さ、さすがですね、コセさん」

「いえ。取り敢えず、現狀と今後の確認をしよう」

白い巨大リビングは所々段差があるものの、五十人を超える大所帯でも問題の無いレベル。

「メグミは、部屋で休んでるか?」

「だから、大丈夫だって言ってるだろう?」

などと言いつつ、ソファーに座る姿には力が無い。

「椅子が足りませんね。モモカ、バニラ、クレーレ、手伝ってください」

「私は、軽く食べられるをパパッと用意するわね。まだ朝食前だったし」

「手伝います、サトミ様!」

「私も」

「お供します、ウララ様」

四人がオープンキッチンの方へ。

「俺も、一品くらい提供……メルシュ、作った料理って出せるのか?」

「食べや娯楽品の類いなら問題なく出せるよ。お金も実化できる。ただ、今ある食糧が盡きる前に、次のステージに行きたいね」

メルシュの不穏な言葉。

「理由は?」

五十三ステージにあった食べの自販機やレストランを、ここに來るまでに幾つも見掛けたけれど……。

「このステージってさ、とにかく価が高いんだよね。特に食べが」

「例えば?」

「他の街なら100Gのが、ここでは10$だと思えば良いよ」

1$が1000Gだから、実質100倍の価……の串焼きを十本も買ったら、今日の分の支給額が丸々無くなるだと!?

「確かに、金が幾らあっても足りないな。明日にでも攻略を始めてしまおうか」

結構な豪邸だし、數日くらいゆっくりさせてあげたかったけれど。

「ところがどっこい、そういうわけにもいかないんだよねー」

メルシュの疲れたような目……嫌な予がする。

◇◇◇

『と、とうとう來たか、《龍意のケンシ》ども……』

ど、どうする……今度こそ仕掛けるか?

だが、もし果を出せずにクリア報酬を渡すようなことにでもなったら……。

『――デビッドくん』

『お、オッペンハイマー様!?』

有無を言わさず、回線を繋がれた!!

『ど、どのようなご用でしょうか?』

『君は、《日高見のケンシ》も《白面のケンシ》も素通りさせたそうだね――今回こそは、観客を湧かせるイベントを仕掛けてくれるのだよね?』

『ご、ご安心を! 大規模突発クエストの関係で《白面のケンシ》には仕掛けられませんでしたが、その時に用意しておいた突発クエストがあります!』

噓ではない。突発クエスト止時期に用意し、期間が開ける前に奴等は次のステージへ進んでしまったからな。

『で、ですが、しばかり調整が必要でして』

『相変わらず仕事が遅いね、君は。まあ良い。《龍意のケンシ》に突発クエストを仕掛けるならば、これ以上の文句は言うまい――ただし、私からの提案を聞いてしい』

『ど、どのような?』

『なに、簡単な事さ――できる限り、人の醜さを煽ってしい。ただそれだけだよ』

『……であれば、私が用意しているクエストはうってつけかと』

そろそろ、五十四ステージの人間ゴミ共を大幅に減らしたいと思っていた所だしな。

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