《ダンジョン・ザ・チョイス》784.開店準備

「こんなもんかな」

五十四ステージに到著した日のに、アイテム売買店の準備を一通り終える。

不要な武とスキルカード、モンスターの素材、薬を中心とした非裝備アイテムの數々。

チトセのSSランク、“アトリエ・コンポジション”のおかげで、調合品の類いは元手無しで準備可能。これが売れ筋商品になればの字だが。

「ジュリー、広告費は幾ら払う?」

メルシュとコセがやってくる。

「強気の三段階、1500$を払おう」

妨害をける可能を考えると、絶対に悪評を広められない初日に売れるだけ売った方が良い……というのが私の考え。

広告費の第一段階で500$、第二段階で1000$、最大の第三段階で1500$掛かる。

「前日に依頼を出さないと効果が反映されないんだよな? でも、支給された$はほとんど殘ってないぞ?」

コセの指摘。

「大丈夫、広告費の支払いは後払いに設定するから」

先払いだとし安くして貰えるんだけれど、屋敷と店二つとの契約料で初日の支給額はほぼ無くなった。

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飲食店の方は事前に食品を仕れる必要があるものの、そっちも後払いが可能なので問題ない。

「折角だし、サトミのお店も最大で広告費を

払って貰おうかな。初日から三日間は、新規開店効果もあるし」

「そうだな」

メルシュの意見に同意する。

「それにしても……」

店の外に、こちらを窺う集団が……おそらく複數。

「一応、帰り道に気を付けた方が良さそうだね」

屋敷のある居住區と、店がある商業區にはそれなりの距離がある。

「モモカとバニラは、明日は屋敷に殘しておいた方が良さそうだな」

「何が起こるか判らないし、休暇制ということにして、店に出る人間にローテーションを組ませよう」

幸い、人員は二つの店を回すには十分過ぎるほど。

ロボットを高いお金で借りて、店員をやって貰うという手段は必要無さそう。

「それじゃ、俺達は一通り街を回ってくるよ」

「あとはよろしく、ジュリー」

コセが、自分のパーティーメンバーと他二人を引き連れて、私達のアイテム売買店を出て行った。

●●●

「フフ、準備オーケーよ~♪」

楽しそうなサトミさんによって飲食店、【和洋折衷庵】の開店準備が完了する。

正面から見て右が洋菓子、左が和菓子、中心が氷菓や冷蔵品。

「日持ちしない商品の陳列は明日の朝。開店は、二十四時間制以外のお店はどこも午前九時からです。閉店時間は自由にできるみたいですけど、定休日が多かったり急な休みがあると評判がしずつ下がっていくので、気を付けてください」

ウララさんからの注意……。

「大丈夫です。八日間だけですから、私は休みなんて要りませんし!」

イチカさん……やる気。

「イチカって、バイトの経験あんの?」

レイさんの問い。

「……ないです」

「というか、この世界に送り込まれた人ってだいたい十五歳前後の時にでしょう? バイトの経験が無い人が大半なんじゃない?」

フミノさんの鋭い指摘!

「で、うちのマスターは?」

「……無いよ」

家は古くさかったけれど、一応、裕福な方だったし。

「フフフ、大丈夫よ。私やNPC組が教えるから」

サトミさん……本當に楽しそう。

「頼んだぜ、アルーシャ」

「ザッカル様も働くんですよ。分かってますよね?」

「……お、おう」

逃げる気だったっぽいザッカルさん……私も逃げたい。

「……私も、やってみたい店はあった」

「どんなだい?」

「エロアニメショップ」

AVじゃなくてエロアニメだけのレンタル店! 規制無しバージョンの深夜アニメも良い! ラブラブなやつ限定で!

「やっぱダメだ、コイツ」

シレイアさんの私への対応……どんどん雑になってく。

「そろそろ帰ろう。もう夕方だ」

ルイーサさんに促される。

「私、最後尾で」

「助かる。私は前を務めよう」

ルイーサさんも気付いてたんだ。外からこっちを、嫌なじで窺っている気配に。

全員でお店を出ると、気配が遠退く……。

祭壇付近の商業區から、住宅區へ。

「念のため、道の真ん中を歩くようにしたほうが良さそうですね」

フミノさんも気付いてる。

住宅地の幾つかの門の前で、品定めするようにこっちを見ている男連中。

転移プレーヤーのほとんどは、二十代半ばか後半くらいに見える。

やスキルが使えれば、間違いなく襲ってきていたであろう人種特有の気配。

「ねーねー、君達。このステージまで來るの、大変だったろ? 俺達さ、ここまで來たプレーヤーには歓迎會を開いてあげるっていうルールがあんの」

取り巻き二人を連れた金髪男に、橫合いから聲を掛けられた。

開いてあげる、か……傲慢が滲み出てるな。

「だからさ、俺達の屋敷でご飯食べてかない? ご馳走を用意してるからさー」

「――先約があるから、失禮するわね」

サトミさんが一蹴する。

「ちょ、折角用意したんだから――」

「――サトミ様にるな」

リンピョンさんが、ブチ切れ顔で男のばした腕を摑んでいた。

「い、イデデデデッ!?」

裝備もスキルも能力に作用していない以上、筋力の差はほぼLv差の現れ。

第三回大規模突発クエストに參加した私達のLvは、未參加者より遙かに高いはず。

「これで解っただろう? 私達に構うな」

「――ハッ!! せっかく歓迎してやろうと思ったのに! 後悔することになるぜ、お前ら!!」

私達がだいぶ離れてから放たれた捨て臺詞……地で三下を行く人間て、本當に居るんだな……。

「……持ってきてて良かった」

屋敷にあった果ナイフ……。

●●●

教會區にってから口を開く。

「他のアイテム売買店、しょぼかったな」

トゥスカ達に話し掛けた。

「品がほとんど殘ってなかった上に、FやEランクの武ばかりでしたね」

「そろそろ店を諦めないと、赤字になる気がするね、あれ」

ナターシャとメルシュの見解。

「でもまさか、未使用の“ディグレイド・リップオフ”が売ってるとは思わなかったですね」

トゥスカが見付け、迷った挙げ句、俺達はGを換金して足りない分をまかない、400$の贋作機を一つ購した。

明日まで待って、支給金で朝一に買うでも良かった気はするけれど……ずいぶんと喜んでたな、あそこの店員さん。

「まあ、アタシらの競爭相手は、実質居ないって事で良いんじゃないかい?」

楽観的なシューラ。まあ、半分は気遣いで言ってそうではあるけれど。

「飲食店も、あまり被ってなさそうで安心だな」

クレープ屋、ラーメン屋、カレー屋、ファミリーレストラン、壽司屋、ピザ屋、コンビニ、弁當屋と、それぞれの特で勝負していたようだったけれど……ハッキリ言って、どこも空気が悪い。

店員はやる気も元気もいまひとつで、働いてない奴等は品定めするような目でこっちを見てくる……滯在日數、八日間でも長かったかもしれない。

「マスター、あれがNPCの教會だよ」

「さすがに豪奢だな」

今まで見てきた教會の中でも、五本の指にる大きさ。

「それじゃあ行こうか、モーヴ、リンカ」

「教會で何をするんだ?」

心底不思議そうなモーヴ……可い。

「決まってるだろう、俺達の結婚式だよ」

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