《ダンジョン・ザ・チョイス》786.オープン日

開店日を迎えたその日――お店は大繁盛~!

「こちら、六點で275$になります」

「八點で480$になります!」

皆の売り子姿、開店から二時間で隨分様になってきたわね~♪

只で用意した制服、和風メイドも最高ね♪ 皆、よく似合ってる!

「私の手作り大福も売れてる。強気な値段設定だったけれど、悪くないわ」

手元の機械で確認した売り上げは、現段階で十三萬$越え。

昨日と今朝の仕れ分を後から払わなきゃいけないからまだ赤字だけれど、このペースを一週間も維持できれば、うちだけでも100萬$稼げちゃいそう……だけれど、これはオープンと広告費効果のおかげ。

明日からの妨害をけないにしても、時間帯のむらやら何やら、リアル寄りに設定されているのなら明日、明後日とどんどんお客は減っていく。

やっぱり、一番稼げるのはこの初日ね!

「サトミ様、和菓子の補充をお願いします!」

「了解よ、リンピョンちゃん!」

今のところ、一番売れているのは和菓子、それも箱

Advertisement

意外と単品がなくて、複數の種類が四つずつったタイプに……意外と高い商品をNPCは買っていっている。

お客様の大半は白服……白服は上級國民っていう設定があったわね。

「高いを多めに補充してみようかしら」

見栄えの良い場所に、値段の高い商品を移させるのもありかも。

などと考えながら、商品の補充を終える。

「貴様ら、なにをしている!」

「……あら?」

り口を塞いでいる二人の男に、見張り役のエトラちゃんが噛み付いて……なるほど、プレーヤー二人が、NPCの來店を邪魔していたのね。

「おたくら、誰に許可貰って店開いてんの?」

「俺達《子羊たちをでよう》に上納金、まだ支払ってねぇよな~!」

三下ヤクザみたい。

「この私に向かって――調子乗ってんじゃねぇぞッ!!」

――に一発叩き込んでから、もう一人の腕を取って肘を捻り……折ったわね、あれ。

「――とっとと失せろ」

ケツを蹴って追い出すエトラちゃん。

「ああいう騒ぎ、現実だったらお客さんが來なくなってしまうだけれど、ここでは気にしなくて良さそうね」

Advertisement

それにしても……思っていたほど、お店に立っても懐かしい気分にならないね。

●●●

「仕れ値などを差し引いても、今日一日で47萬$越え……バカ売れだな」

二店合わせてこの売り上げ……これならあと二日か三日で目標額に到達しそう。

まあ、売り上げの七割が【ジュリーのブグブグ店】なんだけれど。

ただ、こっちは商品を手持ち分からしか出せないから、売り上げは明日からガクッと落ちるだろうな。高いのはあらかた売れちゃったし。

「それにしても、今日一日で両方の店に數十回の妨害……明日、間違いなく評判を落としてくるだろうな」

「プレーヤーのお客様はほとんど來なかったし、ゲーム的な要因以外では努力しても意味無さそうなんだよな」

とっとと100萬$稼いで丸一日は英気を養い、この街から出て行きたいだ。

「メルシュ、悪評を流された時の対処なんだけれど、寄付金はどのタイミングで教會に持っていけば良い?」

「悪評は広まる前日に依頼する必要があるけれど、寄付金は開店前にでも支払えば払拭できるよ。教會に行けば店の悪評Lvも解るし」

「最大悪評Lvが6で、1Lv下げるのに1000$の寄付……教會にぼったくられている気しかしない! 悪評Lvって、広告費と同じ値段で出せるんだろう?」

寄付金の半額で。

「問題を起こす側と問題に対処する側が裏で繋がってるなんて、詐欺の上等手段ですよ」

ヒビキがソファーの橫に座り、俺にもたれかかって來る。

「屋敷の方は?」

「およそ二十人で代しながら、ずっと監視されてました。皆さんが出勤してから帰宅する直前まで」

ない人數で出て來たところを狙ってるんだろうな」

現実なら警察に対処して貰う事案だけれど……問題を起こす側と問題に対処する側が裏で繋がってる、か。

「明日、開店前に寄付金を払いに行く。俺でも大丈夫だよな?」

ジュリーとサトミの店だけれど。

「アタシも行こうか?」

「シューラは、明日は休みだろう?」

そう言うと、左隣に座ってきた。

ヒビキもシューラも、俺に甘えたいらしい。

優しく頭をでてから、腰をギュッと抱き寄せる。

「昨日はサンヤさんに譲ったので、今夜は相手シて貰っても良いですよね?」

「アタシも構わないだろう? コセ坊」

「あの……コセ君」

不安げなチトセが、正面から……膝の上に乗っかって來る。

今日の勤務中、チトセは外で一度、三人の男に手腳を摑まれて攫われ掛けた。完全に、彼の油斷が招いたこと。

「摑まれた、まだ殘ってて……上書き、してしいです」

「ああ、まとめて相手シてやる!」

俺の家族に手を出す奴等は――絶対に赦さない。

出勤前、皆で溫かい朝食を食べていた時だった。

『――こ、これより突発クエスト、上級國民戦爭を始める!』

頼りなさげな聲の、クソみたいな言葉が聞こえて來たのは。

「ご主人さ――」

「トゥスカ!?」

突然トゥスカが……メルシュやナターシャの姿まで、一瞬走ったの中に消えた!?

『今回の突発クエストは、奴隷分は不參加だ』

消えたのは、奴隷と奴隷扱いのNPC、それに生き返り組か。

『る、ルールを説明するため、よく聞いてくれたまえ』

さっさと話せ、クソ観測者!!

『今回のクエストは、言わば陣地取り』

ルールを完璧に理解できるメルシュが居ないのが、地味に痛いが……。

『今回特別に、屋敷を持たない者達にも仮の屋敷を用意してやった。同じ屋敷の者とはチームとして扱われる。協力するように』

俺達みたいな屋敷を、持っていないプレーヤーも居たのだろう。

あの言い方だと、今同じ屋敷に居る面子は仲間と認識して良いはず。

『人が住む屋敷に、“地球儀”を用意する』

リビングに、いきなり半明の巨大な地球儀が出現。浮きながらゆっくりと回転している。

『その“地球儀”を破壊されたチームは失格。屋敷のメンバー丸ごと死んで貰う。消えた奴隷共も含めてね』

この“地球儀”がある屋敷が、自分達の防衛拠點てことか。

『クエスト開始後、屋敷を覆う結界も塀も、破壊可能なオブジェクトへと変わる。當然、クエスト開始と同時に裝備もスキルも使用可能。クエストの間だけだけれどね』

ま、そりゃそうだよな。

『クエストの決著は、この都市に居るプレーヤー、奴隷も含めた二千百三十七名が五百名以下にまで減ること。五百名以下になるまで、一生、このクエストは終わらない!』

四分の一以下になるまで、プレーヤー同士で殺し合えってことか!!

『屋敷に備え付けの小型コンソールで、“地球儀”の位置と、その“地球儀”が破壊された際に死ぬ人數が確認可能だ』

すぐに確認すると、百や三百と、かなりばらつきがあるけれど……《ジャスティス教》の教會だけ七百越え。

『クエスト報酬だが、バウンティーハンターシステムで手にれられる資金を$に変換して與えよう。クエスト中に君達が殺した人間に掛けられた賞金分のみだが。その際、賞金稼ぎの者達はGで更に同額を手にれられるため、安心してしい』

安心できる要素たり得ない。

『“地球儀”を破壊した場合は、奴隷含めたその屋敷の住人の裝備や賞金が手にる他、十以上の“地球儀”を破壊したチームにはSSランクも進呈だ!』

“地球儀”の數は二十七……一つのチームで三分の一以上破壊しろと?

『クエスト開始は、一時間後の午前八時半。それまでに、小型コンソールでクエストの詳細を確認しておくように。では、さらば!』

クソみたいなクエスト説明が、ようやく終わった。

    人が読んでいる<ダンジョン・ザ・チョイス>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください